抄録

○大森敏明（神戸大）

近年の計測技術の発展により，単一神経細胞や局所回路に対し空間的な広がりを持ったイメージング計測が可能となっている．しかしながら，イメージングデータでは，観測可能な変数の個数や解像度は限定されており，雑音が重畳されているため，イメージングデータの背後にある神経システムの非線形ダイナミクスを抽出する方法の確立が望まれている．

本研究では，イメージングデータからの神経細胞の時空間ダイナミクスの推定を実現するための統計的手法を提案する．分布定数型の非線形回路として神経細胞を数理モデル化した上で一般状態空間モデルを構成し，計算統計学の手法を用いて統計アルゴリズムを構成することにより，神経細胞の非線形ダイナミクスの抽出を実現する．提案法を用いることにより，イメージングデータにおいて，部分的にのみ観測される雑音が重畳されたデータからの非線形ダイナミクス抽出が実現されることを示す．