情報処理学会 第75回全国大会 会期:2013年3月6日~8日 会場:東北大学 川内キャンパス 情報処理学会 第75回全国大会
できるのか?高大連携情報教育
日時:3月7日(木)9:30-12:00
会場:第3イベント会場 (B棟 2F B200)
【セッション概要】学習指導要領が改訂され、中学校では2012年4月から、高等学校では2013年度入学生から、新しい教育が全面的に実施される。これに伴い、大学では2016年度から、新しい指導要領で情報教育を受けた学生達を受け入れることになる。その際に最も影響を受けるのは、専門教育ではなく一般情報教育といえる。その影響を、我々は「2016年問題」と称し検討を始めている。情報処理教育委員会には一般情報教育委員会(sigge)と初等中等教育委員会(sigps)があり、それぞれ別々に調査活動を続けている。そこで、今回は共通となるテーマとして「2016年問題」を掲げ、初中等教育から見た問題意識および高等教育から見た問題意識についてそれぞれ取り上げるとともに、両委員会メンバーによる合同討論の場を設ける。その上で、高大連携を目指す情報教育の可能性について明らかにしたい。
司会:喜多 一 (京都大学 学術情報メディアセンター 教授)
【略歴】1987年京都大学大学院工学研究科電気工学専攻、博士後期課程、研究指導認定退学、京都大学工学部、助手。東京工業大学大学院総合理工学研究科助教授、大学評価・学位授与機構 教授を経て、2003年より京都大学学術情報メディアセンター教授、工学博士、情報処理学会、電気学会、計測自動制御学会、システム制御情報学科などの会員。
9:30-9:50 講演-1 どうなる?「2016年問題」
河村 一樹 (東京国際大学 商学部情報ビジネス学科 教授)
【講演概要】一般情報教育委員会では、前回の学習指導要領改訂のときに「2006年問題」という言葉を始めて使った。その中で、一般情報教育カリキュラムの見直し、プレテストの実施、能力別クラス編成や単位認定の導入、コンピュータリテラシー不要論など多岐に渡る話題について論じてきた。しかし、実際には「2006年問題」は顕著化されないばかりか、高等学校における未履修問題が発覚した。また、本委員会では、最近、大学における一般情報教育の実態調査を部分的に実施した。それらのことを踏まえた上で、今回の「2016年問題」はどうなるかについて論じるとともに、これからの高等学校に望む情報教育について提言したい。
【略歴】宮城大学事業構想学部情報デザイン学科助教授を経て、現在、東京国際大学商学部情報ビジネス学科教授。1955年東京生まれ。立教大学理学部卒、日本大学大学院理工学研究科電子工学専攻博士前期課程修了、博士(工学)。情報教育工学の研究・教育に従事。情報処理学会情報処理教育委員会一般情報教育委員会委員長および初等中等教育委員会委員、モバイルラーニングコンソシアム(mLC)理事を歴任。
 
9:50-10:10 講演-2 初等中等情報教育はどう変わる? どう変わって欲しい?
久野 靖 (筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授)
【講演概要】初等中等教育委員会は、高等学校における情報科の新設を契機に発足し、以来その動向には大きな関心をもって見守って来た。とくに最近では、高校より前の小中学校の情報教育の動向にも注意を払うようになっており、そして高校に引き続く大学入学後の情報教育との連携が重要であることも強く意識してきている。情報科そのものは、これから実施される新指導要領において、問題解決、情報システムなど、これまでとはかなり違う側面が全面に出て来ている。また、コンピュータの原理やアルゴリズム・プログラミングの内容も指導要領的には一定の市民権を得てきている。これが現実の教育、そしてそこを経て社会に出て行く生徒たちにどのような効果をもたらすか、それをよい方向に進めて行くには大学教育とどのように連携していくべきかについて、考えてみたい。
【略歴】1984年東京工業大学理工学研究科情報科学専攻博士後期課程単位取得退学。同年、同大学理学部情報科学科助手。1989年筑波大学講師。同大学助教授を経て、現在、筑波大学ビジネス科学研究科教授。理学博士(1986年 東京工業大学)。プログラミング言語、ユーザインタフェース、情報教育に興味を持つ。著書に「UNIXの環境設定」「入門JavaScript」「Rubyによる情報科学入門」「Javaによるプログラミング入門」などがある。
 
