情報処理学会 第75回全国大会 会期:2013年3月6日~8日 会場:東北大学 川内キャンパス 情報処理学会 第75回全国大会
コンピュータグラフィクスの新展開

日時:3月8日(金)9:30-12:00
会場:第3イベント会場 (B棟 2F B200)

【セッション概要】近年の計算機や計測装置、ネットワークの発展は、コンピュータグラフィクス(CG)にも大きな影響を与え、CG映像には大きな質的変換が生じている。GPU (Graphics Processing Unit)に代表される計算パワーの増大は、物理現象の精緻なシミュレーションを可能とした。デジタルカメラやビデオカメラに代表される各種計測装置の発展も、CG映像のリアリティに大きく貢献している。計測装置から得られる実世界情報によって、CG映像に現実世界をさまざまな形で反映させられるようになった。さらに、ネットワーク上に遍在する莫大な実世界情報が利用可能となり、より高品質なCG映像の作成技術が提案されている。本企画では、CG界の第一人者の方々から、「コンピュータグラフィックスの新展開」に関するご講演をいただく。

司会:山口 泰 (東京大学 大学院総合文化研究科 広域システム科学系 教授)
【略歴】1988年東京大学大学院工学系研究科情報工学専門課程博士課程修了(工学博士)。東京電機大学助教授などを経て、2002年より東京大学 大学院 総合文化研究科・情報学環 教授専門は、視覚メディア、画像処理、形状処理、最近は錯覚現象の利用などに興味を持っている。情報処理学会、ACM、IEEE等の会員、日本図学会副会長など。
9:30-9:55 講演-1 写実的レンダリング
岩崎 慶 (和歌山大学 システム工学部情報通信システム学科 准教授)
【講演概要】コンピュータグラフィックスの分野において、高精細で写実的な画像を高速にレンダリングする研究は、重要な研究課題の一つとして、現在まで多くの研究がなされてきた。近年、光源として実際の画像(環境マップ)を利用し、現実世界の複雑な環境照明下で現実感のあるシーンをレンダリングするImage-based Lighting手法の研究が盛んに行われている。本講演では、Image-based Lightingを考慮したリアルタイムレンダリング手法について解説する。環境照明を様々な関数(球面調和関数・ウェーブレット関数・球面ガウス関数)の線形和で表現することによって高コストな輝度計算を高速に計算する手法について解説する。
【略歴】1999年東京大学理学部卒業。2001年同大学大学院新領域創成科学研究科博士前期課程修了。2004年同大学大学院新領域創成科学研究科博士後期課程修了。同年、和歌山大学システム工学部助手。2007年、同講師。2009年、同准教授。主としてコンピュータグラフィクスに関する研究に従事。科学博士。
 
9:55-10:20 講演-2 自然現象のビジュアルシミュレーション
土橋 宜典 (北海道大学 大学院情報科学研究科 准教授)
【講演概要】CGにおいて、水、炎、雲などの自然現象を表現するための手法として、流体解析を利用した手法に注目が集まっている。本発表では、まず、数値流体解析の基礎となるナビエ・ストークス方程式について簡単に説明する。そして、その数値計算を利用した煙、炎、雲および風きり音のシミュレーション手法について解説する。
【略歴】1997年広島大学大学院工学研究科システム工学専攻博士課程(後期)修了。1997年広島市立大学情報科学部助手。2000年北海道大学大学院工学研究科助教授。2004年北海道大学大学院情報科学研究科助教授。2007年北海道大学大学院情報科学研究科准教授(名称変更)。現在に至る。
 
10:20-10:45 講演-3 大量映像の分析と利用に基づく映像合成
岡部 誠 (電気通信大学 / 科学技術振興機構さきがけ 助教)
【講演概要】インターネット上に多くの写真や動画が共有されて、いつでも、どこにいても世界中の人々の映像作品を鑑賞できる時代になった。このインターネット上の大量の映像データは私たち研究者にとっても期待に満ちた研究対象で、これらを上手く分析・利用できれば、より使いやすい映像鑑賞ツールや映像製作環境が実現できると考えている。見たい映像の検索や、映像中の人や物体をコンピュータに認識させる映像理解については映像分析の研究分野(コンピュータビジョン、マルチメディアなど)で盛んに研究されているが、近年、これらの技術を映像製作へ応用する試みがコンピュータグラフィックス(CG)の分野でも始まっている。この章ではCG分野における画像データベースを用いた最近の研究と、我々のグループが取り組んでいる動画の鑑賞。合成技術について紹介する。
【略歴】2008年3月東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻にて博士号を取得。在学中、Sony CSL、Microsoft Research Asiaでインターンシップを経験。2008年4月より、マックスプランク研究所のCGグループにポストドクターとして所属しました。現在、電気通信大学に助教として所属し、ビデオに基づくアニメーション生成とコンピュータグラフィックスのためのユーザインタフェースデザインに興味があり、研究を行っています。
 
