FIT2015第14回情報科学技術フォーラム 開催日:2015年9月15日(火)~17日(木) 会場:愛媛大学城北キャンパス
イベント企画
スマートデバイスやクラウドを用いた教育・学習インフラとその活用技術
9月15日(火) 9:30-12:00
第2イベント会場(講義棟1階グリーンホール)
【セッション概要】 近年のスマートフォンやタブレット型情報端末のようなスマートデバイスの普及は、教育・学習にも画期的な変化をもたらしています。スマートデバイスの多くが有するタッチパネル式の直感的なインタフェース操作は、教科書・参考書・ノートを含めた学習ツールの電子化への移行を促進しています。また、軽量で持ち運びが容易という特性は学習のユビキタス化を促し、さらには家での自習と学校での演習という反転授業をも可能としています。このようなスマートデバイスの多くはクラウドコンピューティングに基づいており、学習横断的な学習データの分析とその活用は、永続的で効果的な学習環境の実現に必要不可欠なものとなっています。特に、電子教科書分野では、IMS Global Learning Consortiumが策定を進めているラーニングアナリティクス標準規格 Caliperに基づいたデータ収集のセンサが取り込まれようとしており、LMSとの連携を行うためのLearning Tool Interoperabilityの機能拡張も進んでいます。本シンポジウムでは、スマートデバイスやクラウドコンピューティングを活用した教育・学習環境の可能性と技術的な課題を、最先端の応用事例の紹介を通じて議論します。
司会:上田 真由美(流通科学大学 経済学部 准教授)
【略歴】 2003年関西大学大学院総合情報学研究科博士後期課程修了。博士(情報学)。大阪大学、名古屋大学、京都大学を経て、2012年流通科学大学講師、2013年同准教授。情報推薦および教育学習支援システムの研究に従事。
9:30-10:30 講演 スマートデバイスを用いた教育・学習インフラとその活用技術
竹村 治雄(大阪大学 サイバーメディアセンター 教授)
【概要】 本講演では、ICTを用いた教育支援、学習支援の変遷をたどりながら、最近急速に普及しているスマートデバイスを用いた教育学習支援の可能性について議論する。具体的には、講演者が運用している大阪大学での教育支援システム、学習支援システムの具体的な導入事例や整備状況を紹介し、これらの基盤の上にスマートデバイスを導入するために検討解決すべき課題について整理する。また、実際にiPadを用いた授業支援の大阪大学での実施例も紹介する。さらに、講演者らが研究している複合現実感とウェアラブルデバイスを用いた教育・学習支援の可能性についても展望する。
【略歴】 1987年大阪大学大学大学院博士課程単位取得退学。(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)研究員、主任研究員を経て、1994年4月奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授。2001年4月大阪大学サイバーメディアセンター教授。2013年6月教育学習支援センター長(兼任)、現在に至る。主として3次元ユーザインタフェース、HCIの教育・研究に従事。教育用計算機システム、授業支援システムの運用に従事。
10:40-12:00 パネル討論 スマートデバイスの今後の発展と教育現場への導入のための課題
【概要】 スマートデバイスを用いた教育・学習インフラとその活用技術に関する現状を解説した基調講演の後に、スマートデバイスの今後の発展と教育現場への導入のための技術的課題を探るためにパネル討論を行います。5名のパネリストの方から、防災教育シーンでのスマートデバイスの利用例、電子教科書としての具体的な活用例、教員や学習者のモニタリングツールとしての応用例、eポートフォリオとしての利用例、教員養成系大学での実践例などの具体的かつ最先端な活用事例を報告して頂き、スマートデバイスやクラウドコンピューティングを活用した教育・学習環境の可能性と技術的な課題を議論します。
司会:松原 行宏(広島市立大学 大学院情報科学研究科 教授)
【略歴】 1987年広島大学工学部第II類卒業、1989年広島大学大学院工学研究科博士課程前期修了。1989年広島大学工学部助手、1998年香川大学工学部助教授を経て、2003年より広島市立大学情報科学部教授。博士(工学)。知識工学、知的教育システム、感性工学に関する研究に従事。1997年、2000-2001年ノッティンガム大学(英国)客員研究員。電子情報通信学会、教育システム情報学会、日本教育工学会、情報処理学会、人工知能学会、日本人間工学会、日本感性工学会各会員。
