3J-3
論文中の言語情報と科学的不正へ至る心理変化との関係
○池田文人(北大)
1911年にMillikanは電気素量の測定に関する最初の論文をPhysical Reviewに投稿した.この実験結果に関してMillikanとEhrenhaftとの間で論争が生じた.続く1913年の論文でMillikanは測定値の精度を高めるために,精度を下げるデータを除外し,精度を上げる期間外のデータを入れた.これは科学的不正行為につながる.二論文中の言語情報を統計的に比較した結果,前者は曖昧さを切り捨てる断定的表現が多いのに対して,後者は実験精度の正確さを客観的に訴える表現が多いことが分かった.この事実を交流分析に基づいて分析すると,「強くあれ」から「完璧であれ」という心理状態へと変化したと判断できる.今後は心理状態を表す言語情報のデータベースを構築し,論文から科学的不正の可能性を検出するシステムを開発する.

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