情報処理学会 第75回全国大会 会期:2013年3月6日~8日 会場:東北大学 川内キャンパス 情報処理学会 第75回全国大会
人間調和型情報社会構築に向けた人間行動理解の技術 ~視覚的顕著性評価関連技術を中心に~
日時:3月8日(金)14:15-16:35
会場:第2イベント会場 (A棟 2F A200)
【セッション概要】Crest「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」研究領域では、「文字・文書メディアの新しい利用基盤技術の開発とそれに基づく人間調和型情報環境の構築」「歩容意図行動モデルに基づいた人物行動解析と心を写す情報環境の構築」「日常生活空間における人の注視の推定と誘導による情報支援基盤の実現」「行動モデルに基づく過信の抑止」などの研究課題において人間の行動や情報処理の理解に基づく技術の開発を目指しています。人間に調和した情報環境を構築するためには人間を理解することが不可欠ですが、人間についての研究が情報工学的応用への直結させることは簡単ではありません。本シンポジウムでは、Crestの当該研究領域の中で、視覚的顕著性評価関連技術を扱うグループの成果を集め議論します。
司会:大町 真一郎 (東北大学 工学研究科 教授)
【略歴】1988年東北大学工学部情報工学科卒業。1993年同大大学院博士後期課程修了。同年同大助手。助教授、准教授を経て2009年同大教授。博士(工学)。2000~2001年米国ブラウン大学客員准教授。パターン認識、画像処理等の研究に従事。2007年MIRU長尾賞及びIAPR/ICDAR Best Paper Award、2010年ICFHR Best Paper Award、2012年電子情報通信学会論文賞各受賞。
14:15-14:50 講演-1 注意予測への頭部方向の利用 —歩容意図理解に向けて—
塩入 諭 (東北大学 電気通信研究所 教授)
【講演概要】監視カメラなどから意図を推定するために、歩容時の外観から注意状態を推定する技術が必要である。そのために要素技術として、注意の基本特性の理解とともに頭部運動から視線方向を予測することが必要である。人の視野は180度以上あるが、後方を見ることはできず、また移動に伴い頭部移動と視線移動が共存することが多いことから、頭部運動による視線方向の予測できる可能性がある。本講演では、頭部運動が生じる広範囲の情報収集が課せられた条件では、頭部運動から視線方向の分布を推定することができ、画像情報の持つ誘目性情報とあわせることで有効な注視点予測ができることを示す。また、行為者の意図予測への利用についても議論する。
【略歴】1981年東京工業大学機械物理工学科卒業。1983年東京工業大学総合理工学研究科修士課程修了。1986年東京工業大学総合理工学研究科博士後期課程修了(工学博士号取得)。1986年モントリオール大学博士研究員。1989年ATR視聴覚機構研究所研究員。1990年千葉大学工学部助手、1995年千葉大学工学部助教授、2004年千葉大学工学部教授、2005年東北大学電気通信研究所教授。専門は視覚科学、視覚工学。
 
14:50-15:25 講演-2 自己運動および視野特性を考慮した視覚的顕著性モデル
佐藤 洋一 (東京大学 生産技術研究所 教授)
【講演概要】与えられた画像や映像に対して、人がどこを注視しやすいかを定量的に予測する計算モデルとして、さまざまな視覚的顕著性モデルが提案されてきた。しかしながら、既存のモデルでは、自己運動や中心視と周辺視における視野特性の違いが視覚的顕著性に与える影響が考慮されていなかった。本講演では、頭部に装着されたカメラで撮影された一人称映像を対象に、映像から計算されるカメラ運動にもとに注視位置予測精度を向上させる試みについて紹介する。さらに、視野内の位置に応じて各特徴の重みを調整することにより視野特性の不均一性を考慮した視覚的顕著性モデルを考え、既存の視覚的顕著性モデルよりも高い精度での注視位置予測が可能となるということについて紹介する。
【略歴】1990年東京大学工学部機械工学科卒業。1997年カーネギーメロン大計算機科学部ロボティクス学科博士課程了。Ph.D in Robotics。東京大学生産技術研究所研究機関研究員、講師、助教授、同大学大学院情報学環准教授を経て、2010年より同大学生産技術研究所教授。専門はコンピュータビジョン。
 
15:25-16:00 講演-3 文字の誘目性について
内田 誠一 (九州大学 システム情報科学研究院 教授)
【講演概要】環境中の文字を検出し、認識することは、携帯型カメラの普及や画像データの大量蓄積を受け、重要なニーズとなっている。しかしそれは画像認識分野の難問の一つでもある。ところで、環境中の文字は、見つけられて読まれてこそ意味がある。背景に埋もれてしまうようでは、情報の表出メディアとしての価値はない。従って、文字は生まれながらにして、その形状に、もしくはその色に、何かしらの誘目性を持っているはずであり、それに注目すれば文字を検出する手掛かりになりそうである。本講演では、文字の誘目性をどのように計算し利用すべきかについて論ずる。
【略歴】1992年九州大学修士課程修了。セコム(株)IS研究所勤務を経て、2007より同大教授、現在に至る。2003年PRMU研究奨励賞、2006年MIRU長尾賞、2007年ICDAR(文書文字認識に関する国際会議) Best Paper Award、2009年電子情報通信学会論文賞、2010年ICFHR(手書き認識に関する国際会議) Best Paper Award、 2011年MIRU優秀論文賞、各受賞。
 
16:00-16:35 講演-4 運転支援のための視認性と視行動の計算モデル
武田 一哉 (名古屋大学 情報科学研究科 教授)
【講演概要】ドライバの特性や状態に応じて適切なドライバ支援を行うための、視認性と視行動の計算モデルについて紹介する。前半では、前方映像の視認性を評価することで、ドライバが見落としやすい歩行者や交通信号を警告することを目指し、画像の局所的特徴と大局的特徴を適切に組み合わせて視認性を推定する方法を議論する。後半では、ドライバの視行動に着目して、周囲状況に対する注意が散漫な状態を検出することを目指し、周囲車両情報、顔向き情報、運転操作情報の3つの時系列信号を統合した信号モデルに基づき、運転行動を分類する方法を議論する。
【略歴】1985年名古屋大学工学研究科博士(前期)課程修了。同年国際電信電話(株)入社。1986年(株)ATR自動翻訳電話研究所出向。1988年~89年マサチューセッツ工科大滞在研究員。1990年国際電信電話(株)復職。1995年名古屋大学工学部助教授。2003年同情報科学研究科教授。