情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス 情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス
CREST・さきがけ「ビッグデータ」2領域 成果報告会
日時:3月18日(水曜日)15:20-17:50
会場:第1イベント会場(百周年時計台記念館 1F 百周年記念ホール)
【セッション概要】ビッグデータの高度な統合利活用による社会的・経済的な価値創造が期待されています.2013年度からスタートした2つの研究領域では,ビッグデータの複数ドメインに共通する本質的課題を解決し,様々な分野のビッグデータの統合解析を可能にする次世代基盤技術と,ビッグデータの利活用により大きな社会的インパクトを生むような様々な研究分野との協働によるアプリケーション技術の創出・高度化を目指しております.今回の成果報告会では,2013年度に採択された研究者による最新の研究成果をご紹介します.
司会:嶋田 義皓 (独立行政法人科学技術振興機構 戦略研究推進部 ICTグループ)
15:20-15:35 講演(1) 「ビッグデータ基盤」研究領域紹介
喜連川 優 (国立情報学研究所 所長)
【講演概要】2013年から発足したJST CREST・さきがけ「ビッグデータ基盤」領域について,研究領域の趣旨とこれまでの採択課題を紹介する.
【略歴】1983年東京大学情報工学専攻博士課程修了.工博.同年同大生産技術研究所講師,現在同教授.2013年国立情報学研究所長.情報処理学会理事,副会長を経て,現在情報処理学会会長(2013).情報処理学会・ACM・IEEEフェロー.情報処理学会功績賞受賞(2010).専門はデータベース工学.ACM SIGMOD E.F.Codd Innovation Award,特定領域研究『情報爆発』代表,内閣府最先端研究開発支援プログラム中心研究者,紫綬褒章(2013).
 
15:35-15:50 講演(2) 「ビッグデータ応用」研究領域紹介
田中 譲 (北海道大学 大学院情報科学研究科 情報理工学専攻 特任教授)
【講演概要】JST CREST「 ビッグデータ応用」領域の総括方針を述べ,過去2年間の採択課題とその選定方針を紹介し,来年度の募集に関わる重点領域に関して総括方針を述べる.
【略歴】1974年京都大学大学院工学研究科修士課程電子工学専攻修了.同年北海道大学工学部助手.講師,助教授を経て1990年同教授.2004年同大学情報科学研究科教授.2011年同特任教授.この間,IBMワトソン研究所客員研究員,京都大学情報学研究科教授(併任),CRESTビッグデータ応用領域総括等を兼任.
 
15:50-16:15 講演(3) 複雑データからのディープナレッジの発見と価値化
山西 健司 (東京大学 大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 教授)
【講演概要】ビッグデータからの知識発見のニーズが高まる現在,単にデータの大量性だけでなく,その複雑性(高次元,非定常,ヘテロ性)に対応することが重要になってきている.本講演では,そのような複雑なデータから,その背景にある深い知識(ディープナレッジ)を読み解くための技術動向を紹介する.コア技術となるのは,潜在的ダイナミクスの理論と関係データ統合予測の理論である.その最新の理論展開と実応用展開の成果を示す.
【略歴】1987年東京大学 大学院工学系研究科計数工学専攻修了.同年NEC 中央研究所に入社.NEC 中央研究所主席研究員,データマイニング技術センター長を経て2009年より,東京大学大学院情報理工学系研究科 教授.専門:情報論的学習理論,データマイニング.
 
16:15-16:40 講演(4) 自己情報コントロール機構を持つプライバシ保護データ収集・解析基盤の構築と個別化医療・ゲノム疫学への展開
佐久間 淳 (筑波大学 大学院システム情報工学研究科 准教授)
【講演概要】個人ゲノムは, 次世代シーケンサーの発展により安価に個人レベルで入手可能になりつつある新種の個人情報である. 個人ゲノムには, ゲノム差別やゲノム犯罪等,従来の個人データ利用では認識されてこなかったリスクが存在し,取り扱いが難しいデータでもあるが,ゲノム疫学や個別化医療などその活用は社会上非常に重要である. 講演では個人ゲノムデータを暗号化したままクラウドに保存することで,プライバシを保護しつつ個人ゲノムの活用をアウトソースする技術について紹介する.
【略歴】2003年3月東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士後期課程修了.博士(工学).同年4月日本アイ・ビー・エム(株)入社,東京基礎研究所に配属.2004年,東京工業大学総合理工学研究科助手,2007年同助教,2009年,筑波大学システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻准教授,2009年〜2012年,科学技術振興事業団さきがけ研究員兼任,現在に至る.機械学習と知識発見,セキュリティとプライバシの研究に従事.
 
