情報処理学会 第75回全国大会 会期:2013年3月6日~8日 会場:東北大学 川内キャンパス 情報処理学会 第75回全国大会
災害に強い情報通信ネットワークの実現に向けて
日時:3月8日(金)9:30-12:00
会場:第2イベント会場 (A棟 2F A200)
【セッション概要】東日本大震災の経験から、被災地にある組織として、現場のニーズを吸い上げ、「災害に強い情報通信ネットワーク」を実現するために、2011年10月に東北大学電気通信機構を設置しました。創造的復興を目的に推進中の研究プロジェクトについて成果報告し、今後の耐災害ICT技術の発展について討論します。
司会:奥 英之 (東北大学 電気通信研究所 特任教授)
【略歴】1983年東京大学工学部電気工学科卒業。同年郵政省入省。1988年スタンフォード大学大学院エンジニアリングシステム学科修了。総務省で、国際協力課長、移動通信課長、放送技術課長、技術政策課長、信越総合通信局長などを歴任。2011年9月東北大学電気通信研究所特任教授。電気通信機構副機構長(兼任)として、災害に強い情報通信ネットワークの研究開発などの推進の業務に従事。
9:30-9:40 講演-1 電気通信研究機構からのメッセージ
中沢 正隆(東北大学 電気通信研究所 教授)
【講演概要】2012年度補正予算を元に技術開発が進められている耐災害ICTの研究開発についてどのような取組が行われているかその全体像を説明する。さらにそれらを取りまとめている電気通信研究機構についてその活動状況を報告する。
【略歴】1980年東工大大学院博士課程修了(工博)。日本電信電話公社電気通信研究所、2001年東北大学電気通信研究所、2010年電気通信研究所長。専門は光通信。
 
9:40-10:05 講演-2 大規模災害時における通信ネットワークに適用可能なリソースユニット構築・再構成技術の研究開発
加藤 寧 (東北大学 大学院情報科学研究科 教授)
【講演概要】大規模災害時に被災地で生じる通信機能や情報処理・蓄積機能の大幅な低下に対応するため、短時間に被災地へ投入でき、柔軟かつ簡易に規模や構成の変更が可能な情報通信基盤(「リソースユニット」と称する)の研究開発について紹介する。具体的には、リソースユニットの最適構築技術、リソースユニットを周辺機器等と接続するインターコネクション技術、および迅速な情報通信機能回復を可能とする再構成技術の研究開発など、リソースユニットを用いた輻輳に強い情報通信ネットワーク実現に向けた基本技術の確立に向けた取り組みを紹介する。
【略歴】1991年東北大学大学院博士課程修了(工学博士)。2003年同教授。情報通信ネットワークの研究に従事し、IEEEを中心に300編以上の査読付き論文を発表し、IEEE GLOBECOM等で最優秀論文賞を3回、2012年には電子情報通信学会通信ソサイエティ論文賞を受賞。IEEE衛星・宇宙通信技術委員会委員長、IEEEアドホック&センサーネットワーク技術委員会副委員長、電子情報通信学会衛星通信研究会専門委員会委員長、英文・和文論文誌B編集委員、IEEE Journal/Transaction等の編集委員を歴任。2012年KDDI財団優秀研究賞、2008年電気通信普及財団テレコムシステム技術賞、2007年船井情報科学振興賞、2005年IEEE衛星通信貢献賞、2003年石田實記念財団研究奨励賞などを受賞。総務省情報通信審議会専門委員、ITU SG4・SG7主査などを歴任。電子情報通信学会フェロー。
 
10:05-10:30 講演-3 大規模災害時においても通信を確保する災害ネットワーク管理制御技術の研究開発
廣岡 俊彦 (東北大学 電気通信研究所 准教授)
【講演概要】大規模災害時でも接続を必ず維持できる堅牢なネットワークを構築するためには、トラフィックの急増や回線障害、中継器の電源喪失状況に応じて、チャネル数や変調方式を柔軟に切替可能な光伝送技術の実現が重要となる。しかしながら、現状の光通信システムは固定のビットレートならびに変調多値度での動作を前提として設計されており、ネットワーク環境に応じた伝送方式の動的制御は困難である。本講演では、ネットワークの障害や回線品質に応じて変調多値度の切替が瞬時に可能な適応的容量増減技術を中心に、災害時を想定した有限ネットワーク資源の適応的活用技術を紹介する。
【略歴】2000年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了。コロラド大学応用数学科博士研究員、東北大学電気通信研究所助手を経て、現在同准教授。超高速光通信の研究に従事。
 
