情報処理学会 第75回全国大会 会期:2013年3月6日~8日 会場:東北大学 川内キャンパス 情報処理学会 第75回全国大会
データセンタにおけるグリーンITの取り組み
日時:3月8日(金)9:30-12:00
会場:第4イベント会場 (C棟 2F C200)
【セッション概要】NEDOグリーンITのプロジェクトでは、今や情報処理にとって欠かすことのできないデータセンタの消費電力削減に向けたいくつかの研究開発をしています。ハードウェア的な取り組みとしては、サーバの抜熱に関する効率化、サーバの光インターコネクト、高圧直流電源の利用、ソフトウェア的な取り組みとしては、ストレージ内のデータ重複除去、データと処理の親和性を高めたグリーンクラウドの他、これらの研究開発の成果を融合した次世代モジュール型データセンタの構築と評価を実施しています。これらの成果について各実施者が発表を行う。
司会:関口 智嗣 (独立行政法人産業技術総合研究所 情報通信・エレクトロニクス分野 副研究統括)
【略歴】1959年生東京大学理学部情報科学科卒、筑波大学大学院理工学研究科修士課程、東京大学大学院情報理工学研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。1984年工業技術院電子技術総合研究所入所。2001年独立行政法人産業技術総合研究所に改組。同所グリッド研究センター長、情報技術研究部門長を歴任。現在、副研究分野統括。グリッド協議会会長、HPCIコンソーシアム理事。並列・分散コンピューティングとE-サイエンスなどの応用システムに興味を持つ。
9:30-9:40 講演-1 NEDOグリーンITプロジェクト
関口 智嗣 (独立行政法人産業技術総合研究所 情報通信・エレクトロニクス分野 副研究統括)
【講演概要】グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト)では、ITの基盤となるデータセンタとネットワークの消費電力を30%以上削減する省エネ技術を開発している。プロジェクト成立に至った背景と課題解決のための主要な要素技術を概観する。
【略歴】1959年生東京大学理学部情報科学科卒、筑波大学大学院理工学研究科修士課程、東京大学大学院情報理工学研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。1984年工業技術院電子技術総合研究所入所。2001年独立行政法人産業技術総合研究所に改組。同所グリッド研究センター長、情報技術研究部門長を歴任。現在、副研究分野統括。グリッド協議会会長、HPCIコンソーシアム理事。並列・分散コンピューティングとE-サイエンスなどの応用システムに興味を持つ。
 
9:40-10:00 講演-2 集熱沸騰冷却システムの開発
吉川 実 (日本電気株式会社 グリーンプラットフォーム研究所 主任研究員)
【講演概要】データセンタ内で消費されている電力の約1/2は、IT機器の冷却装置と、IT機器の排熱を冷却する空調設備が消費しているという実態がある。これは、データセンタ建屋の熱気流マネジメントが難しいため、空調機がIT機器に必要な風量以上に送風しなければならないことが一つの要因となっている。本プロジェクトでは、IT機器を低風量で冷却することにより、ファシリティー側を変更することなく、データセンタの冷却電力を削減する省エネ冷却技術として、相変化冷却(沸騰冷却)モジュール技術を研究開発した。そして、実際に1Uサーバに冷却モジュールを搭載し、DCの省エネ効果を検証した。
【略歴】1990年NEC入社。スーパーコンピュータなどの冷却技術の開発設計を経て、2005年からNEC中央研究所にて熱制御基盤技術の研究開発に従事。
 
10:00-10:20 講演-3 将来の進化を想定した低消費電力アーキテクチャの開発
柳町 成行 (日本電気株式会社 グリーンプラットフォーム研究所 主任研究員)
【講演概要】現在、クラウドコンピューティングの進展とともに、サービスの基幹となるデータセンタの高度化および、データセンタの肥大化によるエネルギー問題が顕在化している。この様な背景のもと、次世代データセンタでは高度な処理を可能としつつ、低消費電力なIT/NW機器が求められている。本講演では、データセンタ内に設置されるIT/NW機器内のデータ伝送を、従来の電気接続から光接続に変えることで、機器内データ伝送の高速化と低消費電力化を可能とする光インターコネクション技術の開発成果について報告するとともに、システムの消費電力を削減する光接続を用いた新しい筐体アーキテクチャの技術開発について説明する。
【略歴】NECグリーンプラットフォーム研究所主任研究員。1993年NEC入社。ハードディスク、MEMS光スイッチ等主にメカトロニクスの研究に従事したのち、2007年より光インターコネクションの研究に従事。
 
