情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス 情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス
大学の一般教育における情報教育で何を学ぶのか
日時:3月18日(水曜日)15:20-17:50
会場:第6イベント会場(吉田南総合館 2F 共北28)
【セッション概要】一般情報教育委員会では全国の大学に対して一般教養教育における情報教育(一般情報教育)の実態調査を2013年度に実施した.その結果に基づき新たな一般情報教育のモデルカリキュラムやルーブリックを策定した.このセッションでは,その報告をすると共に各大学の一般情報教育の取組み事例を紹介し,一般情報教育の課題とあるべき姿についてパネル討論を行う.
司会:駒谷 昇一 (奈良女子大学 生活環境学部 教授)
【略歴】1985~2007年NTTソフトウェア(株).2007~2013年(株)NTTデータ.2007~2010年筑波大学.2013年~奈良女子大学.情報処理学会情報処理教育委員会委員.著書「ずっと受けたかったソフトウェアエンジニアリングの授業」,情報処理学会IT Textシリーズ「情報とネットワーク社会」,「情報と職業」,「情報システム基礎」他.
15:20-15:30 講演(1) 一般情報処理教育のあり方について
河村 一樹 (東京国際大学 商学部 教授)
【講演概要】昨年度,一般情報教育委員会の委員の連名で,科研費基盤研究(C)を取得しました.研究課題名は,「大学における一般情報教育モデルの構築に関する研究」であり,2013〜2015年度の3年間の研究期間となっています.研究体制としては,「国内調査」「海外調査」「GEM(General Education Model)構築」の3グループに分割してそれぞれに調査研究を進めています.「国内調査」グループでは,全国の大学に対して一般情報教育の実態調査を行い,現在その結果についての分析を進めています.「海外調査」グループでは,昨年に中国,今年はベトナムへ出向き,学校での情報教育に関する視察調査を実施しました.それらの調査活動の内容を踏まえた上で,「GEM構築」グループにおいて,一般情報教育モデルの構築を目指します.GEMモデルでは,一般情報教育に関するモデルとして,体系的なシラバス,指導法,評価方法,標準教科書,副教材などを提供する予定です.以上に関する概要について報告します.
【略歴】宮城大学事業構想学部情報デザイン学科助教授を経て,現在,東京国際大学商学部経営学科教授.1955年東京生まれ.立教大学理学部卒,日本大学大学院理工学研究科電子工学専攻博士前期課程修了,博士(工学).情報教育工学の研究・教育に従事.文部科学省技術政策研究所科学技術動向研究センター専門調査員,情報処理学会一般情報教育委員会委員長,初等中等教育委員会委員,モバイルラーニングコンソシアム理事などを歴任.
 
15:30-16:00 講演(2) 一般情報教育の新たな教育体系
喜多 一 (京都大学 国際高等教育院 教授)
【講演概要】一般情報教育委員会では昨年度,各大学の一般情報教育についてのアンケートによる実態調査を行いました.本講演では,この結果などを踏まえて,大学の一般情報教育がどういう目標をもって行われるべきか,そしてそれを実現するモデルカリキュラムやルーブリックなどの評価基準はどのようなものか,素案を示しつつ考えます.また,多くの大学でモデルカリキュラムの実施に当たっての隘路となるものは何か,それを克服するために当学会などがどのような支援を行うべきかも併せて考えます.
【略歴】1987年京都大学大学院工学研究科電気工学専攻,博士後期課程,研究指導認定退学,京都大学工学部,助手.東京工業大学大学院総合理工学研究科助教授,大学評価・学位授与機構 教授,京都大学学術情報メディアセンター教授を経て,2013年より京都大学国際高等教育院 教授,工学博士,情報処理学会,電気学会,計測自動制御学会,システム制御情報学会などの会員.
 
16:00-16:20 講演(3) 広島大学における一般情報処理教育の取組みと課題
稲垣 知宏 (広島大学 情報メディア教育研究センター 准教授)
【講演概要】ICT技術の発展と情報化社会の進展に合わせ,大学における一般情報処理教育は,常にその教育内容を見直してきた.初等中等教育における情報教育内容の充実は,新入生の持つ情報処理に関する知識,技能を多様化し,情報教育の高度化をもたらした.また,卒業生に求める情報処理に関する力も徐々に変化し,特に,情報倫理,情報セキュリティに関する要請が大きくなっており,情報教育の質的な改革が求められてきた.広島大学においても,2006年問題当時の情報教育カリキュラム改革,及び,2008年12月中央教育審議会答申を受けて進められた広い意味での情報教育改革等,さまざまな取り組みがなされてきた.ここでは,広島大学において進められた,情報教育の変遷を例に,一般情報処理教育の取り組みについて振り返り,現在,求められている一般情報処理教育の課題について議論する.
【略歴】1995年広島大学大学院理学研究科博士課程修了.博士(理学).広島大学総合情報処理センター助手,広島大学総合科学部講師などを経て,2007年から現職.広島大学の情報教育改革に取り組んできた.主な研究分野は情報教育,高エネルギー物理学,平和科学など.
 
