情報処理学会 第75回全国大会 会期:2013年3月6日~8日 会場:東北大学 川内キャンパス 情報処理学会 第75回全国大会
ライフラインを支えるICT基盤の高度化に向けて

日時:3月7日(木)9:30-12:00
会場:第1イベント会場 (マルチメディア教育研究棟 2F M206)

【セッション概要】東日本大震災を契機として、災害時における人々の活動を効果的に支援するICT基盤の確立が喫緊の課題となっている。本セッションでは、ネットワーク(第一部)と情報伝達(第二部)という二つの視点から、ライフラインを支える新しいICT基盤の高度化に向けた最新の研究開発の一端を紹介する。

総合司会:木下 哲男 (東北大学 電気通信研究所 教授)
【略歴】1979年東北大・大学院・修士課程修了。同年沖電気工業(株)入社。1996年東北大・電気通信研究所助教授、2001年同大情報シナジーセンター教授。現在、同大電気通信研究所教授。工博。情報処理学会1989年度研究賞及び1996年度論文賞、電子情報通信学会2001年度業績賞など受賞。情報処理学会正会員(フェロー)、電子情報通信学会、人工知能学会、IEEE、ACM、AAAI各会員。
9:30-10:50 【第1部】 耐災害性に優れるレジリエントネットワーク研究最前線
【第1部概要】先の東日本大震災では、情報通信ネットワークが広い地域で壊滅的な被害を受けるとともに、情報通信に対する需要が爆発的に発生したために、東日本の広い範囲にわたり情報通信機能が一時マヒ状態に陥った。このような事態を受け、情報通信ネットワークには、災害時にこそ重要な社会インフラとして、高い耐災害性(レジリエント性)を具備することが強く求められるようになった。こうした社会の要請を受け、耐災害性に優れるレジリエントネットワークに関する研究開発が活発化している。本特別セッションでは、総務省主導で進めているネットワーク機能、情報処理機能などを具備したコンテナ(リソースユニット)を用いたレジリエントネットワークの研究開発を紹介する。総務省プロジェクトに参画している主要研究者から研究開発内容と状況について紹介、報告する。
第1部司会:坂野 寿和 (NTT未来ねっと研究所 主幹研究員)
【略歴】1985年東北大・工・通信卒。1987年同大学院博士前期課程了。同年日本電信電話(株)入社。以来、光信号処理技術、超高精細画像通信方式、大容量光伝送方式、耐災害ICT方式の研究開発・実用化に従事。現在、同社未来ねっと研究所主幹研究員。工博。1994年度学術奨励賞。電子情報通信学会、IEEE、OSA各会員。
 
9:30-9:50 講演1-1 ICT基盤の耐災害性強化に向けたリソースユニットの研究開発
小田部 悟士 (NTT未来ねっと研究所 主任研究員)
【講演概要】総務省委託研究「大規模災害時における通信ネットワークに適用可能なリソースユニット構築・再構成技術の研究開発」の全体概要と、無線技術、プロセス制御技術など主な研究成果の発表。リソースユニットの移動性、拡張性を高めるための関連研究についても言及する。
【略歴】1993年茨城大・工・電気電子卒。1995年同大学院修士課程了。同年日本電信電話(株)入社。以来、高速通信プロトコル、広域センサーネットワーク、耐災害ICT方式の研究開発・実用化に従事。現在、同社未来ねっと研究所主任研究員。電子情報通信学会、IEEE、各会員。
 
9:50-10:10 講演1-2 レジリエントICTに向けたストレージデータの階層的蓄積伝送技術
仲地 孝之 (NTT未来ねっと研究所 主任研究員)
【講演概要】リソースユニットの電力供給状態に応じたシステム稼働と、リソースユニットまでのネットワークの利用可能伝送帯域に応じたコンテンツ分割とその伝送を制御することにより、必要な情報を確実に流通させるためのデータ転送制御技術に関する研究開発について報告する。
【略歴】1997年慶應義塾大学大学院後期博士課程了(工博)。同年日本電信電話(株)入社。2006-2007年スタンフォード大学客員研究員。主に超高精細画像を対象とした映像符号化、メディア処理の研究に従事。近年は、超高速誤り訂正符号の研究に従事する一方、ISO/IEC MPEGの標準化に携わる。現在、未来ねっと研究所主任研究員。第26回電気通信普及財団賞(テレコムシステム技術賞)、信号処理学会論文賞(2012年3月)受賞。電子情報通信学会、IEEE会員。
 
10:10-10:30 講演1-3 リソースユニットネットワーク再構成技術
栗原 茂樹 (富士通株式会社 ネットワークインテグレーション事業本部 シニアマネージャー)
【講演概要】リソースユニットの多様な利用を可能とするため、サービス、利用者などによってネットワークを柔軟に再構成するゲートウエイ機能について、概念、試作評価結果などを報告する。
【略歴】1989年佐賀大・理工・電子卒。1991年同大学院修士課程了。同年富士通(株)入社。以来、通信機器および通信システムの企画・開発・保守に従事。現在同社ネットワークインテグレーション事業本部NTTビジネス事業部コアネットワーク部長。工修。
 
