情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス 情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス
情報処理と折り紙
日時:3月19日(木曜日)9:30-12:00
会場:第3イベント会場(吉田南総合館 2F 共北25)
【セッション概要】日本で折り紙というと子供の遊びと誤解されがちであるが,海外でもOrigamiそのままで通用するほど市民権を得ている.もっと広く一般に「折り」という操作にまつわる問題は,ミクロはDNAの折りたたみの問題から,マクロは宇宙における巨大建造物の伸展の問題まで,あるいは身近なところでは車のエアバッグなど,さまざまなところで幅広い応用を持つ.こうした「折り」に関する問題は,近年「計算折り紙(Computational Origami)」という枠組みで呼ばれて,活発な研究が行われている.これは幅広い分野にまたがったテーマであり,建築,機械工学,グラフィック,計算幾何学,アルゴリズムなど,さまざまな分野の研究者が研究を行っている.本企画では,こうしたさまざまなバックグラウンドを持つ研究者が,情報処理という切口から,最新の研究成果を講演し,分野横断的な研究の発展を狙いとしている.
司会:堀山 貴史 (埼玉大学 情報メディア基盤センター 准教授)
【略歴】1997年京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.1999年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助手.2002年京都大学大学院情報学研究科助手.2007年埼玉大学大学院理工学研究科准教授.2012年同大学情報メディア基盤センター准教授.博士(情報学).計算幾何学,組合せ問題,列挙アルゴリズムなどの研究に従事.
司会:上原 隆平 (北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授)
【略歴】1991年,電気通信大学情報工学科博士前期課程修了.キヤノン(株)情報システム研究所研究員.1993年,東京女子大学情報処理センター助手.1998年,駒澤大学自然科学教室講師,2001年より助教授.2004年,北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授,のち准教授.2011年より,同教授.専門は計算量理論,アルゴリズムとデータ構造,特にグラフアルゴリズム.最近は特に,パズルや折り紙などを理論計算機科学の観点から研究.電子情報通信学会,情報処理学会,EATCS各会員.
9:30-9:55 講演(1) 科学が折り紙と出会うーパターン形成とMiura-ori
三浦 公亮 (東京大学/宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 名誉教授)
【講演概要】細いピアノ線の両端を軸方向に圧縮すると,滑らかで美しい曲線のパターン群が生成され,Eulerのエラスチカと呼ばれている.あるとき男は考えた.ピアノ線に替えて,限りなく薄い弾性板とすれば,滑らかで美しい曲面のパターンができるだろうと.予想に反して,見出されたパターンは,美しいが,滑らかとは程遠い,ジグザグの折り面,つまり折り紙であった.通称Miura-oriと呼ばれるこのパターンは,その生成の由来から自己組織化,二次元の展開収縮,歪エネルギー最小等の性質を持つ.加えて,折り紙の最小の分子,一自由度のメカニズム・駆動系,テッセレーション,生物のメカニズムとの類似等の性質を持つ故に,工学的な利用の拡がりが期待される.
【略歴】東京大学工学部船舶卒(1954),同大学院航空博士(1959),東京大学宇宙航空研究所助教授(1965〜73),同教授(1973〜81),文部省宇宙科学研究所教授(1981〜1993).
 
9:55-10:20 講演(2) 折紙工学を推進する折紙式3次元プリンターの開発
萩原 一郎 (明治大学 教授/東京工業大学 名誉教授)
【講演概要】展開収縮構造の双安定性を利用した夢の免振機構を始めとする,折紙工学における最新の話題について述べる.次に,3次元構造を適切に分割し,それぞれの,山線・谷線付きの2次元展開図をプリント出力し,折紙のように手あるいは折紙ロボットで実物モデルを組立てる折紙式3次元プリンターを説明する.従来の積層型の3次元プリンターと比較し,静物に対し4次元の挙動,大きさとテキスチャー自由の特性を折紙式は有すことを示す.2次元展開図を適切に修正する事などにより,折紙ロボットに備えるべき機能は少なくて済むこと,紙だけでなく厚紙,樹脂,金属まで,同様の折紙ロボットで,折紙のように複雑な構造の大量生産法も期待されることについて述べる.
【略歴】1972年3月京都大学大学院工学研究科数理工学専攻修了.同年4月~1996年3月日産自動車(株).1996年4月~1999年3月東京工業大学工学部機械科学科教授.1999年4月~2012年3月,同大学大学院理工学研究科機械物理工学専攻教授.2012年4月~現在,明治大学研究・知財戦略機構特任教授.先端数理科学インスティテュート副所長.東京大学工学博士(機械工学).日本学術会議会員.東京工業大学名誉教授.
 
