FIT2016 第15回情報科学技術フォーラム 開催日:2016年9月7日(水)~9日(金) 会場:富山大学キャンパス
イベント企画
ポストムーア時代の計算プラットフォーム
9月9日(金) 13:00-16:00
第3イベント会場(共通教育棟A棟2階A23)
【セッション概要】 ムーアの法則は終焉に近づいてきたにもかかわらず、IT分野における技術革新への期待は留まるところを知らない。そこで、デバイス単体の性能は飽和しても、計算システム全体の作り方を変革することによって、さらなるパフォーマンスの向上を模索する必要が出てきた。本シンポジウムでは、有識者による講演とパネルディスカッションを通じてポストムーア時代のコンピューティングを支えることが期待できる要素技術とその展望について探る。
司会:並木 周(産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 副研究部門長)
【略歴】 1988年早稲田大学修士課程修了。同年から2005年まで、古河電工にて、励起レーザモジュールの開発及び量産化、広帯域ラマン増幅器の発明及びその実用化などに従事。1994年から1997年には、MIT客員研究員として、モード同期ファイバレーザの研究に従事。2005年から、産業技術総合研究所へ移籍。以後、超高速光信号処理、光ネットワーク技術の研究に従事。現在、産総研データフォトニクスプロジェクトユニット代表。アメリカ光学会フェロー。博士(理学)。
13:00-13:15 講演(1) ポストムーア時代の計算プラットフォーム
天野 英晴(慶應義塾大学 理工学部情報工学科 教授)
【概要】 シンポジウムの最初に、以下に続く連続講演のアウトラインを紹介する。
【略歴】 慶應義塾大学理工学部情報工学科教授。工学博士。電子情報通信学会フェロー。計算機アーキテクチャの研究に従事。
13:15-13:35 講演(2) ポストムーア時代のコンピュータ・アーキテクチャ技術
井上 弘士(九州大学 大学院システム情報科学研究院I&Eビジョナリー特別部門 教授)
【概要】 ムーアの法則の終焉は「電力の壁問題」をより深刻化する。ポストムーア時代において持続可能な性能向上を実現するためには、スケーリング則(消費電力一定下における動作速度と集積度の向上)に頼らないシステムの大規模化と多機能化が必須になるためである。この課題を解決するためには、「デバイス多様性」を考慮したアーキテクチャ設計が鍵となる。ここでデバイス多様性とは、①回路素子の違い(CMOS、ナノフォトニクス、超伝導素子、など)、②機能の違い(CPU、GPU、FPGA、など)、③特性の違い(製造上生じる周波数や電力のばらつきの影響)である。スケーリング則が破綻し、かつ、CMOS微細化限界を迎えたポストムーア時代においては、特性が異なる様々な種類のデバイスが大量に搭載されることとなり、これを如何に上手く活用しなければならない。本講演では幾つかの研究例を紹介しつつ、ポストムーア時代のコンピュータ・アーキテクチャ技術を展望する。
【略歴】 1996年九州工業大学大学院情報工学研究科修士課程修了。同年横河電機(株)入社。1999年Halo LSI Design & Device Technology, Inc.で訪問研究員としてフラッシュ・メモリの開発に従事。2001年九州大学で工学博士を取得。同年福岡大学工学部電子情報工学科助手。2004年より九州大学大学院システム情報科学研究院助教授。2007年4月より同大学准教授、2015年1月より同大教授、現在に至る。
13:35-13:55 講演(3) 異種プロセッシング装置を高速な通信で柔軟に組み合わせるポストムーア時代のアーキテクチャ
工藤 知宏(東京大学 情報基盤センター 教授)
【概要】 CPU、GPU、FPGAなどの様々な特性の異なる処理装置間の通信を軽量化・高速化することによりポストムーア時代にも性能向上を達成するアーキテクチャの概要と、これを人工知能に適用する構想について紹介する。
【略歴】 1991年慶応義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻博士課程単位取得退学。1991年~1997年東京工科大学情報工学科助手/講師/助教授。1997年~2002年技術研究組合新情報処理開発機構。2002年~2015年独立行政法人産業技術総合研究所。2015年4月より東京大学情報基盤センターネットワーク研究部門教授。ネットワークおよび計算機システムの研究に従事。
13:55-14:15 講演(4) インターコネクト向け光ネットワーク技術
