FIT2016 第15回情報科学技術フォーラム 開催日:2016年9月7日(水)~9日(金) 会場:富山大学キャンパス
イベント企画
10年後も情報科学技術者であるために
9月8日(木) 9:30-11:30
第5イベント会場(共通教育棟B棟2階B21)
【セッション概要】 本セッションでは、専門分野を問わず、10年後も情報科学技術者として活動を続けていくためのヒントになればと、2件の講演を企画しました。最初の講演テーマとして、技術者としてモチベーションを高く保つための考え方についての講演をお願いしました。放送大学の講義でもご活躍の札野順先生からお話しいただきます。もう一つの講演テーマは、自己研鑽(CPD)についてです。少し堅苦しい言葉ですが、プロフェッショナルな情報技術者には自己研鑽が求められています。単に資格更新のためではない、自己研鑽と意義と制度について、情報処理学会誌に情報処理技術者(CITP)について解説記事を執筆された児玉公信先生にご講演いただきます。
司会:秋山 達勇(NEC データサイエンス研究所 主任)
【略歴】 1996年東京大学工学部計数工学科卒業。1998年東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻修士課程修了。同年NEC入社。以来、主に、郵便物仕分け装置向け欧文手書き住所認識アルゴリズムの開発等、文字認識・画像認識分野の応用研究に従事。現在NECデータサイエンス研究所主任。技術士(情報工学部門)。電子情報通信学会、情報処理学会、日本技術士会会員。
9:30-10:30 講演(1) 新しい時代の技術者倫理-人と組織のwell-being(よく生きること)を高める倫理-
札野 順(東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 教授)
【概要】 倫理の本来の意味は、「よく生きる(well-being)」ための意思決定と行動を考量することである。しかしながら、これまでの技術者倫理においては、「やってはならないこと」をしないようにする予防倫理(preventive ethics)が中心で、「為すべきこと」を目指す志向倫理(aspirational ethics)は見落とされていた。本講演では、伝統的な責任論に基づく、予防倫理的な技術者倫理ではなく、よりよく生きることを目指す新しい時代の技術者倫理を検討する。まず、予防倫理的なアプローチが持つ限界を指摘した上で、「公衆の安全、健康、福利を最優先する」という技術者倫理の基本原則を再確認する。その上で、福利(well-being)とは何かを「科学的」に考察する様々な取り組み、特に、ポジティブ心理学について紹介する。さらに、公衆の福利を最優先する「倫理的な技術者」が、社会のwell-beingを高めるだけでなく、自分自身の「well-being」を高めることができることを示す。
【略歴】 1980年3月国際基督教大学教養学部理学科物理学専攻卒業。1982年6月国際基督教大学大学院教育学研究科博士前期課程修了。1988年スミソニアン研究所アメリカ歴史博物館大学院生フェロー。1990年オクラホマ大学大学院科学史研究科博士課程修了(Ph.D.取得)。同年金沢工業大学助教授。1994年金沢工業大学教授(2015年8月31日まで)。2004年同大学大学院工学研究科専攻共通主任(2015年3月31日まで)。同年同大学科学技術応用倫理研究所所長(2015年8月31日まで)。2015年9月東京工業大学大学マネジメントセンター教授。2016年4月東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。
10:30-11:30 講演(2) 技術者の能力開発と資格制度におけるCPDについて
児玉 公信(株式会社情報システム総研 代表取締役社長)
【概要】 プロフェッショナルな情報技術者は、顧客の要求に応えるために、技術動向に目を配りながらも、自らが最善と信じる技術を提供する。プロフェッショナルに対して継続研鑽(CPD)の義務または責務が課せられるのは、単に資格更新のためではなく、顧客に価値を提供するためにどんな努力をしてきたかをトレースするためと言える。本講演では、技術者にとってのCPDの意義とその制度について解説する。
【略歴】 石油元売り、大学受託研究員、鉄鋼系情報子会社を経て、現在(株)情報システム総研 代表取締役社長。技術士(情報工学部門)。博士(情報学)。モデリングとシステム思考に基づく基幹情報システムの再構築に従事。情報処理学会技術士委員長、同情報システムと社会環境研究会主査、文部科学省科学技術・学術審議会専門委員。著書に「UMLモデリング入門」「UMLモデリングの本質」ほか、訳書に「アナリシスパターン」「リファクタリング」ほか。