情報処理学会 第75回全国大会 会期:2013年3月6日~8日 会場:東北大学 川内キャンパス 情報処理学会 第75回全国大会
安全・安心を守るためのRT(ロボット技術)、ICT(情報通信技術)

日時:3月6日(水)9:30-12:00
会場:第1イベント会場 (マルチメディア教育研究棟 2F M206)

【セッション概要】災害時の情報システムの利用者は、阪神・淡路大震災を契機に一部専門家から一般住民まで拡張され、その後の、IT(情報技術)、ICT(情報通信技術)の急速な進展とともに大きな期待が寄せられてきた。システム構築に関する知見は蓄積され続け、ソーシャルメディアの普及・発展にも支えられて、東日本大震災では大きくクローズアップされるに至った。RT(ロボット技術)については、阪神・淡路大震災を契機にレスキュー活動への応用が提唱され、レスキュー活動を支援するロボットの開発を行ってきた。東日本大震災では、人が入ることができない建物(福島第1原発も含む)にロボットを先行的に入れ、環境を把握したうえで人が作業するという協調作業に効果があることが報告されている。安全で安心な社会を創造する上で欠くことのできない災害対応において、今後さらに高度なシステムの実践導入が期待される。本セッションでは、ICT、RTの持つ可能性について情報技術、ロボット技術、防災の分野から講演者を招き、幅広い視点で討論を行う。

司会: 鳥居 秋彦 (東京工業大学 大学院理工学研究科機械制御システム専攻 助教)
【略歴】2006年 千葉大学自然科学研究科情報科学専攻博士後期課程修了 博士(工学)。2006~2010年 チェコ工科大学プラハ電気工学部サイバネティクス研究科機械認識センター 博士研究員。2010年より、東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻助教、現在に至る。画像からの3D復元、画像検索等の研究に従事。
9:30-10:10 講演-1 東日本大震災被災市街地の時空間モデリング
出口 光一郎 (東北大学 大学院情報科学研究科 教授)
【講演概要】2011年4月より、東日本大震災の被災地である東北沿岸の500㎞に亘る全域の映像記録を開始し、以後、1~2ヶ月ごとに継続している。計測車による網羅的な走行により2mごとに1シーンづつの全天周画像にて、被災と復旧、復興の様子をを記録している。こうして得た時空間画像列からの市街地の時空間モデリングを行っている。その概要を報告する。この活動は、我々の取得した膨大な記録映像からコンピュータビジョンの手法により、街や人々の生活が災害でどのように変わり、どのように再建してきたか、何が失われたかなどを形として可視化しようとするもので、被災地の時空間変化の記録という意味だけだけでなく、防災、街づくりや災害の社会学的な研究への応用に供することを目指している。
【略歴】1974年に東京大学大学院工学系研究科修了の後、東京大学、山形大学、再び東京大学を経て、1998年に東北大学大学院情報科学研究科教授となり、現在に至る。画像計測、ロボットビジョン、コンピュータビジョンの研究に従事、主にシステム科学に関連する40学会の連合体である横断型基幹科学技術研究団体連合の会長を務めている。
 
10:10-10:50 講演-2 ITとロボット技術を基盤とした国際救助隊サンダーバード構想 −阪神淡路・東日本大震災の経験から−
松野 文俊 (京都大学 工学研究科 教授)
【講演概要】日本におけるレスキュー工学は、阪神淡路大震災を契機として萌芽し、大都市直下型の地震やNBCテロ災害などを想定して、多くの研究成果が発表されている。しかし、今回の東日本大震災は地震動による直接的な災害だけでなく、それに起因する津波、原子力発電所の事故が複雑に折り重なった複合災害であり、新たに多くの課題が突きつけられた。阪神淡路・東日本大震災による尊い多くの命やかけがえの無いものを失った経験をどのように受け止め、次の世代にどのようにつなげていくかを真剣に考える必要がある。レスキュー工学は災害の被害を軽減化し、災害から人を護り人を助けるといった明確な目的を持った、「目的達成型」の研究分野である。この目的を達成するためには、様々な分野の最先端技術をインテグレートし、システムを構築しなければならない。さらに、工学に留まらず、医学やメンタルケアを行う心理学、社会学や政治学や経済学などあらゆる分野との連携が実現して、はじめて「レスキュー」が完了すると考えている。本講演では、東日本大震災でのロボットを用いた災害対応活動について報告し、国際救助隊サンダーバードを実現するための今後の方向性や課題を紹介する。
【略歴】1986年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了。大阪大学、神戸大学、東京工業大学、電気通信大学を経て、2009年より京都大学大学院工学研究科教授(機械理工学専攻)となり、現在に至る。2002年よりNPO国際レスキューシステム研究機構理事・川崎ラボリーダ、2005年より副会長。日本ロボット学会理事・評議員、計測自動制御学会理事・評議員、システム制御情報学会理事・評議員、IEEE Technical Committee on Safety, Security, and Rescue Robots, Co-Chairなどを歴任。主に、ロボティクス・制御工学・レスキュー学に関する研究に従事。1993年度システム制御情報学会論文賞、97年度消防防災科学論文賞(消防庁長官表彰)、2001、2006年度計測自動制御学会論文賞、2001年度計測自動制御学会武田賞、2006年度船井情報科学振興賞、2009年度日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門学術業績賞などを受賞。IEEE、計測自動制御学会、日本ロボット学会、システム制御情報学会、日本機械学会などの会員。工学博士。
 