10:20-10:45 講演(3) 多面体の折りたたみとアルゴリズム
奈良 知恵 (東海大学 理学部 (元)教授)
【講演概要】折りたたみ傘やエアバッグなどには保管スペースを節約するために「折りたたみ」が用いられ,アコーディオンやフイゴにもエア・ポンプの役割を担う部分にプリーツ状の「折りたたみ」が使用されている.ここでは,多面体状の立体の表面を,切れ目や伸縮を許さずに折りたたんで平面化する問題を扱う.近年提案されたこの問題に対して,最近までに得られている種々の研究結果を紹介し,とくに,アニメーションに必要な数学的プロセスとして重要な役割を担うアルゴリズムについて考察する.
【略歴】お茶の水女子大学理学部数学科卒業,同大学の大学院前期および後期課程を修了し,学術博士(数学)を取得.公立高等学校の教員,武蔵工業大学(現東京都市大学)の助手・講師,東海大学の助教授・教授・熊本阿蘇教養教育センター主任などを歴任し,2013年度末に定年退職.現在は東海大学非常勤講師.
 
10:50-11:15 講演(4) 計算機による新しい折り紙の形の発見支援
三谷 純 (筑波大学 大学院システム情報系 情報工学域 准教授)
【講演概要】折り紙の数理に関する研究が進んだ現代においては,意図した形を1枚の紙から作り出すための折り方を,計算機によって導き出すことができる.さらには,折りのプロセスをシミュレートすることも可能である.しかしながら,見る人を惹きつけるような,新しく興味深い形の創出には,他のアートと同じように,試行錯誤と偶発的な発見のプロセスが必要不可欠である.そこで,折り紙の設計を対話的に,またはランダムかつ自動的に行うことができるソフトウェアの研究開発を行ってきた.このようなソフトウェアを用いることで,試行錯誤のプロセスさえも,実際の紙を用いずに高速に行うことができ,様々な形を生み出すことが可能となった.本発表では,これらの事例紹介とともに,ソフトウェアによって生み出された,時には曲線での折りを持つ折紙作品の数々を紹介する.そして,計算機による折り紙の創作活動の支援について考察する.
【略歴】2004年, 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了. 博士(工学).理化学研究所研究員を経て2005年より筑波大学に勤務. 主な研究テーマは形状モデリング,計算幾何学,計算折紙,デジタルファブリケーション,コンピュータヒューマンインタフェースなど.日本折紙学会評議員,日本図学会理事.
 
11:15-11:40 講演(5) 折紙設計と剛体折紙
舘 知宏 (東京大学 大学院総合文化研究科 広域システム科学系 助教)
【講演概要】折紙は,一枚の紙を折って様々な形にするという伝統的な遊びの枠を超え,国際的そして学際的な研究分野として発展している.折紙の応用は,軽量で剛性の高い構造物を作る折版構造や,自己折り(Self-Folding)を用いた新しいものづくりの方法,折り畳み展開し形や体積を変化させられる展開構造物などが挙げられる.このような応用の可能性を様々な与条件において実現するためには,折り畳みや連続変形などの機能を発揮できる幾何条件を明らかにし,この条件をパターン全体で同時に満たすように解く必要がある.ここでは,折紙の幾何学とアルゴリズムを用いた計算折紙が重要な役割を担う.本講演では,三次元折紙設計を解説し一枚の紙を折るだけで任意に与えられた複曲面を近似可能であることを示す.また剛体折紙(パネルとヒンジで形作られるメカニズム)のモデルにおける変形可能性を解くことで得られる硬さと柔らかさが共存する特殊な展開構造物を紹介する.
【略歴】2005年東京大学工学部建築学科卒.2010年同大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了.博士(工学).同年より東京大学大学院総合文化研究科助教,さきがけ研究者.折紙の数理研究・計算に基づく設計手法の研究・システム開発を行う.2002年より計算による折紙創作を続ける.2013年,国際シェル・空間構造学会(IASS)よりTsuboi Awardを受賞.
 
