イベント企画
人工知能は人間の幸福度を測ることができるか?
~主観的QoL計測におけるコンピュータビジョン・パターン認識技術の可能性を探る~
9月13日(水) 15:30-17:30
第2イベント会場(2号館221号講義室)
【セッション概要】 「どれだけ人間らしく自分らしい生活を送り人生に幸福を見出しているか」を示す生活の質(Quality-of-Life)は身体的な健康状態や生活環境だけでなく、主観的な心理状態にも強く依存している。しかしアンケート調査や参与観察を通して測られることが多いためIT技術による自動化が果たす役割は大きい。本企画では、看護学・社会心理学の専門家、および行動認識の技術者・研究者を招いて、人間の主観的QoL はどのような行動や振る舞いに現れるのか、またそれをどのように記録・分析すればよいのかについて講演いただく。またそれを通して主観的QoL を自動計測するコンピュータビジョン・パターン認識技術の可能性、および実生活においてそれが果たす意義について議論する。
15:30-15:35 オープニング 企画趣旨説明
近藤 一晃(京都大学 学術情報メディアセンター 講師)
【略歴】 2007年大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻博士後期課程修了。同年同大学産業科学研究所特任研究員。2009年京都大学学術情報メディアセンター助教、2015年同講師を経て現在に至る。博士(情報科学)。情報処理学会、電子情報通信学会各会員。
15:35-15:50 講演(1) よく生きる・よく老いる、を科学する
菅原 育子(東京大学 高齢社会総合研究機構 特任講師)
【概要】 よく生きる(live well)、よく老いる(age well)を支えることは、心理学や老年学が目指す究極のゴールのひとつである。一方で何をもって「よい」と判断するかには一定の見解はなく、人生100年時代に向かって益々大きな議論を呼んでいる。本講演では、友人、近隣といった身近な人々との関わりや社会とのつながりと、心身の健康および主観的well-beingとの関係を中心に、well-beingに関する知見を概観する。これまでの知見からwell-beingはくらしの中でダイナミックに変化する現象であると考えられるが、既存の手法ではそのダイナミックさを捉えるのに限界があった。Well-beingを理解し支えるために、新しい技術に期待される役割について論じたい。
【略歴】 2005年東京大学大学院人文社会系研究科博士過程修了。2006年博士(社会心理学)取得。東京大学高齢社会総合研究機構特任研究員、東京大学社会科学研究所助教を経て、2014年6月より東京大学高齢社会総合研究機構特任講師。中高年者の友人、近隣、社会との関わりと心身の健康や幸福感を主な研究テーマとする。2016年日本老年社会科学会奨励賞受賞。
15:50-16:05 講演(2) 認知症の人のQoL評価方法
松岡 義明(藍野大学 医療保健学部 助教)
【概要】 これまでの認知症ケアの現場において、様々な認知症ケアのメソッドや援助者の知識や経験をもとに実践を積み重ね、特に行動心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:以下BPSD)における対応は、認知症ケアの中心的かつ重要な支援である。援助者は認知症の人の行動の意味を心理的背景から探り、それを認知症ケアのメソッドや自分の知識や経験をベースに処理し、その人の心理的なneedsを導き出そうとしている。
 しかし、近年においてもなおBPSDの対応は困難であり、認知症の人の心理を掴み切れず、間違った対応をしてしまうことも多い。その原因の一つに、認知症の人を援助者の主観的な視点で理解しようとするため、認知症の人の心理的なneedsを見誤っているのではないか。つまり認知症の人の行動や表情を一旦自分の蓄積された知識や経験と比較して理解しようとするため、自分の価値観の理解での域を超えないことが大きいと考える。よって認知症の人の行動や表情を客観的に評価していくことがこれからの重要な課題であるといえるだろう。
