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FIT2014 第13回情報科学技術フォーラム 開催日:2014年9月3日(水)~5日(金) 会場:筑波大学筑波キャンパス FIT2014 第13回情報科学技術フォーラム HOME 一般社団法人電子情報通信学会 情報・システムソサイエティ 一般社団法人電子情報通信学会 ヒューマンコミュニケーショングループ 一般社団法人情報処理学会 筑波大学
イベント企画
自然計算研究の最前線とその将来
9月4日(木) 9:30-12:00
第2イベント会場(3A棟4F 3A402)
【セッション概要】 自然計算の研究には、進化計算、ニューラルネットワーク、分子コンピューティング、量子計算など、さまざまな研究がある。Springer 社の国際学術雑誌 Natural Computing には、「自然計算とは、自然の中で観察される計算過程と、自然に触発された人為的計算を指している。」との説明があるが、これらのさまざまな研究を統一的な視点で議論するには十分ではない。本企画では、自然計算の研究を以下の4つのステップから成り立っていると考える。
(1) 自然現象を計算の観点から観察する、
(2) その観察に基づいて計算モデルを構築する、
(3) 計算モデルを分析し普遍化する、
(4) 計算モデルを自然現象で再実装することにより計算の可能性を探求する。
自然計算の分野で活躍する研究者を集め、各研究分野が過去・現在において4つのステップのどこに位置づけされ、将来どこを目指しているのか、などを一連の講演を通して議論する。そして、自然計算の目指すべき将来について議論する。
司会:小林 聡(電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報通信工学専攻 教授)
【略歴】 1993年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1993 年より電気通信大学情報工学科助手。その後、東京電機大学理工学部助教授等を経て、現在、電気通信大学大学院情報理工学研究科教授。博士(工学)。理論計算機科学、分子コンピューティング、分子ロボティクスの研究に従事。
9:30-9:55 講演-1 自然計算とは
【概要】 「自然計算」とは"コンピューティングを基軸とし、自然との関わりから生まれた問題解決のための手法一般"をいう。自然計算の研究目的には以下のテーマが含まれる。すなわち、
(1) 自然現象に触発された情報処理的なメカニズムを研究し、個々の具体的な問題を解決する新しい技法(アルゴリズム)を開発すると共に、新しい計算パラダイムに関して理論的な観点(計算可能性や計算量)も含めて探究する。
(2) 人工生命系の設計やコンピュータシミュレーションなどによる自然現象の計算的・構成的な研究を通して、生命現象など自然系への理解を深める。
(3) 自然現象を利用することにより、ナノスケール領域における工学的に有用で新規な応用領域を探求する。
自然計算は自然科学の全域をカバーするのみならず、社会・人文科学の一部にも関わりをもつ新しい学問領域を形成しつつある。本講演では、このような広範な研究分野の一端を概説し、この新しい計算の世界への誘いとしたい。
横森 貴(早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授)
【略歴】 1974年東京大学理学部数学科卒業。1979年同大学理学系大学院博士課程修了(理学博士)。1989年電気通信大学情報工学科助教授。1998年早稲田大学教育学部教授。2004年早稲田大学教育・総合科学学術院教授。形式言語理論、計算論的学習理論、自然計算理論の研究に従事。情報処理学会、ACM、EATCS、JSBI、LA各会員。
萩谷 昌己(東京大学 情報理工学系研究科 教授)
【略歴】 1980年東京大学理学部情報科学科卒業。1982年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了。1988年京都大学理学博士。1992年東京大学理学部情報科学科助教授。現在、東京大学大学院情報理工学系研究科教授(理学部情報科学科兼担)。論理学的な側面を中心に、広く計算モデルに関する研究を行っている。最近の研究は、ソフトウェア検証、分子コンピューティング、分子ロボティクスなど。
9:55-10:20 講演-2 合成生物学
【概要】 およそモノづくりは、概念設計から実現に至るまで系統的なアプローチをとるべきである。分子や細胞のように手に取って調べられない対象に対しては、各段階での分析・設計、試行からのフィードバックに、適切な数理モデリングと、パラメータ最適化、シミュレーション、システム構造解析等の計算機の利用が欠かせない。合成生物学の先駆的研究では、非線形システム解析の常套手段が援用されてきた。そこでは十分多くの分子が関与し、均一系の試験管内のような単純化された状況が想定されている。細胞内では、組換えられたネットワーク自体の複雑さに加えて、生体分子の局在化、少数分子のゆらぎの影響や、増殖のような想定外の事象をも取り扱う必要がある。合成生物学の対象は理想化・単純化された状況から大規模・複雑・不均一なものにシフトしつつある。それらを考慮した、新たなマルチフィジックス・マルチレイヤーモデルによる機能解析について紹介する。
山村 雅幸(東京工業大学 大学院総合理工学研究科 教授)
【略歴】 1989年3月東京工業大学大学院総合理工学研究科システム科学専攻博士後期課程修了、1989年4月東京工業大学大学院総合理工学研究科助手、1996年5月同助教授、2004年1月同教授、現在に至る。
木賀 大介(東京工業大学 大学院総合理工学研究科 准教授)
【略歴】 1999年東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻単位取得退学、同大博士(理学)。各所でのポスドク、東京大学大学院総合文化研究科での助手を経て、2005年より東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻助教授・准教授。2009-2012年JSTさきがけ「生命現象の革新モデルと展開」領域研究者を兼任。2012年より東京工業大地球生命研究所兼務。2006年より合成生物学の国際学生コンテスト東工大チームの監督。