石井 紀代(産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 主任研究員)
【概要】 データセンターやHPCでの大規模並列処理を支える大容量インターコネクト網が急務である。長距離系では、光スイッチを用いることにより、大容量・低消費電力の通信網実現が目指されている。本発表では、インターコネクト網に光スイッチを用いる光ネットワーク技術を適用する際の、ProsとConsとを議論し、関連研究の最新動向を紹介する。
【略歴】 2008年名古屋大学大学院工学研究科博士前期課程修了。2011年同博士後期課程修了。同2008-2011年日本学術振興会特別研究員。2011年産業技術総合研究所入所。以来、光ファイバ通信技術分野におけるシステムからネットワーク構成にわたる研究開発に従事。現在、同所電子光技術研究部門主任研究員。
14:15-14:35 講演(5) 光電子融合システムに向けた、光I/Oコアの開発状況とその応用
蔵田 和彦(PETRA シニアエンジニアリングディレクター兼サブプロジェクトリーダ)
【概要】 IT・NWシステムの高速、大容量化に伴うI/Oボトルネックの解決に向け、光インターコネクションが注目されている。実現の手段として、近年ではLSIと同様に光集積回路をシリコンウェハ上に書き込むシリコンフォトニクス技術が実用化に近づきつつある。PETRAにおける本領域の研究開発状況を報告する。特に、シリコンフォトニクス技術を活用したチップスケール光トランシーバ「光I/Oコア」と、システムへの適用について紹介する。
【略歴】 1985年、NEC入社、主に光通信用トランシーバの開発及び光インターコネクションに向けた光トランシーバ、サブシステムの研究開発に従事。2012年よりPETRAで実施の超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発プロジェクトに参画、現在、PETRAのシニアエンジニアリングディレクター及びサブプロジェクトリーダ。
14:35-14:55 講演(6) 密結合演算加速機構アーキテクチャ
塙 敏博(東京大学 情報基盤センター 准教授)
【概要】 GPUに代表される演算加速装置を用いたクラスタが高性能計算向けに広く使われているが、その理論演算性能の高さを活かすためには、演算加速装置同士の間で、効率のよい通信を実現する必要がある。本講演では、このようなシステムを実現する密結合演算加速機構アーキテクチャと、FPGAを用いたプロトタイプの実例について紹介し、今後に向けた展望を述べる。
【略歴】 1998年慶應義塾大学大学院理工学研究科計算機科学専攻博士課程修了。博士(工学)。同年~2006年東京工科大学工学部情報工学科/コンピュータサイエンス学部講師。2007年筑波大学計算科学研究センター研究員、2008年筑波大学システム情報工学研究科准教授、2013年東京大学情報基盤センター特任准教授を経て、2015年より東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティング研究部門准教授。計算機アーキテクチャ、高性能相互結合網、ハイパフォーマンスコンピューティング、GPUコンピューティング等に関する研究に従事。
14:55-15:15 講演(7) システムワイドデータフローアーキテクチャとFPGAによる高性能計算
佐野 健太郎(東北大学 大学院情報科学研究科 准教授)
【概要】 ムーアの法則終焉後にも性能向上を持続するためのシステムアーキテクチャと、その実現に向けた取り組みについて紹介する。チップあたりの集積度向上が困難なポストムーア時代において性能や電力性能比を向上させるには、システム内で増加するチップ上の多数のトランジスタをできるだけ有効に使用することが重要である。計算速度に対して相対的に大きなチップ間データ移動の遅延を許容しながらも、遠く離れたトランジスタのスイッチングを効率良く制御可能なアーキテクチャが求められる。本講演では、そのような要件を満たすデータ移動指向のデータフローアーキテクチャと、密結合FPGAクラスタによる高性能数値計算事例を紹介する。