【略歴】 1989年信貴山看護専門学校卒。同年看護師免許取得。2015年吉備国際大学社会福祉研究科博士(前期)課程(通信)修了。1989年~2004年ハートランドしぎさん看護師として勤務。2005年~2015年三豊市立西香川病院看護部長として認知症の医療・ケアに従事するとともに認知症の人が安心して暮らすまちづくりに取り組む。2015年藍野大学医療保健学部看護学科助教として勤務し、現在に至る。
16:05-16:20 講演(3) AIで測る人の感情と高齢者の認知症リスク
加藤 昇平(名古屋工業大学 大学院工学研究科情報工学専攻 教授)
【概要】 現在の日本は、本格的な少子・超高齢化社会を迎えており、現在世界で最も高齢化が進む国である。長寿高齢社会において人々の健康と幸福を実現するために、認知症を取り巻く諸問題は重要な課題である。加えて、少子化により高齢者をケアする人的資源が不足するため、介護ロボット(体の補助)のみならずロボットを用いて心のケアを実施する必要なども認識されつつある。ここでは、AIとデータ・マイニングの計算技術を用いて高齢者の発話音声から認知症を早期に発見するスクリーニングの開発、人の心に働きかけるヒューマン・ロボット・インタラクション、ならびに、音声・画像・身体動作の情報から人の感情を認識する技術について紹介する。
【略歴】 1998年名古屋工業大学大学院工学研究科博士後期課程修了。豊田工業高等専門学校講師、名古屋工業大学准教授を経て、現在同大学院情報工学専攻所属、教授。博士(工学)。AI、感性情報、ロボティクス、ヒューマンインタラクション、医工連携情報処理などに興味をもつ。2010年日本知能情報ファジィ学会論文賞、2012年日本感性工学会論文賞、2015年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)などを受賞。人工知能学会、情報処理学会、電子情報通信学会、日本ロボット学会、日本感性工学会、電気学会、日本認知症学会、IEEE 各会員。
16:20-16:35 講演(4) センサと人工知能を活用した生活機能レジリエントサービス~年齢軸から生活機能軸へのパラダイムシフト ~
西田 佳史(産業技術総合研究所 人工知能研究センター 首席研究員)
【概要】 生活機能が変化した際に、高い社会参加や安全な状態を回復してくれる生活機能レジリエントな社会が求められている。個人の状態に適応したプリシジョン・サービスを開発する際に課題となる生活機能多様性、生活データの断片性の問題に対応する新たな取り組みとして、コミュニティと連携したリビングラボの活動と人工知能技術を融合させた新たな試みを紹介する。また、生活ビッグデータを用いた課題解決型マニュファクチャリングの事例、高齢者の社会参加を促進するための情報基盤の事例などを紹介する。
【略歴】 1998年東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了、博士(工学)。1998年通商産業省 工業技術院 電子技術総合研究所入所。2001年独立行政法人 産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究ラボ研究員2010年より、同研究所 デジタルヒューマン工学研究センター 生活・社会機能デザイン研究チーム長。2015年、同研究所 人工知能研究センター 首席研究員。日常生活行動の観察・モデリング技術、生活機能構成技術、 傷害予防工学の研究に従事。2012年 情報処理学会論文賞、2011年 日本人間工学会大島賞受賞、2007年 第6回ドコモ・モバイル・サイエンス賞 社会科学部門 奨励賞などを受賞。
16:35-16:50 講演(5) 幸福社会の実現に向けた研究開発及び適用事例紹介
佐藤 信夫(日立製作所 研究開発グループ システムイノベーションセンタ 知能情報研究部 主任研究員)
【概要】 我々は、世の中に先駆けて、ビッグデータの実用化に向けて取り組んできた。この取り組みの一環として、ウェアラブルセンサを用いて人々の幸福感(ハピネス度)を計測する技術を開発した。我々が考案した集団の幸福感は、ウエアラブルセンサで得られた大量の人間行動データの分析から、集団の幸福感と強い相関がある身体運動の特徴パターンを見出したもので、「組織活性度」として定量化した。さらに、定量化された組織活性度は、その組織の生産性に強い相関があることを突き止めた。本講演では、我々が今まで取り組んできた行動計測/特徴量抽出手法、及び、これらをコア技術とした組織活性化支援サービスを紹介する。さらに、実ビジネスへの適用事例を紹介することで、これから解決すべき課題について述べる。
