フィールドロボット

第1回:フィールドロボットの知能化技術開発と実用化の動向

日時:
2018年6月25日(月) 10:00~16:45
会場:
化学会館7F(本会場) 受付開始:9:30~
大阪大学中之島センター7F 講義室702(遠隔会場) 受付開始:9:30~
東北大学電気通信研究所 本館1階 オープンセミナールーム(遠隔会場) 受付開始:9:30~

陸海空の様々な屋外環境において移動しながら調査、運搬、作業などを行うフィールドロボットの開発と利用が加速している。本セミナーでは、陸海空で開発が進められているフィールドロボットの技術開発と利活用の動向を、それぞれの分野でご活躍されている講師の方にご紹介いただくとともに、その知能化、実用化などの新たな展開、今後の展望などを解説していただく。また、フィールドロボットの最先端の技術開発や最新の競技会の取り組みとして、ImPACT Tough Robotics ChallengeやWRS (World Robot Summit)などについてご紹介いただくとともに、フィールドロボット技術の実用化と社会実装を推進するための様々な取り組みについてご紹介いただく。

オープニング[10:00~10:10]

コーディネータ:淺間 一(東京大学 大学院工学系研究科 教授)

【略歴】1984年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。1986年理化学研究所研究員補。同研究員、副主任研究員等を経て、2002年東京大学人工物工学研究センター教授。2009年同大学院工学系研究科教授。サービスロボティクス、自律分散・空間知能化、移動知・脳内身体表現、サービス工学の研究、災害対応ロボットの社会実装の活動等に従事。日本学術会議会員。日本機械学会フェロー。日本ロボット学会フェロー。工学博士(東京大学)。

セッション1[10:10~11:10]

小型無人航空機ドローンの知能化技術と実用化への課題

小型無人航空機ドローンは空撮等の目的で急速に実用化が進み、今後は、目視外飛行、第三者上空飛行などさらにリスクの飛行への検討が進められている。そのためには、高度な安全性、信頼性を実現する必要があり、知能化技術はそれを達成するための需要な技術と認識されている。ここでは、航空技術における、知的航法誘導制御を中心に、知能化技術の現状と今後の展望を概観し、ドローン実用化への課題とそのロードマップを述べたい。

講師:鈴木 真二(東京大学 大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻 教授)

【略歴】1953年岐阜県生まれ。1979年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。豊田中央研究所を経て、1986年東京大学工学部助教授。1996年より現職。工学博士。日本航空宇宙学会会長(第43期)、日本機械学会副会長(第95期)、国際航空科学連盟ICAS理事、日本UAS産業振興協議会理事長など。

セッション2[11:20~12:20]

海洋ロボットはどこまで賢くなるか?
~海洋産業の現状とロボットの役割~

いま世界の海洋産業フィールドでは、知能化技術の急速な発展とともに、あたらしい海上・海中ロボットがどんどん生まれ、現場に投入されている。非常に大きな市場を有するオイル&ガスでは、海中設備の点検・保守作業のコストダウンのためにつぎつぎと新しい自律ロボットが開発されている。海運市場では自律船のプロトタイプの試験が欧州で開始されて、法律の整備の検討も始まった。温暖化のキーとなる北極・南極の氷の下の調査は人類にとって急務であり、新しい海中ロボットが研究・開発されている。地球に残された最後のフロンティアである深海を含む海洋を開発すべく、低コストの自律ロボットが研究・開発・製作されている一方、日本の海洋産業は商船・造船や漁業・養殖が主であり、海洋ロボットの活躍の場はいまもってすくない。しかし、世界で第6位の広大な海を有する日本が海洋産業を発展させるためには、海上・海中のローコストプラットフォームとしての海洋ロボットが必須であり、開発・生産・運用技術を向上させるとともに、知能化を推進していく必要がある。講演では全体を俯瞰しながら、日本は何をやるべきかを解説する。

講師:吉田 弘(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海洋工学センター 海洋基幹技術研究部 部長)

【略歴】1985年に高専の電気工学科を卒業し無線機メーカに入社。通信自由化の波にのり小型無線機やアンテナの研究開発に従事するものの、突然、物理に興味を持ち退職。金沢大学大学院でプラズマ物理を専攻し、1999年に博士号(理学)取得。しかし、35歳を雇ってくれる研究所はなくソフトウェアハウスに就職。しかし縁あって2002年に海洋科学技術センター(現、国立研究開発法人海洋研究開発機構)入所。入所後はロボット開発に転向し、自律型無人探査機「うらしま」をはじめ、10機あまりの自律ロボットを開発した。現在は海洋技術の基礎研究系ディレクターをつとめる。

セッション3[13:25~14:25]

