FIT2016 第15回情報科学技術フォーラム 開催日:2016年9月7日(水)~9日(金) 会場:富山大学キャンパス
イベント企画
PoTS映像学事始め 第2章
9月7日(水) 15:30-17:30
第5イベント会場(共通教育棟B棟2階B21)
【セッション概要】 映像メディアのディジタル化の波が一段落した現在、近未来の映像新時代のキーテクノロジーとして「PoTS映像学」を提唱し、その技術体系構築を目指す「汎光線時空間映像学時限研究専門委員会(PoTS研究会)」をISSに設立しました。時空間を飛び交う光線を多数のカメラやセンサで捉え、計算処理により時空間の制約を超えた自由視点映像や自由焦点映像を再構成する学術体系を「汎光線時空間(Plen-optic Time Space)映像学」と名付けています。本セッションでは、PoTS研究会の専門委員により、PoTS映像学を指向した関連研究の歴史から現在までを紹介し、将来展望を参加者の皆様と議論したいと思います。多数のご参加をお待ちしています。
15:30-15:34 司会
斎藤 英雄(慶應義塾大学 理工学部情報工学科 教授)
【略歴】 1992年慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了。1992年同大学助手、専任講師、助教授を経て、2006年より現職。博士(工学)。1997年~1999年カーネギーメロン大学訪問研究員。コンピュータビジョンによる3次元幾何解析技術、その複合現実感・自由視点映像生成への応用等に関する研究に従事。日本バーチャルリアリティ学会フェロー、IEEEシニア会員、情報処理学会、映像情報メディア学会、画像電子学会各会員。
15:34-16:03 講演(1) 3次元ビデオ技術のその後の展開と現状
延原 章平(京都大学 大学院情報学研究科 講師)
【概要】 3次元ビデオとは多視点映像を入力としてシーンの3次元形状および表面テクスチャをそのまま復元するものであり、自由視点映像生成・編集だけでなく、その計測が非接触・非拘束であることを活かした3次元骨格構造推定や動作解析など、これまでの2次元映像とは異なる新たな映像入力としても様々な応用が提案されてきた。この講演では1990年代から始まった研究開発の流れを概観しながらこれまでに実現されてきた成果を紹介するとともに、今後どのような課題へと取り組むべきであるのかを議論する。またその中でも特に、光線時空間情報の計測と復元という着眼点によって、これまでの技術が不透明物体による反射光のみに着目してその表面形状の計測として問題を捉えていたことに対して、屈折・散乱・透過などを伴うより一般的な(半)透明物体計測への展開が期待されることを述べる。  【イベント企画資料はこちら】
【略歴】 2000年京都大学工学部電気電子工学科卒。2002年京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻修士課程修了。2005年同博士後期課程修了。京都大学大学院情報学研究科特任助手(2005年)、GCOE助教(2007年)を経て2010年より講師。博士(情報学)。3次元ビデオ、コンピュータビジョンに関する研究に従事。
16:03-16:32 講演(2) 高密度な光線空間データに基づく3次元映像の取得・処理・表示技術の展開
高橋 桂太(名古屋大学 大学院工学研究科 准教授)
【概要】 映像表現における光線空間の歴史は古く、1990年代には既に基本的な概念が提唱され、多視点映像データを「2次元画像の集合」ではなく、「単一の多次元信号」として扱う枠組みが考案されている。しかし、そのような枠組みを具現化しうるレベルの高密度・大容量の映像データが容易に扱えるようになったのは、比較的近年になってからである。本講演では、映像データの取得・処理・表示の各段階において、高密度な光線情報を扱う技術の発展を概観し、我々の最近の研究の取り組みを紹介する。また、取得から表示までを俯瞰する立場から、光線空間の今後の発展について議論する。
【略歴】 2001年東京大学工学部電子情報工学科卒業。2006年東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程修了。博士(情報理工学)。東京大学IRT研究機構特任助教、電気通信大学大学院情報理工学研究科知能機械工学専攻助教などを経て、2013年より名古屋大学大学院工学研究科准教授となり現在に至る。光線空間を中心に、コンピュテーショナルカメラ、イメージベーストレンダリング、3次元ディスプレイ、映像の圧縮符号化等の研究に従事。
16:32-17:01 講演(3) 光線空間の記録・再生を超えて~編集や生成への取り組み
舩冨 卓哉(奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 准教授)
【概要】 時空間を飛び交う光線を記録・再生する技術について、現在進行形で研究が進められています、これは映像に対比すればカメラやディスプレイの発展に位置付けられますが、映像メディアがディジタル化されたことの本来の意義は、記録・再生に留まらず、その編集や生成に幅広い可能性を与えたことともいえます。本講演では、私たちがごく最近取り組んでいる研究として、光線空間の編集に向けた半自動的領域選択の技術や、光線空間の概念に基づいて設計した新しい情報提示の技術について紹介し、PoTS映像学の将来展望に向けた話題を提供します。
【略歴】 2007年京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了。博士(情報学)。同年より京都大学学術情報メディアセンター助教。2015年より奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科准教授。3次元モデル処理、コンピュテーショナルフォトグラフィの研究に従事。
17:01-17:30 講演(4) 隠消現実感とPoTS映像学
森 尚平(慶應義塾大学 理工学部 訪問研究員(日本学術振興会特別研究員PD))
【概要】 実世界に電子情報を重畳する拡張現実感(Augmented Reality)や複合現実感(Mixed Reality)とは真逆の概念として隠消現実感(Diminished Reality)が存在する。隠消現実感は複合現実感技術に根差す技術的体系であり、患者の体内の透視、景観を乱す電信柱の除去、見通しの悪い道路の透視等、正にスーパーマンのX-ray Visionを体現する可視化技術である。視覚的な物体除去もしくは不可視領域の可視化を実現する鍵は、体験者視点において遮蔽される空間を観測・記述・再構成することであり、この点においてPoTS映像学と深い関係にあると言える。本公演では、この隠消現実感技術の歴史的概観と技術紹介を通してPoTS映像学を語る。  【イベント企画資料はこちら】
【略歴】 2011年立命館大学情報理工学部メディア情報学科卒。2013年同大学院情報理工学研究科博士課程前期課程修了。2016年同研究科博士課程後期課程修了。同年4月より慶應義塾大学理工学部訪問研究員(日本学術振興会特別研究員PD)。博士(工学)。複合現実感、隠消現実感、PoTS映像学の研究に従事。日本バーチャルリアリティ学会、情報処理学会、電子情報通信学会、IEEE、ACM会員。