16:20-16:40 講演(4) 一般情報処理教育の取組みと課題
野崎 剛一 (長崎大学 ICT基盤センター 教授/情報基盤デザイン部門長)
【講演概要】長崎大学では,現在,長崎大学ICT基盤センターに所属する6名(教授3名,准教授2名,助教1名)の専任教員で,すべての学生(夜間主コースを除く)に対する教養教育の情報科学科目「情報基礎(必修2単位)」(一般情報処理科目)を講義担当し,本年度からは,全学生にノートPCを購入・持参させて講義演習を実施しています.また,ICT基盤センター専任教員は,2012年度から開始された全学モジュール科目の「情報社会とコンピューティング」講義10科目を担当しています.これらの取り組みについて,長崎大学の情報センターと情報処理教育環境や組織体制の変遷を振り返りながら報告します.
【略歴】博士(工学).1975年九州大学工学部電気工学科卒業後,長崎大学助手,講師,助教授を経て教授.1986年~1987年米国テネシー州立大学客員研究員.現在,長崎大学教授ICT基盤センター情報基盤デザイン部門長,国公立大学情報システム研究会(IS研)会長.
 
16:50-17:50 パネル討論 一般情報教育のあり方と課題
【討論概要】2000年以降のブロードバンドの普及,2008年以降のスマートフォンの普及を経て,現在,社会における情報環境は劇的に変化しつつある.このような状況の中で大学の一般教養教育の中で教えるべき情報教育(一般情報教育)も変化せざるを得ない状況に置かれている.本パネル討論では,一般情報教育に携わられている4人のパネリストから,現在,実施されている一般情報教育の内容とその課題について生々しいお話をお伺いし,その後,フロアを交えて,今後の一般情報教育のあるべき姿を展望したいと考えている.
パネル司会:山川 修 (福井県立大学 学術教養センター 教授)
【略歴】1985年名古屋大学理学研究科博士後期課程物理学専攻修了(理学博士).高エネルギー物理学研究所客員研究員,日本ビジネスオートメーション(現東芝情報システム)研究開発室,福井県立短期大学助教授を経て,現在,福井県立大学学術教養センター教授.著書:「情報リテラシー 第3版」森北出版2013(共著),「情報とネットワーク社会」オーム社2011(共著)ほか.情報処理学会,教育システム情報学会,日本教育工学会,日本物理学会各会員.
パネリスト:北上 始 (広島市立大学 大学院情報科学研究科 教授)
【略歴】1976年東北大学工学研究科電子工学専攻博士前期課程修了,富士通,富士通研究所研究員,新世代コンピュータ技術開発機構(ICOT)主任研究員,国立遺伝学研究所客員助教授などを経て,1994年より広島市立大学情報科学部教授,博士(工学).情報処理学会(シニア会員,一般情報教育委員会委員,論文誌「数理モデルと応用」編集委員),日本工学教育協会,日本データベース学会(論文誌編集委員),人工知能学会(評議員),ACM,IEEE各会員.編集「一般教育の情報」(あいり出版),著書「情報とネットワーク社会」(オーム社),「データベースと知識発見」(コロナ社),「ビッグデータ時代のゲノミクス情報処理」(コロナ社)ほか.
パネリスト:中西 通雄 (大阪工業大学 情報科学部コンピュータ科学科 教授)
【略歴】1978年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業,1980年同博士前期課程修了,三菱電機入社.1990年大阪大学助手,情報処理教育センター助教授を経て,2002年より現職.大阪大学および放送大学非常勤講師.博士(工学).情報科学,情報倫理および技術者倫理を中心する教育研究のほか,情報倫理ビデオの作成,NII情報セキュリティポリシー推進部会,私情教情報教育委員会等に参加.電子情報通信学会,教育システム情報学会等会員.
パネリスト:佐々木 整 (拓殖大学 工学部 教授)
【略歴】1991年拓殖大・工・情報卒.1993年同大大学院修士課程了.1995年同大工学部助手.現在同学部教授.博士(工学).専門は教育工学.ICTの教育利用に関する研究に従事.2001年日本教育工学会研究奨励賞.IEEE Education Society Japan Chapter chair,一般情報教育委員会幹事,日本教育工学会編集委員など.
パネリスト:布施 泉 (北海道大学 情報基盤センター メディア教育研究部門 教授)
【略歴】北海道大学大学院理学研究科博士後期課程修了,博士(理学).北海道大学情報処理教育センター助手,情報基盤センター助手,助教授等を経て,2010年から教授.情報教育や教育の情報化・オープン化に関する研究に従事し,情報倫理ビデオ教材の開発にも寄与する.現在,北海道大学の一般情報教育である情報学I/IIの科目責任者.1学生約2600名が対象の必修授業にて,各年約50名のTAを指揮し,情報教育を少人数教育で推進している.