10:20-10:45 講演-3 セル計算とナノ計算
【概要】 近年、生体内細胞やタンパク質、DNA などの構造や動作メカニズム解明に関する研究やその工学応用に関する研究が展開されている。ナノメートル~分子規模の大きさの素子を利用して何らかの所望の動作を行わせるためには、これらの素子を制御する同程度の規模の情報処理機構(ナノコンピュータ)を実現することが重要となる。本講演では、このような情報処理機構を実現する方法として離散計算モデルの一つである非同期セルオートマトンに基づくモデルを概説する。また、現実の分子系から実現しうるセルオートマトンモデルとその情報処理能力について紹介する。さらに、分子規模の素子構成においてブラウン運動のような熱ゆらぎを積極的に計算に利用するブラウン回路およびそのセルオートマトンによる実装について述べる。
礒川 悌次郎(兵庫県立大学 大学院工学研究科電気系工学専攻 准教授)
【略歴】 2001年姫路工業大学工学部情報工学科助手、2004年兵庫県立大学大学院工学研究科助手、2006年より同准教授。博士(工学)。非同期セルオートマトン、超複素数に基づくニューラルネットワークなどに関する研究に従事。IEEE、SICE、IEICE、ISCIE各会員。
Ferdinand Peper(情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター 主任研究員)
【略歴】 1961年生れ、オランダ出身。兵庫県在住。1985年、デルフト工科大学大学院数学研究科理論情報専攻修士課程修了、1989年、デルフト工科大学大学院情報研究科理論コンピュータサイエンス専攻博士課程修了。1990-1992年、郵政省通信総合研究所で科学技術庁のポスドックフェロー、1993-現在、総務省情報通信研究機構で現在研究マネージャ。1999年-現在、兵庫県立大学大学院工学研究科で客員教授、2011年-現在、大阪大学大学院情報学研究科で招へい教授、2013年-現在、神戸大学大学院保健学研究科客員教授。
10:45-11:10 講演-4 細胞膜計算
西田 泰伸(富山県立大学 准教授)
【概要】 膜計算、あるいは、Pシステムと呼ばれる新しい計算モデルについて紹介する。膜計算の基礎概念・諸定義を述べた後、計算能力と計算の複雑さについて主要な結果を照会する。後半は膜計算の考え方を組み合わせ最適化問題に応用した、膜アルゴリズムに関して、講演者自身の結果を照会する。
【略歴】 1978年3月京都大学理学部卒業、1983年3月京都大学大学院理学研究科生物物理学専攻終了・京都大学理学博士。1983年4月富士通(株)国際情報社会科学研究所研究員。1988年9月中京大学教養部講師、1990年4月中京大学情報科学部講師。1994年4月富山県立大学工学部助教授
11:10-11:35 講演-5 量子力学から量子計算へ
【概要】 現代では、ミクロな物理現象は量子力学によって説明が付くとされている。古典力学では対象としていない量子的な物理現象を利用することで、通常の計算機とは異なるコンセプトの計算機を考えることが可能となる。この講演では、量子チューリング機械、量子回路、測定ベース計算、量子断熱計算など複数の量子計算機モデルを紹介する。また、計算機以外の観点から広く計算を捉えた場合でも、量子的な物理現象を利用した興味深い計算モデルが存在する。ここでは、特に量子の非局所性や複製不可能性の利点について簡単に紹介する。
角谷 良彦(東京大学 助教)
【略歴】 2003年、京都大学大学院理学研究科(数学・数理解析専攻)にて博士課程を修了、学位を取得。日本学術振興会特別研究員PDを経て、2004年から東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻で助手(2007年からは助教)を務める。
本多 健太郎(東京大学 博士課程学生)
【略歴】 2011年 東京大学理学部情報科学科卒業。2013年 同大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了。同年より同博士課程に在学中。2014年より日本学術振興会特別研究員DC。
11:35-12:00 講演-6 自然計算の将来
【概要】 自然計算の研究を、その研究の進行段階の観点から整理すると、次の4つのステップから成り立っていると考えられる。
(1) 自然現象を計算の観点から観察する
(2) その観察に基づいて計算モデルを構築する
(3) 計算モデルを分析し普遍化する
(4) 計算モデルを自然現象で再実装することにより計算の可能性を探求する
本講演では、自然計算の各分野が過去・現在において4つのステップのどこに位置づけされ、将来どこを目指しているのかを議論する。そして、自然計算の研究分野が今後進むべき方向性について議論する。
小林 聡(電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報通信工学専攻 教授)
【略歴】 1993年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1993 年より電気通信大学情報工学科助手。その後、東京電機大学理工学部助教授等を経て、現在、電気通信大学大学院情報理工学研究科教授。博士(工学)。理論計算機科学、分子コンピューティング、分子ロボティクスの研究に従事。
横森 貴(早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授)
【略歴】 1974年東京大学理学部数学科卒業。1979年同大学理学系大学院博士課程修了(理学博士)。1989年電気通信大学情報工学科助教授。1998年早稲田大学教育学部教授。2004年早稲田大学教育・総合科学学術院教授。形式言語理論、計算論的学習理論、自然計算理論の研究に従事。情報処理学会、ACM、EATCS、JSBI、LA各会員。
萩谷 昌己(東京大学 情報理工学系研究科 教授)
【略歴】 1980年東京大学理学部情報科学科卒業。1982年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了。1988年京都大学理学博士。1992年東京大学理学部情報科学科助教授。現在、東京大学大学院情報理工学系研究科教授(理学部情報科学科兼担)。論理学的な側面を中心に、広く計算モデルに関する研究を行っている。最近の研究は、ソフトウェア検証、分子コンピューティング、分子ロボティクスなど。