情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス 情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス
IT技術者にとってのパーソナルデータの扱い方を考えよう~何がパーソナルデータになり得るのか,我々はどう扱えばいいのか~
日時:3月17日(火曜日)13:00-15:30
会場:第4イベント会場(吉田南総合館 2F 共北26)
【セッション概要】スマートデバイスやセンサーネットワークなどを通じて,人の行動・状態などのいわゆるパーソナルデータが日々刻々と,様々な粒度で情報空間に流通・蓄積されるようになってきた.パーソナルデータの利活用は,いわゆるリコメンデーションなどの気づきを与えてくれる一方で,意図せぬプライバシーの侵害につながる恐れもある.さらに,パーソナルデータの議論に欠かせないプライバシーという概念は相対的かつ時間流動性があるため,パーソナルデータとそうでないデータの線引きも容易ではなく,多くの情報処理技術者にとって正しい理解を持つ必要があるとともに.単に技術課題だけでなく法制度など社会的課題も含めて構造的に理解しておくことが求められる.こうした状況も踏まえて本セッションでは,何がパーソナルデータになり得るのか,パーソナルデータにまつわる社会的課題を理解しながら,我々情報処理技術者が本テーマにどのような形で貢献できるのか,またどのような点に配慮すべきなのか,について議論を行う.
司会:島岡 政基 (セコム株式会社 IS研究所 暗号・認証基盤グループ 主任研究員)
【略歴】1998年セコム(株)入社.情報系関連会社を経て2004年よりセコム(株)IS研究所.2005~2009年まで国立情報学研究所特任准教授(後に客員)を兼務.ネットワークセキュリティやPKIを中心とした認証基盤の研究開発に従事.情報処理学会会員,コンピュータセキュリティ研究会運営委員,セキュリティ心理学とトラスト研究会運営委員,CRYPTREC運用ガイドラインWG委員など.博士(情報学).
13:00-13:05 オープニング
13:05-13:20 ショートプレゼン(1) 映像情報からのプライバシー侵害の問題点について
菊池 浩明 (明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 教授)
【講演概要】スマートデバイスの普及により我々の行動が自動的に解析されて,様々な目的に利用されようとしている.ビッグデータとして大きな活用が期待されている反面,自分の知らないところで自分の行動が監視されることに抵抗を感じることも生じてきている.そこで,ここでは映像情報を例にとり,そこから生じる個人識別における問題点を指摘し,それらに対して取るべき対策について提言を行う.
【略歴】1990年明治大学院博士前期課程修了.1994年同博士(工学).(株)富士通研究所,東海大学情報通信学部を経て,2013年より明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科教授.1990年日本ファジィ学会奨励賞,1993年情報処理学会奨励賞,1996年SCIS論文賞,2010年情報処理学会JIP Outstanding Paper Award.2013年 IEEE AINA Best Paper Award.電子情報通信学会,日本知能情報ファジィ学会,IEEE,ACM各会員.情報処理学会フェロー.
 
13:20-13:35 ショートプレゼン(2) 記名式Suica履歴無断提供の違法性と「個人特定性低減データ」の意義
鈴木 正朝 (新潟大学 法学部 教授)
【講演概要】1.「個人情報」の定義を再考する.特定個人の識別情報の意味,容易照合性の意味を確認し,Suica事件を振り返りながら,適法説と違法説それぞれの主張内容を確認し,なぜ記名式Suicaの無断提供は違法なのかを解説する.また,無記名式Suica履歴が本人の関与なく無断で自由流通していいのかどうかを考える.2.「個人特定性低減データ」の意義を考える.なぜ低減データが導入されるに至ったのか.Suica履歴の無断提供が適法であれば,低減データ導入の必要性はなかった.なぜなら適法であればガイドライン(告示)改正でスピーディに対応できたからである.違法であったからこそ,法改正が必要であった.本人同意なく提供できるが,一方で受領側は特定禁止義務を負う.はたしてこれがビッグデータ・ビジネスにどれほど役に立つものなのか.法改正の見通しを見据えながらこの点を簡単に解説する.
【略歴】1962年生.2005年より新潟大学法学部 教授.専門は「情報法」.中央大学 大学院法学研究科 博士前期課程修了 修士(法学).情報セキュリティ大学院大学 情報セキュリティ研究科 博士後期課程修了 博士(情報学).法とコンピュータ学会(理事),情報ネットワーク法学会,情報処理学会,IT総合戦略本部「パーソナルデータに関する検討会」委員,IT戦略本部「政府情報システム刷新有識者会議」臨時構成員,厚生労働省「社会保障分野サブワーキンググループ」構成員,経済産業省「個人情報保護ガイドライン委員会 」委員等を歴任.
 
