イベント企画
デジタルゲリマンダーの脅威 ~ネットとAIから民主主義は守れるか~
9月12日(火) 9:30-12:00
第1イベント会場(2号館213号講義室)
【セッション概要】 AI、データ・マイニング、SNS等を利用した政治操作への懸念が顕在化しつつある。その一例は2016年のアメリカ大統領選挙であり、ロシア政府が世論操作も含め大統領選への介入を行ったとして政府の情報機関が公的な調査結果を公表する事態となっている。近年、このような SNSを利用した政治操作は「デジタル・ゲリマンダー」と呼ばれるようになっているが、はたしてこうした世論操作を通じた政治バイアスに有効な規制策はあるのか。政治操作の存在を検知できるのか、なぜこのような政治操作が生じるのか、防止手段はあるのか等の点について、法制度、社会学、技術、標準規格、個人情報保護など、関連する多くの分野の識者を結集し、多面的な討論を行う。
9:30-9:40 モデレータ デジタル・ゲリマンダーの脅威 イントロダクション
須川 賢洋(新潟大学 法学部 助教)
【概要】 ネットワークが政策に影響を与えてきた歴史を簡単に振り返り、今、「デジタル・ゲリマンダー」がどのように問題なのかを紹介する。
【略歴】 新潟大学大学院法学研究科修了。修士(法学)。専門は情報法政で、コンピュータ犯罪、デジタル知的財産、情報セキュリティ制度、デジタル・フォレンジックなど、先端技術と法律/政策の関係を中心に研究。共著に「ITセキュリティカフェ—見習いコンサルの事件簿」(丸善)、「実践的eディスカバリ—米国民事訴訟に備える」(NTT出版)、「デジタル・フォレンジック事典」(日科技連)など。NPOデジタル・フォレンジック研究会理事など。
9:40-10:05 講演(1) デジタル・ゲリマンダーの法規制の可能性
湯淺 墾道(情報セキュリティ大学院大学 学長補佐・情報セキュリティ研究科教授)
【概要】 2016年アメリカ大統領選挙においてロシアがサイバー攻撃等で大統領選に介入したとしてアメリカの情報機関が報告書を公表した。その中には世論操作も含まれるが、近年SNSによる偽ニュースの拡散等も含めた世論操作を通じた投票行動への影響力行使が問題とされるようになってきており、このような影響力行使は「デジタル・ゲリマンダー(digital gerrymandering)」と呼ばれるようになっている。SNSは、その分析を通じてある特定の政治的傾向を持つユーザーの集団を特定し、その集団の投票行動に影響を与えることも可能である。しかし、これらのSNS事業者やサーチエンジンによる世論操作や投票行動への影響力行使を法的に規制することは、アメリカでも困難であるとされており、その問題点について検討する。  【イベント企画資料はこちら】
【略歴】 1994年青山学院大学法学部卒。同大学院法学研究科博士前期課程修了。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程退学。2008年九州国際大学法学部教授。同年9月九州国際大学副学長。2011年情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科教授。2012年情報セキュリティ大学院大学学長補佐。情報ネットワーク法学会副理事長、日本選挙学会理事等を務める。
10:05-10:30 講演(2) デジタル・ゲリマンダーとプライバシー、自己決定権
板倉 陽一郎(ひかり総合法律事務所 弁護士(パートナー))
【概要】 デジタル・ゲリマンダーはSNS等を通じて投票行動を操作しようという試みであり、憲法上、統治機構との関係で大きな問題を生じるが、人権であるプライバシーや自己決定権とも緊張関係を生じさせる。本来であれば、オンライン上の思想の自由市場として、民主主義に資するべきSNS等が、逆に自己決定権を損なわせることになるわけであるが、法的にはどのような意味を持つか。情報の細やかな公開設定を通じて自己の情報のコントロールを補完するはずのSNSにおいて、逆にSNSから影響を受けてしまうという状態が、どのようにプライバシーに影響してくるか。憲法上の観点はもとより、サービスとしてのSNSの利用者の保護という私法・消費者法的観点も踏まえて検討を加える。
【略歴】 2002年慶應義塾大学総合政策学部卒、2004年京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻修士課程修了、2007年慶應義塾大学法務研究科(法科大学院)修了。2008年弁護士(ひかり総合法律事務所)。2016年4月よりパートナー弁護士。2010年4月より2012年12月まで消費者庁に出向(消費者制度課個人情報保護推進室(現・個人情報保護委員会事務局)政策企画専門官)。2017年4月より国立研究開発法人理化学研究所革新知能統合研究センター社会における人工知能研究グループ客員主管研究員。当会電子化知的財産・社会基盤研究会幹事。
10:30-10:55 講演(3) ソーシャルメディアと想像の共同体
藤代 裕之(法政大学 社会学部 准教授)
【概要】 新聞ジャーナリズムと近代民主主義は密接な関係を持っている。ベネディクト・アンダーソンは印刷技術と紙に媒介された言語の登場が近代を作り出したとする。だが、新聞は衰退し、人々はスマートフォンを常時携帯し、ニュースはソーシャルメディアやニュースアプリが媒介、ニュースの価値はアルゴリズムが判断するようになった。人工知能(AI)が、近代マスメディアが生み出した共同体を打ち壊し、過去と今の境界を失わせ、政治と混乱させ、社会の分断を招いている。ソーシャルメディアはどのような社会と政治制度を生み出すのか、メディア、ジャーナリズムの視点から考える。
