人工知能(基礎編)

第2回:人工知能の基盤技術

 

日  時:
2017年7月27日(木)
会  場:
【本会場】化学会館7F(東京都千代田区)
【遠隔会場】大阪大学中之島センター7F 講義室702(大阪市北区)
受付時間:
9:30~

近年、世界中の企業・大学・研究所で人工知能に関する研究開発が行われており、その競争はより一層激しくなりつつあります。そのような中、応用分野での競争力を維持向上させていくためには、人工知能技術の基礎数理をしっかりと身につけた人材を育成していくことが不可欠です。そこで本セミナーでは、最先端の人工知能基盤技術の開発を行っている理化学研究所革新知能統合研究センター汎用基盤技術研究グループの研究者が講師となり、人工知能技術の数理的基盤をなす確率統計、連続最適化、離散最適化の基礎をわかりやすく解説するとともに、機械学習と因果推論の基本的な考え方と実用的なアルゴリズムを紹介します。

樋口 知之様 統括コーディネータ:樋口 知之(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 情報・システム研究機構 理事、統計数理研究所長)
【略歴】1989年東京大学理学系研究科博士課程修了後、文部省統計数理研究所に入所。2011年より情報・システム研究機構理事 統計数理研究所長。専門はベイジアンモデリング。最近は、データ同化およびエミュレーション(シミュレーションの機械学習による簡便代替法)の研究に注力している。日本統計学会、応用統計学会、電子情報通信学会、人工知能学会、日本応用数理学会、日本バイオインフォマティクス学会、日本マーケティング・サイエンス学会、International Statistical Institute、American Geophysical Union等の各学会の会員。また、日本学術会議の数理科学及び情報学分野の連携会員でもある。

オープニング[10:00~10:10]

杉山 将様 コーディネータ:杉山 将(理化学研究所 革新知能統合研究センター センター長/東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授)
【略歴】2001年東京工業大学博士課程修了。博士(工学)。同大助手、助教授、准教授を経て、2014年より東京大学教授。2016年より理化学研究所革新知能統合研究センター長を併任。機械学習とデータマイニングの理論研究とアルゴリズムの開発、および、その信号処理、画像処理、ロボット制御などへの応用研究に従事。

セッション1[10:10~11:10]

機械学習を理解するための確率統計入門

機械学習とは(大量の)データから情報・知識を発見するための技術であり、近年の計算機性能の向上により大きな発展を遂げています。多くの著名な機械学習アルゴリズムはパッケージが公開されており簡単に動かすことができますが、アルゴリズムがどのような性質を持つかを理解したり、"正しく"動作するかなどを保証するためには確率論や統計的推測の理論が不可欠となります。本セミナーでは、機械学習アルゴリズムの仕組みを理解するために必要となる確率・統計の基礎に焦点を当て、解説を行います。

竹之内 高志様 講師:竹之内 高志(公立はこだて未来大学 複雑系知能学科 准教授)
【略歴】2001年、東京大学工学系研究科 計数工学専攻にて修士課程を修了後、2004年に総合研究大学院大学において博士(学術)を取得。統計数理研究所プロジェクト研究員、奈良先端科学技術大学院大学の助教を経て、2012年より、はこだて未来大学の准教授として勤務。2016年10月より理化学研究所 革新知能統合研究センター(AIP)幾何学的学習チームのチームリーダーを兼務。機械学習のアルゴリズム開発と理論研究に従事。

セッション2[11:20~12:20]

実問題のアルゴリズム設計に役立つ非線形最適化入門

非線形最適化とは、必ずしも線形とは限らない実数値関数を適当な制約条件下で最小化もしくは最大化するための方法論のことであり、最適解が満たすべき必要条件の導出など種々の数学的諸性質の解明や、計算機の高速化に伴って実際に最適解を求めるためのアルゴリズムの進化は目まぐるしい。とくに今日において、機械学習などデータ分析の分野において非線形最適化は欠かすことができない基盤技術の一つとなってきている。本講演では、そうした非線形最適化への入門としてKarush-Kuhn-Tucker条件など知っておくべき基本的性質から逐次2次計画法といった基本的最適化問題を解くための基本的手法を紹介する。また実際に問題を解くアルゴリズムを設計する上でのポイントを概説したい。

奥野 貴之様 講師:奥野 貴之(東京理科大学 工学部情報工学科 助教)
【略歴】京都大学理学部卒業(2008年)、京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻博士後期課程修了(2013年)。博士(情報学)。現在、東京理科大学工学部情報工学科助教。専門:非線形最適化(とくに半無限計画法と錐計画法について)

セッション3[13:25~14:25]