13:35-13:50 ショートプレゼン(3) 個人情報にまつわる海外事情
佐藤 慶浩 (日本ヒューレット・パッカード株式会社 チーフ・プライバシー・オフィサー/BITA(ビジネス-ITアラインメント)・エヴァンジェリスト)
【講演概要】法条文ばかりに関心を示し,その運用に無頓着な日本.個人を特定する必要がないのに特定した情報を取得してから匿名化をしようとする日本.という違和感を以下のとおり紹介する.1.「法制度とその運用」について,グローバル企業のチーフ・プライバシー・オフィサーとして体感している国内外の実務的な違いを紹介する.2.「ビジネスモデル」について,弊社自身は個人情報そのものに関する事業をしていないが,そのような事業をしている企業におけるデータ解析用のIT構築の支援をする中で見てきた海外の実情を紹介する.
【略歴】1986年日本ヒューレット・パッカード入社.米国開発部門及び英国研究所で,OSやセキュリティ製品の企画・開発等に従事した後,国内及びアジア地域でのセキュリティ事業を統括.2004年から日本法人のチーフ・プライバシー・オフィサー.2013年からエヴァンジェリストを兼務.社外では,IPA及びJIPDECの非常勤研究員の他,政府の内閣官房情報セキュリティ参事官補佐・指導専門官を併任した.
 
13:50-14:05 ショートプレゼン(4) ネットワークロボットサービスとELSIに対するロボットの可能性
宮下 敬宏 (株式会社国際電気通信基礎技術研究所 知能ロボティクス研究所 ネットワークロボット研究室 室長)
【講演概要】商業施設,病院,家,などの様々な日常生活空間において,人々の生活を物理的・情報的に支援するための技術として,ATRではセンサ・ロボット・スマートフォンなどを連携させるユビキタスネットワークロボット技術の研究開発(総務省委託研究)を進めてきた.この技術によって,環境のセンサや,商業施設のロボット,スマートフォン上のアプリなどを連携させた『どこでも』『あなただけ』『いまだけ』の生活支援サービスが可能になる.例えば,特定の人に対して,その人のライフログに基づく情報支援,物理支援サービスなども可能になる.このときには,いわゆるELSI(倫理的・法的・社会的問題)への考慮が極めて重要になる.本ショートプレゼンテーションでは,ロボットサービスを展開する上での必要になる技術と考慮すべき点,解決のためのロボットならではの糸口を紹介する.
【略歴】2000年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程単位取得退学,博士(工学).日本学術振興会特別研究員,ERATO北野共生システムプロジェクト研究員,和歌山大学システム工学部助手を経て,2002年より(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)研究員.2011年より現職.ロボット,スマートフォン,環境センサなどをネットワークを介して連携させるネットワークロボットの研究開発,およびネットワークロボットサービスの社会への普及とイノベーションに従事.
 
14:05-14:20 ショートプレゼン(5) ウェアラブルコンピューティングにおけるパーソナルデータ
塚本 昌彦 (神戸大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 教授)
【講演概要】ウェアラブルコンピューティングが急なブームになっている.メガネ型やウォッチ型のデバイスが続々と現れ,人々のくらしや仕事の様々なシーンで使われようとしている.メガネ型,ウォッチ型以外にも,指輪型,シャツ型,帽子型,靴型など,体の様々な部位にコンピュータやセンサなどが取り付けられ,ユーザやユーザを取り巻く環境が常時モニタリングされたり,ユーザに様々な情報が通知されたりするようになる.これによってこれまでにないような生活,業務革命が予期される一方,これらによって扱われるカメラやセンサなどの情報は,これまでにないほどそのユーザやユーザの周辺にいる人たちの生活に密着したパーソナルデータとなりうる.本講演では,ウェアラブルコンピューティングの取り扱うパーソナルデータとそれを取り巻く問題,今後考えられる問題などをリストアップし,その解決策や今後の社会の方向性などについて議論する.
【略歴】京都大学工学部数理工学科卒,工学研究科応用システム科学専攻修士課程修了,京都大学博士(工学).シャープ(株)研究員,大阪大学講師,助教授を経て現職.NPOウェアラブルコンピュータ研究開発機構理事長,日本ウェアラブルデバイスユーザー会会長.2001年よりウェアラブルの実践生活を行っている.研究テーマはウェアラブル・ユビキタスコンピューティングのシステム,デバイス,インタフェースとそれらの応用.
 