10:30-10:50 講演1-4 知識処理を用いたリソースユニット遠隔監視制御支援技術
北形 元 (東北大学 電気通信研究所 准教授)
【講演概要】本稿では、ネットワーク機器やサーバ機器を情報資源とみなし、その運用に係わる管理者のノウハウを機器自身に知識として組み込むことで、機器を能動的に動作可能な情報資源(Active Information Resource: AIR)とするリソースユニット管理運用支援技術を提案する。これにより、機器の監視・計測、および障害発生時の原因推定・診断作業の一部を機器自身が自律的に実行可能とし、限られた人的リソースでのリソースユニットの管理を実現可能とする。
【略歴】2002年東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了。現在、東北大学電気通信研究所准教授。博士(情報科学)。エージェント指向コンピューティング、やわらかい情報システム、ネットワーク管理の研究に従事。2001年度学術奨励賞。電子情報通信学会、情報処理学会各会員。
 
10:55-12:00 【第2部】 耐災害に優れた放送通信連携基盤技術
【第2部概要】東日本大震災では、 被災地において①居住地近辺の被害状況、②個別の安否、③避難所の場所、④ライフラインの情報提供が求められた。そのような中で、電気があった地域ではテレビが、停電が起きた地域ではラジオが多くの人に視聴されたが、発生直後は、ほとんどの人がインターネットを利用できなった、との報告がある。その後、インターネットが利用できるようになると、被災地からは正確な情報が発信され、きめ細かな安否確認が可能となった。災害時におけるメディアの課題のひとつとして、正確な情報を迅速に簡単に提供できることが求められる。そのために、同報性、広域性、信頼性に優れた放送ときめ細かな情報を提供できるネットワークとが連携した新たな技術基盤を構築することが急務である。そのような技術開発を進めるための議論を行う。
第2部司会:金次 保明 (NHKエンジニアリングサービス 先端開発研究部 部長)
【略歴】1980年、関西大学大学院修士課程修了。同年、NHKに入局。大分放送局を経て、1983年よりNHK 放送技術研究所に勤務、2011年までNHK放送技術研究所に勤務。その間に、ATR 人間情報通信研究所に出向。NHKを退職後現職。その間、ディジタル映像処理、放送方式、視覚情報処理の研究に従事。
 
10:55-11:20 講演2-1 放送通信連携基盤Hybridcast®をベースとした災害情報提供システムの試作と評価
松村 欣司 (日本放送協会 放送技術研究所次世代プラットフォーム研究部 主任研究員)
【講演概要】本講演では、災害時に情報を迅速かつ的確に伝達するための情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発において、放送通信連携システム基盤の研究開発技術の確立と耐災害への適用に向けた課題について述べる。まず、研究開発プロジェクト全体について概観し、耐災害時の情報提供における性強化に向けた課題とシステム構築を構成するために必要とな要素技術を整理する。そして、そして、放送通信連携基盤システムHybridcastを紹介し、災害発生時を想定したシナリオをもとに試作をもとにした災害時向けHybridcastサービスアプリケーションについて述べる。その後、実施したシステム実証実験および評価者によるサービス主観評価実験の結果を分析結果を示し、本基盤システムの有効性について述べる。
【略歴】1996年、東京工業大学大学院修士課程修了。同年、NHKに入局。放送技術局を経て1998年より放送技術研究所に勤務。以来、マルチメディアコンテンツ符号化および次世代放送サービスの研究開発に関わる。現在は放送技術研究所 次世代プラットフォーム研究部に所属。
 
11:20-11:35 講演2-2 情報到達範囲の制御による伝達性の確保
宮崎 淳 (NTTアイティ株式会社 クロスメディア 検索事業部 開発部長)
【講演概要】広域災害時においては、放送コンテンツだけではカバーできない局所的、緊急的な災害情報はインターネットなどの情報通信回線で供給されるケースは少なくない。アクセス集中による輻輳が予想される災害時に、これらの伝送を確保するために緊急性の高い災害関連情報を必要な所に優先的に伝送する制御方式についての取り組みを紹介する。災害地域に応じた柔軟なネットワークの優先制御技術・経路制御技術による優先トラフィックの輻輳遭遇を回避する優先制御技術およびコンテンツ内容から情報関連地域を推定し送信先を制御するフィルタリング技術について解説する。
【略歴】早稲田大学理工学部電気工学科卒業。現職NTTアイティ株式会社にて検索エンジン開発、ソーシャルメディア評判分析システム開発に従事。大規模データを用いたリアルタイムデータ分析に興味をもつ。
 
11:35-11:50 講演2-3 ネット情報の信頼性分析を支援する言語処理技術
乾 健太郎 (東北大学 大学院情報科学研究科 教授)
【講演概要】ソーシャルメディアなど、ネット上を流通する情報の信頼性をどのように担保するかは平時はもちろん、災害時にはとくに重要な問題である。本講演では、個々の情報の真偽を裏付ける情報をネットから探し出し、ユーザに提示することで信頼性の検証を支援する言語情報処理技術について、東北大研究グループの取り組みを報告する。
【略歴】東北大学大学院情報科学研究科教授。専門は自然言語処理。1995年東京工業大学情報理工学研究科博士課程修了。同大学助手、九州工業大学助教授、奈良先端科学技術大学院大学助教授を経て、2010年より現職。人工知能学会論文賞、COLING/ACL Best Asian NLP Paper Award、言語処理学会年次大会最優秀発表賞等受賞。
 
11:50-12:00 質疑応答