連続セミナー2012「ビッグデータとスマートな社会」全6回シリーズで開催
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第3回「都市をマネジメントするビッグデータの可能性」 開催日:2012年9月25日(火)10:00-17:00
第3回の概要
都市は数多くの人々を空間に集中させて、多様なコミュニケーションや円滑な情報共有を通じて新しい価値や文化を創造する社会的な装置です。多くの人々が集まって活動することを可能にするために交通、エネルギー、水・廃棄物処理、住居・オフィス空間など多数のインフラサービスが機能しています。その一方で災害に対する脆弱性、交通渋滞によるエネルギー効率の低下から犯罪、環境汚染まで、いわゆる都市問題も深刻です。世界人口の過半を集める都市をいかに「スマート」にマネジメントするか?多様で大量のデータ・情報をどう迅速に収集・整理してマネジメントのサイクルを回すのか?そのためにICTはどう貢献すべきか、標準化などの国際戦略はいかにあるべきかを多面的に解説します。
コーディネータ:柴崎 亮介 (東京大学 空間情報科学研究センター 教授)
 【略歴】1980年東京大学工学部卒、同大学院修了(1982年)。建設省土木研究所(1982-1988)、東京大学工学部助教授(1988-1991)、同大学生産技術研究所助教授(1991-1998)を経て、1998年より空間情報科学研究センター教授、2005年から2010年までセンター長。2008年から2010年までGIS学会会長。実世界のデータ収集・計測技術、特に移動体の追跡データとモデルとの統合によるデータ同化技術、それらを利用した情報サービスの開発などの研究・開発に従事。
プログラム
SESSION.1 10:00-10:50
都市のマネジメントとBig data
【講演概要】イントロダクションとして、都市インフラマネジメントのあるべき姿を整理し、ICT、特にビッグデータ処理・管理・分析技術への期待・要請、ICTを利用したスマートなインフラサービスのあり方、パーソナライズされた都市サービスを提供するために必要な個人情報の保護と管理の必要性、スマートな都市管理の国際展開とそれを支える標準化戦略など、セミナー全体の構成にそって解説する。
講師:柴崎 亮介 (東京大学 空間情報科学研究センター 教授)
 【略歴】1980年東京大学工学部卒、同大学院修了(1982年)。建設省土木研究所(1982-1988)、東京大学工学部助教授(1988-1991)、同大学生産技術研究所助教授(1991-1998)を経て、1998年より空間情報科学研究センター教授、2005年から2010年までセンター長。2008年から2010年までGIS学会会長。実世界のデータ収集・計測技術、特に移動体の追跡データとモデルとの統合によるデータ同化技術、それらを利用した情報サービスの開発などの研究・開発に従事。
SESSION.2 10:50-11:40
日本一○○な沿線を目指して!東急電鉄の沿線まちづくりとIT融合戦略
【講演概要】東急電鉄は、東急沿線を中心に、鉄道事業、都市開発事業、リテールその他事業を中核に事業展開する企業です。特に都市開発事業については、鉄道事業と一体となった沿線開発などにより、当社収益の柱となる事業です。他社デベロッパーと異なるのは、単体のビルや住宅を開発、販売、賃貸するだけでなく、いわゆる沿線経営視点をもって、広く沿線全体のマーケティング、ブランディングを行い、中長期的な仕掛け、仕込みをするなど常に沿線の活性化を図りながら、収益をあげていく点にあります。昨今はIT融合の可能性に着目し、渋谷、二子玉川、たまプラーザといった拠点地区などにおいて、いくつかの実証実験や環境整備を図り、沿線価値、不動産価値の向上に努めています。今回は活動事例を示しながら、まちづくりとIT融合の可能性について考えます。
講師:東浦 亮典(東京急行電鉄株式会社 都市開発事業本部企画開発部 統括部長)
 

【略歴】昭和60年 東京急行電鉄入社。平成4年 東急総合研究所出向。平成12年 東京急行電鉄都市開発事業部営業部事業開発課長。平成21年 同企画開発部統括部長。現在に至る。

SESSION.3 11:40-12:30
スマートシティインフラ運用におけるIT基盤の役割とビッグデータ利活用の可能性
【講演概要】スマートシティにおけるインフラ運用を支えるIT基盤について紹介し、インフラ運用を効率化するためのビッグデータ利活用の可能性について示す。スマートシティでは、電力、水、交通などに関わる新旧のインフラを連携させて運用の効率化をはかることにより、生活者にとって快適かつ環境負荷の少ない持続可能な都市の実現を目指している。インフラ連携では、IT基盤が重要な役割を担うことになる。とくにインフラから得られる供給・消費、走行などの運用データや、人の動態データをIT基盤で分析して、インフラ連携に関わる運用方針の策定に活用していくことが期待される。これらのデータは広域かつ長期に渡り取得・蓄積し、傾向分析を行うためビッグデータとして特有の管理や分析手法が必要となる。今回の講演では、インフラ連携におけるIT基盤の役割について示すとともに、ビッグデータ取得・蓄積、分析の課題と解決の方向性について示す。
講師:岩村 一昭(株式会社日立製作所 情報・通信システム社 スマート情報システム統括本部 主任技師)
 【略歴】1983年 株式会社日立製作所入社。2012年現在 株式会社日立製作所 情報・通信システム社 主任技師。東京都市大学、工学院大学 非常勤講師。2009年“Most Influential Paper over Decade Award”受賞(MVA ( Machine Vision Application ) , IAPR ( International Association of Pattern Recognition ) )