14:20-15:30 パネル討論 人と情報システムとの新たな接点とプライバシーの設計
【討論概要】情報システムがパーソナルデータを扱うにあたり,社会的課題と,それを克服する上での技術的課題として何があるのか.一方で,パーソナルデータを扱うことで社会や個人はどこまで便利になり得るのか,また便利になるのであればプライバシーは一定の妥協が可能なのか.今後の技術革新がもたらすパーソナルデータの可能性と,そのような新たな社会におけるプライバシーのあり方とその実現について論じる.
パネル司会:菊池 浩明 (明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 教授)
【略歴】1990年明治大学院博士前期課程修了.1994年同博士(工学).(株)富士通研究所,東海大学情報通信学部を経て,2013年より明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科教授.1990年日本ファジィ学会奨励賞,1993年情報処理学会奨励賞,1996年SCIS論文賞,2010年情報処理学会JIP Outstanding Paper Award.2013年 IEEE AINA Best Paper Award.電子情報通信学会,日本知能情報ファジィ学会,IEEE,ACM各会員.情報処理学会フェロー.
パネリスト:鈴木 正朝 (新潟大学 法学部 教授)
【略歴】1962年生.2005年より新潟大学法学部 教授.専門は「情報法」.中央大学 大学院法学研究科 博士前期課程修了 修士(法学).情報セキュリティ大学院大学 情報セキュリティ研究科 博士後期課程修了 博士(情報学).法とコンピュータ学会(理事),情報ネットワーク法学会,情報処理学会,IT総合戦略本部「パーソナルデータに関する検討会」委員,IT戦略本部「政府情報システム刷新有識者会議」臨時構成員,厚生労働省「社会保障分野サブワーキンググループ」構成員,経済産業省「個人情報保護ガイドライン委員会 」委員等を歴任.
パネリスト:佐藤 慶浩 (日本ヒューレット・パッカード株式会社 チーフ・プライバシー・オフィサー/BITA(ビジネス-ITアラインメント)・エヴァンジェリスト)
【略歴】1986年日本ヒューレット・パッカード入社.米国開発部門及び英国研究所で,OSやセキュリティ製品の企画・開発等に従事した後,国内及びアジア地域でのセキュリティ事業を統括.2004年から日本法人のチーフ・プライバシー・オフィサー.2013年からエヴァンジェリストを兼務.社外では,IPA及びJIPDECの非常勤研究員の他,政府の内閣官房情報セキュリティ参事官補佐・指導専門官を併任した.
パネリスト:宮下 敬宏 (株式会社国際電気通信基礎技術研究所 知能ロボティクス研究所 ネットワークロボット研究室 室長)
【略歴】2000年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程単位取得退学,博士(工学).日本学術振興会特別研究員,ERATO北野共生システムプロジェクト研究員,和歌山大学システム工学部助手を経て,2002年より(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)研究員.2011年より現職.ロボット,スマートフォン,環境センサなどをネットワークを介して連携させるネットワークロボットの研究開発,およびネットワークロボットサービスの社会への普及とイノベーションに従事.
パネリスト:塚本 昌彦 (神戸大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 教授)
【略歴】京都大学工学部数理工学科卒,工学研究科応用システム科学専攻修士課程修了,京都大学博士(工学).シャープ(株)研究員,大阪大学講師,助教授を経て現職.NPOウェアラブルコンピュータ研究開発機構理事長,日本ウェアラブルデバイスユーザー会会長.2001年よりウェアラブルの実践生活を行っている.研究テーマはウェアラブル・ユビキタスコンピューティングのシステム,デバイス,インタフェースとそれらの応用.