【略歴】 広島大学文学部哲学科卒。立教大学21世紀社会デザイン研究科修士課程修了。徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントでニュースデスクや新サービスの立ち上げを担当。ソーシャルメディア時代のメディアとジャーナリズムをテーマに、取材、研究、実践活動を行っている。著書に『ネットメディア覇権戦争』『ソーシャルメディア論 つながりを再設計する』などがある。
10:55-11:20 講演(4) デジタル・ゲリマンダーをメカニズムデザイン(計算機科学的ゲーム理論)の立場から読み解く
櫻井 祐子(産業技術総合研究所 主任研究員)
【概要】 デジタル・ゲリマンダーに対して計算機科学と社会科学の融合領域の一つであるメカニズムデザインの観点から分析及び議論を行う。メカニズムデザインでは「適切な投票」のルールを決めることも一つの目的である。メカニズムデザインについて概観するとともに、デジタル・ゲリマンダーへの対策としての可能性について議論を行う。
【略歴】 1997年名古屋大学大学院多元数理科学研究科修士課程修了。1997年NTTコミュニケーション科学基礎研究所、2007年JPSP特別研究員(RPD)、2009年ヤフー(株)、2010年JST ERATO湊離散構造処理系プロジェクト研究員。2011年九州大学大学院システム情報科学研究院准教授。2011年JSTさきがけ研究員(兼任)を経て、2017年より産業技術総合研究所人工知能研究センター主任研究員。マルチエージェントシステム、メカニズムデザインに関する研究に従事。
11:20-12:00 パネル討論 ~ネットとAIから民主主義は守れるか~
【概要】 SNS等を利用した政治操作が懸念されたり、ネット上に書き込まれたホンの小さな投稿が、政治意思形成や政策過程に多大な影響を与える社会となってしまった。2016年のアメリカ大統領選挙ではこのことが大きく注目されるようになり、2017年に行われた各国の首脳選挙や、国内外の様々な政治決定事項にも影響を与えていると言えよう。さらには、AI、データ・マイニングの手法などの発達により、今後ますます影響を与えていくと思われる。
本パネルディスカッションでは、この「デジタル・ゲリマンダー」について、情報工学(プログラミング/シミュレーション/ゲーム理論など)・法学・政治学・メディア学といった様々な分野から論じてもらう。
単なる現状分析だけに留まらず、将来展望、また「デジタル・ゲリマンダー」にどう向き合っていくべきなのかといった点に重点をおき、いずれか一方の立場からの視点ではなく、政策を行う者の立場・市民の立場・情報を流通する立場など、様々な視点から議論を行うこととしたい。
司会:須川 賢洋(新潟大学 法学部 助教)
【略歴】 新潟大学大学院法学研究科修了。修士(法学)。専門は情報法政で、コンピュータ犯罪、デジタル知的財産、情報セキュリティ制度、デジタル・フォレンジックなど、先端技術と法律/政策の関係を中心に研究。共著に「ITセキュリティカフェ—見習いコンサルの事件簿」(丸善)、「実践的eディスカバリ—米国民事訴訟に備える」(NTT出版)、「デジタル・フォレンジック事典」(日科技連)など。NPOデジタル・フォレンジック研究会理事など。
パネリスト:湯淺 墾道(情報セキュリティ大学院大学 学長補佐・情報セキュリティ研究科教授)
【略歴】 1994年青山学院大学法学部卒。同大学院法学研究科博士前期課程修了。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程退学。2008年九州国際大学法学部教授。同年9月九州国際大学副学長。2011年情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科教授。2012年情報セキュリティ大学院大学学長補佐。情報ネットワーク法学会副理事長、日本選挙学会理事等を務める。
パネリスト:板倉 陽一郎(ひかり総合法律事務所 弁護士(パートナー))
【略歴】 2002年慶應義塾大学総合政策学部卒、2004年京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻修士課程修了、2007年慶應義塾大学法務研究科(法科大学院)修了。2008年弁護士(ひかり総合法律事務所)。2016年4月よりパートナー弁護士。2010年4月より2012年12月まで消費者庁に出向(消費者制度課個人情報保護推進室(現・個人情報保護委員会事務局)政策企画専門官)。2017年4月より国立研究開発法人理化学研究所革新知能統合研究センター社会における人工知能研究グループ客員主管研究員。当会電子化知的財産・社会基盤研究会幹事。
パネリスト:藤代 裕之(法政大学 社会学部 准教授)
【略歴】 広島大学文学部哲学科卒。立教大学21世紀社会デザイン研究科修士課程修了。徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントでニュースデスクや新サービスの立ち上げを担当。ソーシャルメディア時代のメディアとジャーナリズムをテーマに、取材、研究、実践活動を行っている。著書に『ネットメディア覇権戦争』『ソーシャルメディア論 つながりを再設計する』などがある。
パネリスト:櫻井 祐子(産業技術総合研究所 主任研究員)
【略歴】 1997年名古屋大学大学院多元数理科学研究科修士課程修了。1997年NTTコミュニケーション科学基礎研究所、2007年JPSP特別研究員(RPD)、2009年ヤフー(株)、2010年JST ERATO湊離散構造処理系プロジェクト研究員。2011年九州大学大学院システム情報科学研究院准教授。2011年JSTさきがけ研究員(兼任)を経て、2017年より産業技術総合研究所人工知能研究センター主任研究員。マルチエージェントシステム、メカニズムデザインに関する研究に従事。