組合せ爆発を回避するための離散最適化入門

人間が行う多くの意思決定は「いくつかの選択肢の中から最適なものたちを選ぶ問題」として定式化できる。このタイプの問題は選択肢の数が少ないうちはすべての可能性を調べることで解けるが、選択肢の数が大きくなると組合せ的に可能性の数が多くなり、高速な計算機を用いたとしても、現実的な時間では解けなくなってしまう。この現象は組合せ爆発と呼ばれている。離散最適化理論は、組合せ爆発を起こす問題について「どのようにすればすべての可能性を調べることなく最適解やそれに準ずる解を見つけ出せるか」を扱う領域であり、人工知能に求められるパフォーマンス・スケーラビリティを達成するための重要な理論的基盤である。本講演では「最大被覆問題」と呼ばれる基本的な離散最適化問題を題材として、計算量・近似アルゴリズムなどの離散最適化の基礎について説明する。

前原 貴憲様 講師:前原 貴憲(理化学研究所 革新知能統合研究センター ユニットリーダー)
【略歴】2012年東京大学情報理工学系研究科で博士(情報理工学)を取得。その後、2012年国立情報学研究所特任研究員、2015年静岡大学工学部助教を経て、2016年理化学研究所革新知能統合センターユニットリーダー(離散最適化ユニット)に着任。

セッション4[14:35~15:35]

ビッグデータ時代の機械学習

Yahoo、グーグル、Facebook、Amazon等のIT企業においては、数千万~数億ユーザーに対して記事推薦、E-mailのスパム検出、商品の推薦、友達推薦等のサービスを提供していることから、超大規模データ(ビッグデータ)を自動的にかつ効率よく解析する必要がある。そのため、IT企業においては、2000年代初頭から盛んに大規模分散処理に基づく機械学習手法が利用されてきた。近年では、IT企業以外の民間企業や大学においても、スマートフォン等のセンサーを搭載したモバイル端末の普及や計測機器の高度化により、膨大な量のデータが利用可能となり、大規模分散処理や大規模データを効率よく扱う機械学習手法が用いられ始めている。そのため、予測精度が高いだけではなくデータに対してスケールする機械学習手法の開発が、より良いサービスを提供することや新しい科学的発見をサポートすることにおいて、非常に重要となっている.本講演では、機械学習技術がIT企業においてどのようにビッグデータに応用されているかを解説し、次いで、理化学研究所で研究開発を進めている超高次元特徴選択や推薦アルゴリズムについて紹介する。

山田 誠様 講師:山田 誠(理化学研究所 革新知能統合研究センター ユニットリーダー)
【略歴】1980年静岡生まれ。情報工学の学士(コンピュータ理工学)、修士(工学)、博士(統計科学)の学位をそれぞれ2003年、2005年、2010年に、会津大学、コロラド州立大学、総合研究大学院大学から取得。2010年より東京工業大学の博士研究員、2012年よりNTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチアソシエイト、2013年より米国Yahoo Labs Research Scientist、2015年より京都大学助教。2017年より理化学研究所革新知能統合研究センターユニットリーダー。ランキング学習アルゴリズムの研究において、2016年ACMWSDM Best Paper Awardを受賞。機械学習とデータマイニングのアルゴリズムの研究開発、および、そのコンピュータビジョン、Webデータマイニング、バイオインフォマティクスなどへの応用研究に従事。

セッション5[15:45~16:45]

因果推論入門-因果構造探索を中心に-

因果関係を調べることは、多くの実質科学の主目的である。本講演では、まず因果推論のフレームワークとして、構造的因果モデルを紹介する。そして、介入を伴わない非実験データから因果構造を探索する方法について概説する。関数形を特定せず、観測変数間の条件つき独立性を探索に利用するノンパラメトリックアプローチや、関数形に仮定をおくものの、非実験データによる因果推論の最大の障害である未観測共通原因の存在を許容するセミパラメトリックアプローチなどの基本的なアイデアについて説明する。従来の因果推論では、変数間の因果構造が既知であるとして、介入した時の効果を推定することに重きが置かれていた。因果構造探索では、そもそも変数間の因果構造を推測することを目的とする。動機や基礎的事項など入門的内容を重視しつつ、発展的な内容にも触れたい。

清水 昌平様 講師:清水 昌平(国立大学法人 滋賀大学 データサイエンス学部 准教授/国立大学法人 大阪大学 産業科学研究所 特任准教授/国立研究開発法人 理化学研究所 革新知能統合研究センター チームリーダー)
【略歴】滋賀大学 データサイエンス学部 准教授。大阪大学 産業科学研究所 特任准教授。理化学研究所 革新知能統合研究センター 汎用基盤技術研究グループ 因果推論チーム チームリーダー。2006年に大阪大学 基礎工学研究科にて博士(工学)を取得。データ生成過程を推定するための統計解析手法の研究開発とそれらの因果推論への応用に従事。2016年に日本行動計量学会 林知己夫賞 (優秀賞)を受賞。