パネリスト Smart Deviceを学びのStart Deviceにするには?-防災教育システムの開発を通じて:光原 弘幸(徳島大学 大学院ソシオテクノサイエンス研究部 講師)
【概要】 スマートデバイスを活用した教育・学習支援システムは、「いつでもどこでも」だけでなく、さまざまなセンサや人工知能技術を用いるなどして「その時その場その人」に適した教育・学習を提供できる。また、近年、小中学校へのスマートデバイス導入が盛んであり、子どもたちがスマートデバイスで学ぶ土壌も整いつつある。このような状況において、子どもを含めた幅広いユーザが興味を持ってスムーズかつ継続的に利用できるシステムが求められる。講演者は、興味を持ってスムーズかつ継続的に学ぶことが比較的難しい防災を対象として、タブレット端末やセンサ内臓HMDを用いた防災教育システムを開発している。本講演では開発システムを紹介しながら、スマートデバイスを活用した教育・学習支援システムの理想像を考えてみる。
【略歴】 1998年近畿大学工学部卒。2000年同大学院工業技術研究科博士前期課程修了。2003年徳島大学大学院工学研究科博士後期課程修了。同年徳島大学工学部助手。現在、徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部講師。博士(工学)。EdutainmentやWeb-based Learningを含めた防災教育システムに関する研究開発に従事。
パネリスト 教育の情報化における電子教科書の役割:田村 恭久(上智大学 理工学部 教授)
【略歴】 1987年上智大学大学院博士前期課程修了。同年日立製作所システム開発研究所。1993年上智大学助手。1996年博士(工学)。現在同教授。専門分野は教育工学。eラーニング、電子教科書、協調学習支援、スキル学習支援などを研究。
ISO/IEC JTC1/SC36 (Learning Technology) e-Textbook Project co-editor、ICT Connect 21 技術標準化WG座長、学習分析学会理事長、日本eラーニング学会理事、JEPAフェロー。
パネリスト 大学授業における教員・受講生の行動の可視化と授業雰囲気の推測:村上 正行(京都外国語大学 マルチメディア教育研究センター 教授)
【略歴】 1997年京都大学総合人間学部卒、2002年京都大学大学院情報学研究科博士後期課程指導認定退学。2002年京都外国語大学外国語学部講師、2003年同大学マルチメディア教育研究センター講師、2007年准教授、2015年より現職。博士(情報学)。大学教育におけるICTを活用した教育、FDに関する研究に従事。電子情報通信学会、日本教育工学会、教育システム情報学会、人工知能学会、大学教育学会、AACEなど会員。
パネリスト 教育分野におけるeポートフォリオ活用の現状と課題:森本 康彦(東京学芸大学 情報処理センター 准教授)
【略歴】 1991年三菱電機株式会社・情報技術総合研究所にて基本ソフトウェアの開発に従事。1996年広島市立牛田中学校教諭(数学)、2004年千葉学芸高等学校教諭(情報)。その後、富士常葉大学准教授を経て、2009年東京学芸大学准教授(現在に至る)。2007年長岡技術科学大学大学院修了、博士(工学)。教育工学(特に、eポートフォリオ、eラーニング、ICT活用教育)を専門とする。
パネリスト 教員養成系大学でのCOPE実践:西端 律子(畿央大学 教育学部 教授)
【概要】  教員養成系大学において、Surface Proを貸与することにより、教育の情報化に対応できる教員の養成を目指している。2014年度の取り組み(当時の1年生500人にSurface Pro2貸与)全体を通し、学生の変化や情報プレイスメントテストの結果について報告する。また、2015年度の取り組み(新規に、1年生550人にSurface Pro3貸与)の一部も合わせて報告する。
【略歴】 大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了。大阪府立工業高等専門学校助手、講師、大阪大学人間科学部助手、人間科学研究科助教を経て、畿央大学教育学部准教授、教授。博士(人間科学)。日本情報科教育学会、情報コミュニケーション学会理事。教育の情報化、特に特別支援教育の情報化に関する研究に従事。学生へのSurface Pro貸与をきっかけにMS Technologyにも力を入れ始めている。