FIT2015第14回情報科学技術フォーラム 開催日:2015年9月15日(火)~17日(木) 会場:愛媛大学城北キャンパス
イベント企画
人工知能のため標準問題としてのゲーム研究
9月16日(水) 9:30-12:00
第3イベント会場(講義棟1階 講11)
【セッション概要】 これまで人工知能における標準問題としてさまざまなものが提案されてきた。代表的なものとしてはチューリングテスト、チェス・囲碁・将棋、ロボカップなどがある。そして、近年、様々なゲーム課題に取り組めるAIの開発が進むなど、ゲームはAI研究・開発の進捗を測るのに有効な対象といえる。本企画では、ここ最近、ゲーム的課題として提案されてきた、カーリング・ミニ四駆・人狼知能に、ロボカップで取り上げられているサッカーを加えた4つの対象領域での研究課題とロードマップを紹介する。パネルでは、それぞれの課題が人工知能研究における技術の比較・評価にどのような貢献が期待できるかを議論する。
司会:篠田 孝祐(電気通信大学 助教)
【略歴】 2004年北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 博士後期課程終了。博士(知識科学)、現在、電気通信大学 大学院情報システム学研究科 助教として、社会デザインのための自己組織化構造の研究に従事。マルチエージェントシステム、大規模社会シミュレーション、複雑系ネットワークに興味をもつ。人工知能学会、情報処理学会各会員。
9:30-10:00 講演(1) 標準問題としての人狼知能研究の可能性
篠田 孝祐(電気通信大学 助教)
【概要】 これまで人工知能における標準問題としてさまざまなものが提案されてきた。代表的なものとしてはチューリングテスト、チェス・囲碁・将棋、ロボカップなどがある。それらの中でも、チェスや将棋のような完全情報環境下でのゲームでは、人間とコンピュータという対決での勝敗は見えつつある。これらゲームを人工知能研究の対象とするということを考えたとき、人工知能に求められることはゲームの勝敗による優劣よりも、人間と一緒になって楽しめるのにはどうするか、そしてゲームを通して人間が何を学べるのかという視点であると考える。本セミナーでは、コミュニケーションゲームの一つである人狼ゲームを対象としたゲームを計算機に実装しプログラム同士で人狼を行えるゲーム(人狼知能)の環境を整えることで、参加者の研究環境を整え人狼を対象とした研究を勧められるよう支援する。具体的には、人狼知能サーバに接続してゲームに参加するエージェントプログラムの実装を通してプログラム学習の推進を図るとともに、HAIならびにマルチエージェントの研究への入り口となることを目指す。
【略歴】 2004年北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 博士後期課程終了。博士(知識科学)、現在、電気通信大学 大学院情報システム学研究科 助教として、社会デザインのための自己組織化構造の研究に従事。マルチエージェントシステム、大規模社会シミュレーション、複雑系ネットワークに興味をもつ。人工知能学会、情報処理学会各会員。
10:00-10:25 講演(2) カーリングを科学する
伊藤 毅志(電気通信大学 情報理工学部 助教)
【概要】 カーリングは、氷の上をハウスと呼ばれるエリアをめがけて滑らせて得点を競うウインタースポーツである。カーリングはその戦略性の高さから「氷上のチェス」と呼ばれているが、戦略の体系的な研究はあまりなされていない。戦略の研究を阻んでいる一つの要因に、氷上の氷の物理的な運動の不確定性がある。カーリングでは、髪の毛一本でも大きく軌道が変わると言われるほどストーンの動きが繊細な上、氷の状態は刻々と変化していく。戦略を議論する以前に、氷の状態を読むことなどのスキルの議論に終始してしまう傾向がある。カーリングの戦略性のみを抽出して議論するために、我々はデジタルカーリングという理想的なカーリングシートをコンピュータ上に提案することで、人でも人工知能でも同様にプレイできる場を提供することにした。講演では、この試みについて説明するとともに、不確定性を含むゲームの人工知能研究のチャレンジについて紹介する。
【略歴】 1994年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻修了(工学博士)。同年電気通信大学情報工学科助手。2007年同大学助教。電気通信大学エンターテイメントと認知科学研究ステーション代表。情報処理学会ゲーム情報学研究会主査。コンピュータ囲碁フォーラム理事。将棋、囲碁など思考ゲームを題材とした人間の思考過程を調べる認知科学的研究に従事。著書には、「先を読む頭脳」「一人称研究のすすめ」など。
10:25-10:50 講演(3) サッカーにおける戦術モデリングとシミュレーション
大森 隆司(玉川大学 工学部 教授)
【概要】 サッカーのような集団ゲームにおける選手の行動予測は難しいが、その中にも一定の規則性はあり、我々は選手の行動をある程度予測できる。サッカーには物理的な制約も多く、選手の行動決定を定量的にモデル化できれば、人工的な手段でもある程度の予測は可能であろう。これこそが、集団戦術のモデル化という意味で人工知能のチャレンジである。サッカーでは、ボール保持者のパス戦術の選択と他の味方の選手の判断が同じになった時に、戦術的な行動が実現される。一方の敵味方間では、相手チームの戦術選択を予測してそれを妨害する。その際、味方同士は練習にした基づく他者の意図推定が、敵同士はフェイントなどの騙しがあり、サッカーとは集団行動の視点では意図推定とだましのゲームである。講演では、我々が行ってきたパスコース選択における物理制約のモデル化と、ロボカップサッカーシミュレーションリーグにおける試合データからの、ありうるモデル化について議論する。