【略歴】 2000年東北大学大学院情報科学研究科情報基礎科学専攻博士課程修了。2000年6月より同大学大学院工学研究科助手。2001年4月より同大学大学院情報科学研究科助手。2005年に同助教授(現准教授)。2006年~2007年に、在外研究員としてインペリアルカレッジロンドンにて国際共同研究に従事。高性能数値計算のためのFPGAを用いたカスタム計算機・リコンフィギャラブル計算機システムに関する研究に従事。シストリック計算メモリアレイ、データフロー型ストリーム計算機、帯域圧縮ハードウェア、ストリーム計算ハードウェア高位合成コンパイラ、津波シミュレーションFPGAアクセラレータ、超並列流体計算専用システム、密結合FPGAクラスタ等を研究開発。
15:15-16:00 パネル討論 ポストムーア時代の計算プラットフォームのつくり方
司会:天野 英晴(慶應義塾大学 理工学部情報工学科 教授)
【略歴】 慶應義塾大学理工学部情報工学科教授。工学博士。電子情報通信学会フェロー。計算機アーキテクチャの研究に従事。
パネリスト:井上 弘士(九州大学 大学院システム情報科学研究院I&Eビジョナリー特別部門 教授)
【略歴】 1996年九州工業大学大学院情報工学研究科修士課程修了。同年横河電機(株)入社。1999年Halo LSI Design & Device Technology, Inc.で訪問研究員としてフラッシュ・メモリの開発に従事。2001年九州大学で工学博士を取得。同年福岡大学工学部電子情報工学科助手。2004年より九州大学大学院システム情報科学研究院助教授。2007年4月より同大学准教授、2015年1月より同大教授、現在に至る。
パネリスト:工藤 知宏(東京大学 情報基盤センター 教授)
【略歴】 1991年慶応義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻博士課程単位取得退学。1991年~1997年東京工科大学情報工学科助手/講師/助教授。1997年~2002年技術研究組合新情報処理開発機構。2002年~2015年独立行政法人産業技術総合研究所。2015年4月より東京大学情報基盤センターネットワーク研究部門教授。ネットワークおよび計算機システムの研究に従事。
パネリスト:石井 紀代(産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 主任研究員)
【略歴】 2008年名古屋大学大学院工学研究科博士前期課程修了。2011年同博士後期課程修了。同2008-2011年日本学術振興会特別研究員。2011年産業技術総合研究所入所。以来、光ファイバ通信技術分野におけるシステムからネットワーク構成にわたる研究開発に従事。現在、同所電子光技術研究部門主任研究員。
パネリスト:蔵田 和彦(PETRA シニアエンジニアリングディレクター兼サブプロジェクトリーダ)
【略歴】 1985年、NEC入社、主に光通信用トランシーバの開発及び光インターコネクションに向けた光トランシーバ、サブシステムの研究開発に従事。2012年よりPETRAで実施の超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発プロジェクトに参画、現在、PETRAのシニアエンジニアリングディレクター及びサブプロジェクトリーダ。
パネリスト:塙 敏博(東京大学 情報基盤センター 准教授)
【略歴】 1998年慶應義塾大学大学院理工学研究科計算機科学専攻博士課程修了。博士(工学)。同年~2006年東京工科大学工学部情報工学科/コンピュータサイエンス学部講師。2007年筑波大学計算科学研究センター研究員、2008年筑波大学システム情報工学研究科准教授、2013年東京大学情報基盤センター特任准教授を経て、2015年より東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティング研究部門准教授。計算機アーキテクチャ、高性能相互結合網、ハイパフォーマンスコンピューティング、GPUコンピューティング等に関する研究に従事。
パネリスト:佐野 健太郎(東北大学 大学院情報科学研究科 准教授)
【略歴】 2000年東北大学大学院情報科学研究科情報基礎科学専攻博士課程修了。2000年6月より同大学大学院工学研究科助手。2001年4月より同大学大学院情報科学研究科助手。2005年に同助教授(現准教授)。2006年~2007年に、在外研究員としてインペリアルカレッジロンドンにて国際共同研究に従事。高性能数値計算のためのFPGAを用いたカスタム計算機・リコンフィギャラブル計算機システムに関する研究に従事。シストリック計算メモリアレイ、データフロー型ストリーム計算機、帯域圧縮ハードウェア、ストリーム計算ハードウェア高位合成コンパイラ、津波シミュレーションFPGAアクセラレータ、超並列流体計算専用システム、密結合FPGAクラスタ等を研究開発。