10:50-11:30 講演-3 防災研究からみたRT,ICTへの期待
畑山 満則 (京都大学 防災研究所社会防災研究部門防災社会システム研究分野 准教授)
【講演概要】東日本大震災では、RT、ICTを用いた様々なシステムが災害対応に導入され多くの成果を挙げている。しかしながら、それらの成果はRT、ICTのほんの一端の技術を利用したものにすぎず、今後はさらに高度なシステムの実践導入が期待される。阪神・淡路大震災、中越地震から東日本大震災での経験を踏まえて防災研究者の視点から考察を行う。
【略歴】京都大学防災研究所社会防災研究部門防災社会システム研究分野 准教授。1996年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻制御工学分野博士前期課程修了。1996年、株式会社日立システムテクノロジー入社。日立中央研究所にて、時空間地理情報システムの開発と防災応用に関する研究・開発に従事。2000年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻にて博士後期課程修了。工学博士取得。2002年京都大学防災研究所総合防災研究部門自然・社会環境防災研究分野 助手を経て、2005年より助教授、現在に至る。地理情報システムをはじめとする情報技術を用いた災害対応システム、レスキュー活動支援システム、災害リスクコミュニケーションシステムの研究開発に取り組んでいる。阪神・淡路大震災、中越地震、東日本大震災などで、主に行政における災害対応業務の情報化支援活動を行っている。
 
11:30-12:00 パネル討論 安全・安心を守るためのRT,ICTの現状とこれから
【討論概要】RT(ロボット技術)、ICT(情報通信技術)の積極的な融合によって、どのように災害救助活動、復興支援活動が推進されるのか、活動を推進するのに今まさに必要なRT、ICT技術は何か、(人材・育成等も含めて)何が不足しているのか。研究と現実問題のギャップをどう埋めるのかについて阪神・淡路大震災、中越地震、東日本大震災の経験をもとに議論し、次に来ると予測されている南海トラフを震源とする巨大地震に備えてどのようなことを進めていくべきかについて考える。
司会: 鳥居 秋彦 (東京工業大学 大学院理工学研究科機械制御システム専攻 助教)
【略歴】2006年 千葉大学自然科学研究科情報科学専攻博士後期課程修了 博士(工学)。2006~2010年 チェコ工科大学プラハ電気工学部サイバネティクス研究科機械認識センター 博士研究員。2010年より、東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻助教、現在に至る。画像からの3D復元、画像検索等の研究に従事。
パネリスト:出口 光一郎 (東北大学 大学院情報科学研究科 教授)
【略歴】1974年に東京大学大学院工学系研究科修了の後、東京大学、山形大学、再び東京大学を経て、1998年に東北大学大学院情報科学研究科教授となり、現在に至る。画像計測、ロボットビジョン、コンピュータビジョンの研究に従事、主にシステム科学に関連する40学会の連合体である横断型基幹科学技術研究団体連合の会長を務めている。
パネリスト:松野 文俊 (京都大学 工学研究科 教授)
【略歴】1986年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了。大阪大学、神戸大学、東京工業大学、電気通信大学を経て、2009年より京都大学大学院工学研究科教授(機械理工学専攻)となり、現在に至る。2002年よりNPO国際レスキューシステム研究機構理事・川崎ラボリーダ、2005年より副会長。日本ロボット学会理事・評議員、計測自動制御学会理事・評議員、システム制御情報学会理事・評議員、IEEE Technical Committee on Safety, Security, and Rescue Robots, Co-Chairなどを歴任。主に、ロボティクス・制御工学・レスキュー学に関する研究に従事。1993年度システム制御情報学会論文賞、97年度消防防災科学論文賞(消防庁長官表彰)、2001、2006年度計測自動制御学会論文賞、2001年度計測自動制御学会武田賞、2006年度船井情報科学振興賞、2009年度日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門学術業績賞などを受賞。IEEE、計測自動制御学会、日本ロボット学会、システム制御情報学会、日本機械学会などの会員。工学博士。
パネリスト:畑山 満則 (京都大学 防災研究所社会防災研究部門防災社会システム研究分野 准教授)
【略歴】京都大学防災研究所社会防災研究部門防災社会システム研究分野 准教授。1996年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻制御工学分野博士前期課程修了。1996年、株式会社日立システムテクノロジー入社。日立中央研究所にて、時空間地理情報システムの開発と防災応用に関する研究・開発に従事。2000年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻にて博士後期課程修了。工学博士取得。2002年京都大学防災研究所総合防災研究部門自然・社会環境防災研究分野 助手を経て、2005年より助教授、現在に至る。地理情報システムをはじめとする情報技術を用いた災害対応システム、レスキュー活動支援システム、災害リスクコミュニケーションシステムの研究開発に取り組んでいる。阪神・淡路大震災、中越地震、東日本大震災などで、主に行政における災害対応業務の情報化支援活動を行っている。