【略歴】 1980年東京大学工学研究科修了、1981年東京大学助手、1987年東京農工大学工学部講師を経て88年より同助教授、1998年同大学電気電子工学科教授、2000年北海道大学大学院工学研究科教授を経て、2006年4月より玉川大学教授、現在にいたる。工学博士。脳という神経機構に知的な行動が生まれる情報的なメカニズムに興味があり、認知科学、人工知能、発達、神経科学などの諸学問を足をつっこみながら、心に関わる脳の情報処理過程の解明と工学的な方法による実現を試みている。日本認知科学会会長、電子情報通信学会フェロー。
10:50-11:15 講演(4) ミニ四駆AI大会の意味するもの
西野 順二(電気通信大学 助教)
【概要】 AI技術の実応用プラットフォームとして高速なミニ四駆を作ることを目指す。ここで提案するのは「安価高有用システム」のパラダイムであり、特注品でない、ばらつきや強い制限のある安価な大量生産品の中でこそ、知的で高度な学習や適応アルゴリズムの本領が発揮され、より便利な日常生活を作るための必要技術であるという考えである。大会として勝つ為の参加者どうしの競争の中で「使える技術」が熟成されることを期待している。この大会の狙いとこれまでに開催された結果の報告、今後の野望について話し、パネル討論を行なう。
【略歴】 東京工業大学総合理工学研究科システム科学専攻退学。博士(工学)。福井大学情報工学科助手、同知能システム工学科、電気通信大学システム工学科を経て、同情報・通信工学専攻助教。2003年RoboCup世界大会シミュレーションリーグチェア、2005年IPA天才プログラマー。ファジィ理論、ゲーム情報学、知能ロボット、協調システム、ソフトコンピューティングに関する研究に従事。
11:15-12:00 パネル討論 ゲーム研究の人工知能への貢献とは
【概要】 各ゲーム研究において、人工知能研究へどのような寄与が考えられるか、そして互いに連携するとしたらどのようなことができるのかを議論する
司会:篠田 孝祐(電気通信大学 助教)
【略歴】 2004年北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 博士後期課程終了。博士(知識科学)、現在、電気通信大学 大学院情報システム学研究科 助教として、社会デザインのための自己組織化構造の研究に従事。マルチエージェントシステム、大規模社会シミュレーション、複雑系ネットワークに興味をもつ。人工知能学会、情報処理学会各会員。
パネリスト:伊藤 毅志(電気通信大学 情報理工学部 助教)
【略歴】 1994年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻修了(工学博士)。同年電気通信大学情報工学科助手。2007年同大学助教。電気通信大学エンターテイメントと認知科学研究ステーション代表。情報処理学会ゲーム情報学研究会主査。コンピュータ囲碁フォーラム理事。将棋、囲碁など思考ゲームを題材とした人間の思考過程を調べる認知科学的研究に従事。著書には、「先を読む頭脳」「一人称研究のすすめ」など。
パネリスト:大森 隆司(玉川大学 工学部 教授)
【略歴】 1980年東京大学工学研究科修了、1981年東京大学助手、1987年東京農工大学工学部講師を経て88年より同助教授、1998年同大学電気電子工学科教授、2000年北海道大学大学院工学研究科教授を経て、2006年4月より玉川大学教授、現在にいたる。工学博士。脳という神経機構に知的な行動が生まれる情報的なメカニズムに興味があり、認知科学、人工知能、発達、神経科学などの諸学問を足をつっこみながら、心に関わる脳の情報処理過程の解明と工学的な方法による実現を試みている。日本認知科学会会長、電子情報通信学会フェロー。
パネリスト:西野 順二(電気通信大学 助教)
【略歴】 東京工業大学総合理工学研究科システム科学専攻退学。博士(工学)。福井大学情報工学科助手、同知能システム工学科、電気通信大学システム工学科を経て、同情報・通信工学専攻助教。2003年RoboCup世界大会シミュレーションリーグチェア、2005年IPA天才プログラマー。ファジィ理論、ゲーム情報学、知能ロボット、協調システム、ソフトコンピューティングに関する研究に従事。
パネリスト:稲葉 通将(広島市立大学 大学院情報科学研究科 助教)
【略歴】 2012年名古屋大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了。同年広島市立大学大学院情報科学研究科助教、現在に至る。博士(情報科学)。対話システム、対話処理に関する研究に従事。
パネリスト:大澤 博隆(筑波大学 システム情報系知能機能工学域HAI研究室 助教)
【略歴】 2009年慶應義塾大学大学院開放環境科学専攻博士課程修了。同年、慶應義塾大学訪問研究員および米国マサチューセッツ工科大学AgeLab特別研究員。2010年日本学術振興会特別研究員PDに採択され、国立情報学研究所へ出向。同年から2011年にかけてJSTさきがけ専任研究員に従事。2011~13年まで慶應義塾大学理工学部情報工学科助教。2013年より現在まで、筑波大学システム情報系助教。ヒューマンエージェントインタラクション、人工知能の研究に従事。人工知能学会、情報処理学会、日本ロボット学会、IEEE、ACMなどの各会員。博士(工学)。