【略歴】 2002年会津大学大学院コンピュータ理工学研究科博士後期課程単位取得退学、同年、(株)日立製作所 中央研究所に入社。現在、研究開発グループ システムイノベーションセンタにて、信号処理、機械学習、及び、人間行動分析の研究に従事。コンピュータ理工学博士。
16:50-17:30 パネル討論
司会:近藤 一晃(京都大学 学術情報メディアセンター 講師)
【略歴】 2007年大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻博士後期課程修了。同年同大学産業科学研究所特任研究員。2009年京都大学学術情報メディアセンター助教、2015年同講師を経て現在に至る。博士(情報科学)。情報処理学会、電子情報通信学会各会員。
パネリスト:菅原 育子(東京大学 高齢社会総合研究機構 特任講師)
【略歴】 2005年東京大学大学院人文社会系研究科博士過程修了。2006年博士(社会心理学)取得。東京大学高齢社会総合研究機構特任研究員、東京大学社会科学研究所助教を経て、2014年6月より東京大学高齢社会総合研究機構特任講師。中高年者の友人、近隣、社会との関わりと心身の健康や幸福感を主な研究テーマとする。2016年日本老年社会科学会奨励賞受賞。
パネリスト:松岡 義明(藍野大学 医療保健学部 助教)
【略歴】 1989年信貴山看護専門学校卒。同年看護師免許取得。2015年吉備国際大学社会福祉研究科博士(前期)課程(通信)修了。1989年~2004年ハートランドしぎさん看護師として勤務。2005年~2015年三豊市立西香川病院看護部長として認知症の医療・ケアに従事するとともに認知症の人が安心して暮らすまちづくりに取り組む。2015年藍野大学医療保健学部看護学科助教として勤務し、現在に至る。
パネリスト:加藤 昇平(名古屋工業大学 大学院工学研究科情報工学専攻 教授)
【略歴】 1998年名古屋工業大学大学院工学研究科博士後期課程修了。豊田工業高等専門学校講師、名古屋工業大学准教授を経て、現在同大学院情報工学専攻所属、教授。博士(工学)。AI、感性情報、ロボティクス、ヒューマンインタラクション、医工連携情報処理などに興味をもつ。2010年日本知能情報ファジィ学会論文賞、2012年日本感性工学会論文賞、2015年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)などを受賞。人工知能学会、情報処理学会、電子情報通信学会、日本ロボット学会、日本感性工学会、電気学会、日本認知症学会、IEEE 各会員。
パネリスト:西田 佳史(産業技術総合研究所 人工知能研究センター 首席研究員)
【略歴】 1998年東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了、博士(工学)。1998年通商産業省 工業技術院 電子技術総合研究所入所。2001年独立行政法人 産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究ラボ研究員2010年より、同研究所 デジタルヒューマン工学研究センター 生活・社会機能デザイン研究チーム長。2015年、同研究所 人工知能研究センター 首席研究員。日常生活行動の観察・モデリング技術、生活機能構成技術、 傷害予防工学の研究に従事。2012年 情報処理学会論文賞、2011年 日本人間工学会大島賞受賞、2007年 第6回ドコモ・モバイル・サイエンス賞 社会科学部門 奨励賞などを受賞。
パネリスト:佐藤 信夫(日立製作所 研究開発グループ システムイノベーションセンタ 知能情報研究部 主任研究員)
【略歴】 2002年会津大学大学院コンピュータ理工学研究科博士後期課程単位取得退学、同年、(株)日立製作所 中央研究所に入社。現在、研究開発グループ システムイノベーションセンタにて、信号処理、機械学習、及び、人間行動分析の研究に従事。コンピュータ理工学博士。