10:20-10:40 講演-4 冷却ネットワークとナノ流体による集中管理型先進冷却システムの研究開発
深萱 正人 (株式会社SOHKi 代表取締役)
【講演概要】データセンタ内で消費されている電力の内、IT機器の冷却装置と、IT機器の排熱を冷却するための空調設備の消費電力が大きな課題となっている。本プロジェクトでは、CPU等からの発熱を冷却ネットワークのシステムとして直接データセンタ外に排出することにより従来と較べ大幅な空調電力を削減する省エネルギー技術の研究開発を実施した。
【略歴】1983年名古屋大学工学部卒。住友電気工業入社。新事業製品開発に従事し、冷凍機用電線開発、超極細線開発、HDDヘッドサスペンション用配線開発、非接触ICタグ開発、新規銅ボンディングワイヤー開発、ダイヤモンドワイヤーソー開発等に従事。2003年研究開発型ベンチャー・株式会社SOHKiを起業。 デバイス周辺の技術開発、産学官による共同研究開発及び新事業開発コンサルティングに従事、現在に至る。
 
10:40-11:00 講演-5 データセンタの電源システムと最適直流化技術の開発
田中 徹 (株式会社NTTファシリティーズ エネルギー事業本部 技術部 蓄エネ担当 担当課長)
【講演概要】従来のデータセンタの電源システムは、無停電電源装置(UPS)を通じてICT機器へ給電する交流電源システムが主流であるが、変換段数が多いため電力損失が大きいことと、稼働率が低いことによるシステム効率の悪化が課題である。本プロジェクトでは、電源システムの直流化により、システム全体の変換段数を削減するとともに約380Vの高電圧化により、システム効率を向上した。さらにICT機器の動作状況に応じて電源ユニットの運転台数を最適化(アダプティブ制御)することで、常に効率の高い状態で運転することを実現した。本稿では、データセンタの電源における省エネ化として高電圧直流電源システムとアダプティブ制御技術について取り組み内容と成果について報告する。
【略歴】1998年東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻修了。同年NTT入社。主に通信用直流給電システムの安定性評価技術の研究に従事。2009年からNTTファシリティーズにおいて、主に電力システムの開発・導入およびスマートグリッド関連技術開発に従事。2003年第47回、2009年第54回澁澤賞受賞。
 
11:00-11:20 講演-6 高速重複除去技術と省電力ストレージシステムへの応用
西川 克彦 (富士通株式会社 ストレージシステム事業本部 本部長付)
【講演概要】近年、様々な情報が大量に生成・蓄積されるビッグデータ時代を迎え、この大量データを効率良く蓄積管理することが喫緊の課題となっている。この問題を解決するため、大量に蓄積されたデータの中からランダムにアクセスされるデータの重複をリアルタイムに発見する技術を開発した。従来から重複発見に利用されていたブルームフィルターを多段構成し、重複の判断を高速化するとともに蓄積位置の検索機能も兼備させることで、従来は困難であったソフトウェアのみによるプライマリーストレージの重複除去を可能とした。本技術によりデータの蓄積容量を圧縮することで、ストレージシステムの構成機器を削減し、省電力化に貢献することができる。
【略歴】東京大学工学部電子工学科卒業。富士通株式会社入社、株式会社富士通研究所出向。パターン認識、コンピュータグラフィクス、ビデオサーバ、高速スイッチ技術、ストレージシステムなどの研究開発に従事。2012年より富士通株式会社ストレージシステム事業本部兼務。情報処理学会2004年度業績賞受賞。映像情報メディア学会会員。
 
11:20-11:40 講演-7 クラウド・コンピューティング技術の開発
菅 真樹 (日本電気株式会社 クラウドシステム研究所 主任)
【講演概要】本講演では、大量データの蓄積・処理に着目して研究を行った、省電力クラウド・コンピューティング技術について述べる。近年のデータセンタではデータ量が増大することにより、データ格納容量、計算におけるI/O処理時間比率、処理量よりも過剰に稼働する機器などが増大しており、これらを削減するための技術について述べる、また、これらの技術を用いて、Webアプリケーションシステムを構築・動作させた実証実験の省電力効果について述べる。さらに、電力逼迫時の節電要求に対して、データセンタの電源制御システムと連携させた、IT機器の省電力制御技術、その効果について述べる。
【略歴】2001年東京工業大学工学部制御システム工学科卒業。2003年東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻修士課程修了。同年より、NECの中央研究所に勤務し、耐災害ストレージシステム、情報検索システム、分散ストレージシステム、クラウド・コンピューティングシステムの研究に従事。2010年より東京工業大学理工学研究科計算工学専攻博士課程在学中。
 
11:40-12:00 講演-8 次世代モジュール型データセンタの開発と省エネ指標
伊藤 智 (独立行政法人産業技術総合研究所 情報技術研究部門 研究部門長)
【講演概要】グリーンITプロジェクトで研究開発された主要な技術の成果を統合することで、データセンタの年間消費電力量を30%以上削減可能であることを検証している。検証のためのデータセンタおよびサーバシステムのモデリングと評価指標、データセンタの総合評価のための実証実験について紹介する。
【略歴】1987年筑波大学物理学専攻理学博士課程修了。同年(株)日立製作所入社。同社にてコンピュータの利用技術に関する研究に従事。2002年6月産業技術総合研究所入所。グリッド技術, グリーンIT, クラウドコンピューティング等の産業分野への応用研究に従事。