お昼休み 12:30-13:30
SESSION.4 13:30-14:20
道路交通管理におけるビッグデータの可能性
【講演概要】道路交通の分野では、近年になって、自動車をはじめとする移動体データが豊富に収集されるようになってきた。しかしながら、利活用の場面では、渋滞情報提供や災害時の通行実績マップのような、いくつかの利用例が示されているものの、未だその可能性を十分に活かしきっていないように見受けられる。講演では、自動車プローブデータの利活用について、当社での研究成果を交えながら、「新しい交通情報のカタチ」を提案したい。
講師:堀口 良太(株式会社アイ・トランスポート・ラボ 代表取締役)
 【略歴】平成2年3月 北海道大学大学院工学系研究科精密工学専攻修士課程修了。平成2年4月 株式会社熊谷組入社。平成8年9月 東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻博士課程修了、学位取得(博士(工学))。平成12年3月 株式会社熊谷組退社。平成12年10月 株式会社アイ・トランスポート・ラボ設立。代表取締役就任。現在に至る。
SESSION.5 14:20-15:10
モバイル空間統計の都市マネジメントへの利用の可能性
【講演概要】株式会社NTTドコモは、携帯電話事業を通じた社会貢献の一環として 「モバイル空間統計」の研究と実用化に取り組んでいます。モバイル 空間統計は、携帯電話ネットワークのしくみを使用して作成される人口の統計情報です。携帯電話ネットワークは、携帯電話がいつでもどこでも電話やメールなどを着信できるように、各基地局のエリア毎に所在する携帯電話を周期的に把握しています。そのため、基地局エリア毎の携帯電話台数をお客様の属性別に数えることによって、人口の地理的分布を推計できます。このモバイル空間統計により、地域毎の人口の分布、性別・年齢層別・居住エリア別の人口の構成などを知ることができます。ドコモの携帯電話ネットワークは、24 時間・365 日、日本を広くカバーして携帯電話サービスを提供し続けていますので、モバイル空間統計は様々な都市マネジメントに活用できる、継続的で、かつ時間分解能の高い人口統計情報となりえます。
講師:荒川 賢一(株式会社NTTドコモ 先進技術研究所 所長)
 【略歴】1984京大・工・情報卒。1986同大大学院工学研究科修士課程了。同年日本電信電話(株)に入社。同基礎研究所、ヒューマンインタフェース研究所、第三部門を経て、2002~2012サイバーコミュニケーション総合研究所勤務、2012NTTドコモに転籍し、現在に至る。その間、1990~1992米国CMU計算機科学科客員研究員。主に画像処理、コンピュータビジョン、空間情報処理に関する研究開発に従事。情報処理学会、電子情報通信学会、IEEE各会員。
休憩 15:10-15:20
SESSION.6 15:20-16:10
津波・地震シミュレーションなど 災害対応におけるBIG DATAの可能性
【講演概要】京計算機が代表するスーパーコンピュータが実現する大規模並列計算によって、従来の手法を凌駕する高精度・高分解能の地震・津波の数値解析手法が開発されている。しかし、防災・減災のための地震・津波シミュレーションには、先端的数値解析手法のみでは不十分であり、解析手法の性能を最大限利用できる高度な都市モデルも必要とされる。さまざまな形で収集・整備されている都市のビッグデータが、このような都市モデル構築の基盤となる。本講演は、先端的数値解析手法とともに、東京・仙台・高知を対象とした地震・津波シミュレーションを例として、都市モデルに必要とされる都市のビッグデータや、実際に構築される都市モデルを紹介する。地震前の被害想定や応急的被害評価のために地震・津波シミュレーションの高度化は重要な課題である。都市のビッグデータの利用に力点を置き、今後の研究開発動向を議論する。
講師:堀 宗朗(東京大学 地震研究所 巨大地震津波災害予測研究センターセンター長・教授)
  【略歴】1989年 東京大学工学部土木工学科卒業。1991年 カリフォルニア大学サンディエゴ校Ph.D.課程修了。2001年 東京大学地震研究所教授。2012年 東京大学地震研究所巨大地震津波災害予測研究センターセンター長。
SESSION.7 16:10-17:00
スマートシティにおける国際標準化の動向と我が国の戦略
【講演概要】スマートシティーは日本の経済復興計画の目玉であるインフラ輸出の中核的なテーマである。その規模の大きさから政府調達協定や開発援助などとも関連して、国際合意に基づくことが他のビジネスに比較して際立って重要である。特に、調達仕様に関連する国際合意ともなれば、ISOやIECを筆頭とする国際デジュールスタンダードの役割と効用がクローズアップされる。既に水ビジネスや鉄道、スマートグリッドなどの分野で、欧、米、中、韓がISO/IECで攻勢を掛けてきている中、日本だけ出遅れいているわけにも行かない。本講演では、このような危機感をもって望んだ日本のチームが、発案後一年を経ずに国際提案と投票可決を達成し、ISO TC268/SC1を設立、スマートコミュニティのインフラに関する標準規格を開発する国際リーダーとしての立場に至った経緯などを紹介する。
講師:市川 芳明(株式会社日立製作所 地球環境戦略室 主管技師長)
  【略歴】1979年東京大学工学部機械工学科卒業。入社後、原子力の保全技術及びロボティクス分野の研究に従事。1995年より環境保全分野のソリューションビジネスを立ち上げる。2000年初代の環境ソリューションセンタ長を経て現職。東京工業大学、お茶の水女子大学、筑波大学の非常勤講師を経験。現在IEC(国際電気標準会議)TC111とISO TC268/SC1の議長。ISO TC207エキスパート、CENELEC(欧州電気標準委員会)オブザーバー、工学博士、技術士(情報工学)。