10:30-10:55 講演-4 災害に強いネットワークノードを実現するための技術の研究開発
本間 尚文 (東北大学 大学院情報科学研究科 准教授)
【講演概要】本講演では、災害に強い地域ネットワークノード(LNN)を実現するための技術に関する研究開発について述べる。ここでは、災害時に広域ネットワークへの接続が一時的に滞る可能性を考慮し、緊急情報を一時的に処理・保存する機能について考える。緊急な情報には、周辺の映像・音声情報に加えて、被災者の安否情報や医療情報、直近の金融取引など取扱いに注意を要する情報が含まれるものとする。それらを踏まえて開発した緊急情報を収集・処理するための機構やインタフェースについて概説するとともに、低消費電力で効率的にデータを保護するために開発したプロトタイプLSIについて紹介する。
【略歴】1997年東北大学工学部情報工学科卒業。2001年同大学大学院情報科学研究科博士課程修了。同年同大学院情報科学研究科助手。2007年同大学院情報科学研究科助教、現在に至る。専門、ハードウェアアルゴリズム、VLSI設計技術, ハードウェアセキュリティ。
 
10:55-11:20 講演-5 災害情報を迅速に伝達するための放送・通信連携基盤技術の研究開発
木下 哲男 (東北大学 電気通信研究所 教授)
【講演概要】災害時の発生時やその後の情報伝達において、即時性や広域性に優れた放送の果たす役割は大きい。一方、東日本大震災では、携帯電話やインターネットが使える通信環境があれば、ネットワークを介した情報伝達も大きな効果を発揮することが実証された。そこで、放送と通信の双方の機能の効果的な連携を図ることにより、利用者に即した迅速な情報伝達の実現を目指すプロジェクトが推進されてきた。本講演では、同プロジェクトのサブテーマのひとつに焦点をあてて、放送用コンテンツとネットワーク上のコンテンツの内容に基づいて両者を系統的に連携・統合し、個々の利用者向きの情報提供を支援する技術に関する研究の一端を紹介する。
【略歴】1979年東北大学大学院工学研究科修士課程修了。同年沖電気工業(株)入社。知識情報処理技術の研究開発に従事。1996年東北大学電気通信研究所助教授、2001年同大情報シナジーセンター教授。現在、同大電気通信研究所教授。知識工学、エージェント工学、知識応用システム等の研究開発に従事。情報処理学会1989年研究賞及び1996年度論文賞、電子情報通信学会2001年度業績賞など受賞。工博。電子情報通信学会、人工知能学会、IEEE、ACM、AAAI各会員。情報処理学会フェロー。
 
11:20-11:45 講演-6 多様な通信・放送手段を連携させた多層的な災害情報伝達システムの研究開発
鈴木 陽一 (東北大学 電気通信研究所 教授)
【講演概要】東日本大震災は大災害時に災害情報を市民に的確に伝える手段の不備をあらわにした。防災行政無線についても多くの住人から、音声が聞こえなかった、聞き取れなかったとする意見が寄せられた。前者の原因には装置の倒壊や停電、後者にはシステム自体の問題があり、災害情報の的確な伝達には手段(メディア)の多様化と、音や文字など最終的に情報を伝達する手段の適切な設計が必要である。その実現のため、様々な通信・放送手段を連携させいずれかの手段により確実に災害情報の伝達を行うことを目指したプロジェクトが進められている。本講演では、その概要と、特にその中で講演者が取り組んでいる屋外拡声系の高度化に関する研究内容を紹介する。
【略歴】1981年東北大学大学院工学研究科博士課程修了(工博)。同大学電気通信研究所助手、同大学大型計算機センター助教授、電気通信研究所助教授を経て、1999年から同教授。3次元音空間知覚と3次元聴覚ディスプレイ、マルチモーダル知覚などの研究に従事。1992、94年日本音響学会佐藤論文賞、FIT2005船井ベストペーパ賞等受賞。2005~07年日本音響学会会長。電子情報通信学会・日本VR学会・米国音響学会フェロー。著書に初めて学ぶGKS(共立出版)、音響学入門(コロナ社)など。