10:10-10:30 講演-3 大学の一般情報教育と高大連携
萩谷 昌己 (東京大学 大学院情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 教授 )
【講演概要】日本学術会議の情報科学技術教育分科会では、情報システムが社会基盤として個人や社会の生活や意志決定に大きく関わっていることに鑑み、高校までに情報システムの基礎・仕組みを理解することを情報教育の主軸とし、大学の一般情報教育では、情報システムを構想する力・デザインする力を、学士力の一つとして養うことを理想にすべきとの議論を進めている。さらに、そのような一般情報教育を受けた学生が初等中等教育を担うようになれば、情報教育の輪が回ることになる。そこで、大学の一般情報教育を高校や中学の教員に提供することが、高大連携として(生徒に直接アクセスするより)実りが大きいと考え、実際に東大では都高情研および情報処理学会に協力して、夏休みにそのような機会を設けることを計画している。本講演ではその試みについても報告したい。
【略歴】1982年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了。京都大学数理解析研究所を経て、現在、東京大学大学院情報理工学系研究科教授(コンピュータ科学専攻)。計算システムをモデル化し、その性質を計算機上で検証することに興味を持っている。電子計算機からなる計算システム以外にも、生物系や分子系も研究の対象としている。特に、分子コンピューティングの世界的なパイオニアとして、現在、分子ロボティクスのプロジェクト(新学術領域)を遂行中。その一方で、大学入試における情報科の問題を契機として、情報教育に深く関わり、現在では、日本学術会議情報学委員会にて情報科学技術教育分科会を主宰。
 
10:40-12:00 パネル討論
【討論概要】講演(1)(2)を踏まえ、両委員会から2名ずつのパネリストによる、高大連携における情報教育について議論し合う。大学側からは、「2016年問題」を想定した上で、高等学校における情報教育への期待・要望・課題について提言する。高等学校側からは、新しい指導要領による情報教育のあるべき姿や受け入れ先である大学の情報教育への期待について提言する。
司会: 喜多 一 (京都大学 学術情報メディアセンター 教授)
【略歴】1987年京都大学大学院工学研究科電気工学専攻、博士後期課程、研究指導認定退学、京都大学工学部、助手。東京工業大学大学院総合理工学研究科助教授、大学評価・学位授与機構 教授を経て、2003年より京都大学学術情報メディアセンター教授,、工学博士、情報処理学会、電気学会、計測自動制御学会、システム制御情報学科などの会員。
パネリスト:岡部 成玄 (北海道大学 情報基盤センター 特任教授)
【略歴】1978年北海道大学理学研究科博士課程修了(理博)。現在、北海道大学情報基盤センター特任教授。著書「情報学入門―大学で学ぶ情報科学・情報活用・情報社会(コロナ社)」ほか。教育システム情報学会、情報処理学会、日本教育工学会、日本情報科教育学会各会員。
パネリスト:和田 勉 (長野大学 企業情報学部 教授)
【略歴】1978年早稲田大学理工学部電気工学科卒業。1982年理学修士。1983年筑波大学大学院数学研究科単位取得満期退学。
1983年東京大学生産技術研究所技官。1984年長野大学産業社会学部産業社会学科専任講師。同産業情報学科、助教授、教授を経て、現在同大学企業情報学部企業情報学科教授。2006年4月~9月、大韓民国高麗大学師範学部コンピュータ教育学科招聘教授。
パネリスト:久野 靖 (筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授)
【略歴】1984年東京工業大学理工学研究科情報科学専攻博士後期課程単位取得退学。同年、同大学理学部情報科学科助手。1989年筑波大学講師。同大学助教授を経て、現在、筑波大学ビジネス科学研究科教授。理学博士(1986年 東京工業大学)。プログラミング言語、ユーザインタフェース、情報教育に興味を持つ。著書に「UNIXの環境設定」「入門JavaScript」「Rubyによる情報科学入門」「Javaによるプログラミング入門」などがある。
パネリスト:中西 渉 (名古屋高等学校 教諭)
【略歴】1989年名古屋大学理学部数学科卒業。同年より名古屋高等学校数学科(のちに情報科)教諭。授業のかたわら,同校の成績処理システムの開発やネットワーク管理を手がける。情報処理学会CE研運営委員,、初等中等教育委員。