16:40-17:05 講演(5) ビッグデータからの知識創出基盤の確立 - 創薬から製品製造までを例として -
船津 公人 (東京大学 工学系研究科 化学システム工学専攻 教授)
【講演概要】医薬品創薬から製造までの過程には,これまで蓄積された膨大な測定データ等が存在する.これまで異分野として個別にとらえられていた創薬の現場と製造の現場における知見および各種データを共有する仕組みを構築するとともに,創薬・製造を俯瞰的に見た医薬品開発のシステム全体の効率化および最適化を目指した研究に取り組んでいる.具体的にはこれらのデータを活用することで,大量の化合物情報 対 様々な生物情報からの創薬指針の抽出,大規模仮想ライブラリ構築およびそこからの新薬ターゲット発見とその合成・製造法の獲得,さらには製造プラントの安定運転・リスク事前管理・品質安定化のための知識抽出を達成し,医薬品創薬から製造の段階を通した知識創出基盤を確立することである.このために今後必要となるデータシェアリングについても言及する.
【略歴】1983年3月九州大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士),1984年3月豊橋技術科学大学物質工学系助手,1988年4月同知識情報工学系助手,1992年4月同助教授,2004年4月東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻教授,現在に至る.2011年ストラスブール大学招聘教授.
 
17:05-17:25 講演(6) 透過的データ圧縮による高速かつ省メモリなビッグデータ活用技術の創出
田部井 靖生 (独立行政法人科学技術振興機構 さきがけ 専任研究員)
【講演概要】透過的データ圧縮とはデータをコンパクトに圧縮した状態で, 様々な操作を可能にするデータ構造の総称である. 近年, 様々なデータ構造に対する透過的データ圧縮が提案され, 情報検索やバイオインフォマティクスを含む分野で応用され始めている. 本プロジェクトの目的は, バイオインフォマティクスやケモインフォマティクスなどの分野に存在する様々なビッグデータを利活用する技術を透過的データ圧縮法に基づき開発することである. 本講演ではプロジェクトの概要と最近の進展を紹介する.
【略歴】2009年9月東京大学大学院新領域創成科学研究科情報生命科学専攻博士号(科学)取得.2009年10月産業技術総合研究所生命情報工学研究センター(日本学術振興会PD),2010年4月科学技術振興機構ERATO湊離散構造処理系プロジェクト研究員,2013年10月科学技術振興機構さきがけ「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化」専任研究員.
 
17:25-17:45 講演(7) 多様な構造型ストレージ技術を統合可能な再構成可能データベース技術
松谷 宏紀 (慶應義塾大学 理工学部 専任講師)
【講演概要】リレーショナルデータベースに加え,特定用途に特化した構造型ストレージ技術(NOSQL)を適材適所で組み合わせることで高効率な情報基盤を実現できる.このような情報基盤の高スループット化および低消費電力化のために,本研究では,多様な構造型ストレージ(キーバリューストア型,カラム指向型,ドキュメント指向型,グラフ型)のためのアクセラレータを研究開発している.本発表では,現在開発中の10GbEインタフェースを4本備えたFPGAボードを使用したキーバリューストア型およびカラム指向型アクセラレータ,GPUを使用したドキュメント指向型およびグラフ型データベースアクセラレータを紹介する.また,外れ値学習機能を有したネットワークインタフェースについても紹介する.
【略歴】現在,慶應義塾大学理工学部情報工学科 専任講師.2004年慶應義塾大学環境情報学部卒業.2008年同大学大学院理工学研究科後期博士課程修了.博士(工学).2009年より2011年まで,東京大学大学院情報理工学系研究科 特別研究員,日本学術振興会 特別研究員SPD.2011年より現職.2013年より国立情報学研究所 客員講師,科学技術振興機構さきがけ研究員を兼任中.計算機アーキテクチャ,VLSI,結合網,最近はビッグデータ基盤技術に関する研究に従事.
 
17:45-17:50 総合討論/質疑