11:40-12:00 パネル討論 情報処理と折り紙
【討論概要】近年,科学への折り紙の応用が広がっている.特に対象を紙に限定せず,薄い素材を折るという枠組みで考えると,応用範囲は非常に広い.たとえば宇宙の建造物といったマクロな応用から,タンパク質の折りたたみといったミクロな応用,さらに梱包や建築といった身近な応用まで,あらゆるところに「折り」という現象は現れる.そして実際,工学への応用もすでにいろいろな形で実用化されている.この「折る」という操作を「基本操作」と考えると,折り紙の科学は情報科学の枠組みと相性がよい.このため最近は「計算折り紙」と呼ばれる分野の研究が,理論計算機科学,特に計算幾何学の研究者によって活発に行われている.本討論では,こうした背景のもとに,多彩な分野で折り紙の科学を活用している研究者を呼び,実際にどのような応用が行われているかといった現状と,今後の課題を討論したい.特に日本は「折り紙」そのものはポピュラーであり,Origami という言葉自体が英語化しているにも関わらず,研究対象としての折り紙は,まだまだ発展途上であり,特に情報科学からどのようなアプローチが可能であるかを考えたい.
パネル司会:堀山 貴史 (埼玉大学 情報メディア基盤センター 准教授)
【略歴】1997年京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.1999年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助手.2002年京都大学大学院情報学研究科助手.2007年埼玉大学大学院理工学研究科准教授.2012年同大学情報メディア基盤センター准教授.博士(情報学).計算幾何学,組合せ問題,列挙アルゴリズムなどの研究に従事.
パネル司会:上原 隆平 (北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授)
【略歴】1991年,電気通信大学情報工学科博士前期課程修了.キヤノン(株)情報システム研究所研究員.1993年,東京女子大学情報処理センター助手.1998年,駒澤大学自然科学教室講師,2001年より助教授.2004年,北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授,のち准教授.2011年より,同教授.専門は計算量理論,アルゴリズムとデータ構造,特にグラフアルゴリズム.最近は特に,パズルや折り紙などを理論計算機科学の観点から研究.電子情報通信学会,情報処理学会,EATCS各会員.
パネリスト:三浦 公亮 (東京大学/宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 名誉教授)
【略歴】東京大学工学部船舶卒(1954),同大学院航空博士(1959),東京大学宇宙航空研究所助教授(1965〜73),同教授(1973〜81),文部省宇宙科学研究所教授(1981〜1993).
パネリスト:萩原 一郎 (明治大学 教授/東京工業大学 名誉教授)
【略歴】1972年3月京都大学大学院工学研究科数理工学専攻修了.同年4月~1996年3月日産自動車(株).1996年4月~1999年3月東京工業大学工学部機械科学科教授.1999年4月~2012年3月,同大学大学院理工学研究科機械物理工学専攻教授.2012年4月~現在,明治大学研究・知財戦略機構特任教授.先端数理科学インスティテュート副所長.東京大学工学博士(機械工学).日本学術会議会員.東京工業大学名誉教授.
パネリスト:奈良 知恵 (東海大学 理学部 (元)教授)
【略歴】お茶の水女子大学理学部数学科卒業,同大学の大学院前期および後期課程を修了し,学術博士(数学)を取得.公立高等学校の教員,武蔵工業大学(現東京都市大学)の助手・講師,東海大学の助教授・教授・熊本阿蘇教養教育センター主任などを歴任し,2013年度末に定年退職.現在は東海大学非常勤講師.
パネリスト:三谷 純 (筑波大学 大学院システム情報系 情報工学域 准教授)
【略歴】2004年, 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了. 博士(工学).理化学研究所研究員を経て2005年より筑波大学に勤務. 主な研究テーマは形状モデリング,計算幾何学,計算折紙,デジタルファブリケーション,コンピュータヒューマンインタフェースなど.日本折紙学会評議員,日本図学会理事.
パネリスト:舘 知宏 (東京大学 大学院総合文化研究科 広域システム科学系 助教)
【略歴】2005年東京大学工学部建築学科卒.2010年同大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了.博士(工学).同年より東京大学大学院総合文化研究科助教,さきがけ研究者.折紙の数理研究・計算に基づく設計手法の研究・システム開発を行う.2002年より計算による折紙創作を続ける.2013年,国際シェル・空間構造学会(IASS)よりTsuboi Awardを受賞.