災害対応およびインフラ構造物維持管理のためのフィールドロボット技術とその実用化

ロボット技術には、災害時に人が立ち入れないところの調査や工事を行うことが期待されている。とくに、重機を遠隔操作により働かせて行う大規模工事(無人化施工)は、最近は熊本地震による崩落現場での緊急対策工事などに適用されている。また、橋梁やトンネル等のインフラ構造物の維持管理にも、作業員の安全確保やコストの削減のためにロボット技術への期待が大きく、最近、技術開発や実利用の試みが活発化している。これらの場面でロボットに期待される仕事は、写真の撮影など簡単な作業である。しかし、ロボットが対処すべき環境が多種多様で複雑であることが、この種の実環境で働くロボットの実現を難しくしている。この様な条件で確実に働くロボットの開発には、実際に働くべき現場でのテストや実利用を通した評価やそれに基づくフィードバックが必要不可欠であり、その視点でのアプローチが進められている。本講演では、最近の災害対応ロボットや、インフラ点検のためのロボット技術の開発・利活用の動向や新たな展開、今後の展望などを解説する。

講師:油田 信一(芝浦工業大学 SIT総合研究所 客員教授)

【略歴】慶應義塾大学大学院修了。1978年-2012年筑波大学。2012年より芝浦工業大学特任教授。現在、同客員教授。土木研究所招聘研究員、次世代無人化施工技術研究組合理事長、NEDOインフラ維持プロジェクトPLなどを兼務。専門はロボット工学。主な業績として、研究用自律移動ロボットプラットフォーム「山彦」と自律ナビゲーション技術の開発、ロボットの環境認識のための測域センサの開発(北陽電機との共同研究)、移動ロボットによる市街地の自律ナビゲーションの共同公開実験であるつくばチャレンジ(2007-2017)の提唱と主導、など。国土交通省の建設ロボット懇談会(2012)の座長も務めた。

セッション4[14:35~15:35]

ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジ

内閣府ImPACT-TRCプロジェクトでは、災害空間におけるロボットの有効性を高めるために、タフなロボット技術を開発することを目的として、2014~2018年の計画で62の研究グループが協力しながら研究開発を進めている。3年半の研究期間を経て、救助犬の行動ややる気を遠隔モニタリングするサイバー救助犬、浮上して瓦礫内を捜索できる索状ロボット、ダクトや垂直はしごなどを移動できる索状ロボット、悪天候下でもロバストに飛行できる飛行ロボット、重作業と精密作業の両方を実施できる建設ロボット、重量物を無通電で把持できるロボットハンド、垂直はしごや瓦礫上を移動できる脚ロボット、など、世界初、世界一の成果が数多く得られている。成果は年に2回開催するフィールド評価会で公開デモンストレーションし、技術的・社会的・産業的イノベーションにつなげようとしている。本公演では、プロジェクトの主立った成果を紹介する。

講師:田所 諭(東北大学 大学院情報科学研究科 教授)

【略歴】1984年東京大学工学系大学院修士課程修了。博士(工学)。1993年神戸大学助教授、2002年~国際レスキューシステム研究機構会長、2005年~東北大学教授、2014年副研究科長、2014~2018年ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジプログラムマネージャー、2015年~東北大学リサーチプロフェッサー。2016~2017年IEEE Robotics and Automation Society President。災害ロボティクスの研究に従事。

セッション5[15:45~16:45]

フィールドロボットの研究開発と社会実装~インフラ点検、災害調査、ラストマイル自動走行~

現在、日本は課題先進国とされており、社会インフラの老朽化、地震や火山・水害などの災害対応、超高齢社会おける移動手段の確保などに対する対策が喫緊の課題となっている。しかし、対象数が膨大であることや広域の対応が必要となること、労働力不足や危険を伴う作業であることなどから、ロボット技術や自動運転などの新技術の活用が期待されている。本講演では、社会インフラの点検や災害調査などに対応するフィールドロボットと、交通弱者の移動手段として期待されるラストマイル自動走行などの自動運転の研究開発と、社会実装に向けた事業性や社会受容性の実証評価について紹介する。

講師:加藤 晋(国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 知能システム研究部門 首席研究員 兼)端末交通システム研究ラボ長)

【略歴】明治大学大学院博士後期課程修了、博士(工学)。科学技術特別研究員を経て、1997年通産省工業技術院機械技術研究所に入所。以来、自動運転、インフラ維持管理や災害対応ロボットに関する研究開発に従事。国土交通省次世代社会インフラ用ロボット現場検証委員、自動車技術会ITS部門委員長などを歴任。フィールドロボティクス研究グループ長を経て2018年より現職、また、埼玉大学や東京理科大学の連携教授を兼務。