10:45-11:10 講演-4 テクスチャ合成技術の新たな応用と展開
高山 健志 (ETH Zurich Interactive Geometry Lab, Institute for Visual Computing 日本学術振興会海外特別研究員)
【講演概要】テクスチャ合成とは、与えられた画像中に見られる繰り返しパターンなどを分析し、それを利用して何らかの制約を満たす新しい画像を生成する技術である。三次元CGにおいてシーンのテクスチャを用意するのに使われたり、画像編集において不要な部分を削除するのに使われたりするなど、テクスチャ合成はすでにCGにとって必要不可欠な基礎技術として広く一般に普及している。本講演では、2000年代に急速に発展したテクスチャ合成の基本的な考え方を簡単に紹介した後、より高度な画像合成への応用や、画像以外のデータの合成への応用など、テクスチャ合成に関する近年の研究事例や動向を紹介する。
【略歴】2012年3月東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。2012年4月より現職。コンピュータグラフィクスに関する研究に従事。主な興味の対象はボリューメトリックなモデリング、テクスチャ合成、スケッチベースインタフェースなど。
 
11:10-11:35 講演-5 モーションキャプチャデータの高度利用
向井 智彦 (株式会社スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 シニアリサーチャー)
【講演概要】モーションキャプチャ装置で3次元計測された人間の動きは、CGで構成される人物のリアルな動きを再現するデータとして広く用いられている。従来の研究では、計測データを所望の環境条件に適合させるために編集する技術に焦点が当てられてきたが、近年ではゲーム等の対話的なアプリケーションに用いるために、計測データを仮想環境の変化や簡易な動作入力装置と連携させて、即時的にモーションを生成する技術が注目されている。本講演では、計測データに基づく自律的な実時間動作合成に関する研究と、カメラや加速度センサ等を入力デバイスから得られたセンサ信号と精密な計測データを連動させた動作生成に関する研究について紹介する。
【略歴】2006年豊橋技術科学大学大学院博士後期課程電子・情報工学専攻修了。博士(工学)。同年同大助教。2009年より(株)スクウェア・エニックス、テクノロジー推進部、シニアリサーチャー。コンピュータグラフィクス、ヒューマノイドアニメーションに関する研究開発に従事。
 
11:35-12:00 講演-6 ディジタルプロダクションにおける技術開発事例と今後の展開
四倉 達夫 (株式会社オー・エル・エム・デジタル 研究開発部門 ソフトウェアエンジニア)
【講演概要】昨今、劇場版映画、TV番組やゲーム映像からWebコンテンツまで、ディジタル映像や技術の活躍の場は飛躍的に増加してきた。それに伴いディジタル映像技術も著しい進歩を遂げている。本発表では,映像制作の現場経験にもとづき、OLMデジタルにおける映像制作工程とそれに伴う技術開発、さらに将来にわたって解決すべき課題を述べる。まず、100人を超えるデザイナーがCG制作をする際に必要な各種データの運用管理(アセットマネジメント)について概説する。次に、フェイシャルアニメーション技術や立体視(S3D)ツール等について、デモ映像を交えて紹介する。社内のCG教育や開発したツール群の無償公開などプロダクションワークに付随した社内外の活動状況についても述べる。
【略歴】2003年成蹊大学大学院工学研究科電気電子工学専攻博士後期課程修了。 博士(工学)。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)研究員を経て、2009年より(株)オー・エル・エム・デジタル、研究開発部門、ソフトウェアエンジニア。映像制作用パイプラインシステム構築をはじめ、映像技術の研究開発に携わる。