イベント企画
ビジネスで生きる機械学習技術
9月4日(火) 15:30-17:30
第2イベント会場(西館 B1F マルチメディアホール)
【セッション概要】 近年ビッグデータ革命と言われるように、Google、Amazon、Apple、Facebook、Twitterなどの企業では、機械学習・データマイニング技術を用いて、大規模なデータ解析を行うことにより大きな成果を挙げている。それに伴って、国内の企業でも、大学・研究機関との協働による、業務改善の機運が高まっているが、アカデミックの研究者にとって、実際に現場で力を発揮するのは、様々な要因から簡単なことではない。本企画では、実際に企業とのプロジェクトを推進しておられる講演者をお招きして、現場で機械学習技術を応用する際の、重要なポイントや、苦労話などを共有し、産官学共同に興味のある研究者・学生の皆さんの参考になる議論を行いたい。
司会: 津田 宏治(産業技術総合研究所 主任研究員)
【略歴】 1994年京都大学工学部情報工学科卒業。1996年同大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了。1998年同博士課程修了、電子技術総合研究所入所。2000年独GMD FIRST客員研究員。2003-2004独Max Planck研究所研究員。2006-2008同チームリーダー。博士(工学)。現在、産業技術総合研究所生命情報工学研究センター機械学習研究班長、主任研究員。JST-ERATO湊離散構造処理系プロジェクトサブリーダー兼任。
15:30-16:10 講演-1 テキストマイニングによる株価予測とファンドビジネスの展開
羽室 行信(関西学院大学経営戦略研究科 准教授)
【講演概要】 近年、web上で入手可能な各種テキストデータ(ニュース記事、ブログ、Twitterなど)を解析することで株価を予測しようとする動きが活発化しており、実際にファンドの運用にまで至っている例もある。
このような背景のなか、我々はこれまでに、新聞記事やニュース記事をテキストマイニングすることで市場センチメント(市場心理)を測定し、株価変動との関係を明らかにするための研究を進めてきた。
本発表では、以下に示す研究トピックスおよびビジネス応用について解説する。
 ・ニュース記事によって測定した市場センチメントと株価の関係
 ・証券アナリストによる格付け変更の発表が株価に与える影響について
 ・研究結果に基づくトレーディングシミュレーション
 ・コンピュータサイエンスの成果を産業に還元するファンドビジネスへの取り組み
【略歴】 1994年神戸商科大学経営学研究科博士後期課程単位取得満期退学、修士(経営学)、関西学院大学経営戦略研究科准教授、(株) Magne-Max Capital Management、COO、Erato湊離散構造処理系プロジェクト研究推進委員。データマイニングソフトウェアMUSASHI、KGMODの開発に携わる。2003年人工知能学会研究会優秀賞、2005年および2008年に日本OR学会事例研究賞など受賞多数。
16:10-16:50 講演-2 行動に注目したビッグデータからのモデル化とサービス工学
本村 陽一(産業技術総合研究所サービス工学研究センター 副研究センター長)
【講演概要】 ビッグデータの蓄積、分析技術が確立されるにしたがって、その活用に関心が移りつつあるが、人の行動や社会の活動から生成されるビジネス領域のデータには人の意志決定が介在するために不確実性が高く、大規模データの活用のためには独特の課題がある。本講演では人の意志決定が介在するサービスや生活の領域における大規模データの活用技術の事例を通して、潜在意味解析やベイジアンネットワークなどの機械学習技術の適用方法と、サービス現場で大量に生成されているID-POSデータやサービス現場に埋め込まれたインタラクティブシステムなどのデータ活用事例やサービス工学研究の現状と展望について議論する。
【略歴】 1993年通産省工業技術院電子技術総合研究所に入所。2003年同所デジタルヒューマン研究センター主任研究員、2008年サービス工学研究センター大規模データモデリング研究チーム長。2011年サービス工学研究センター副研究センター長兼務、博士(工学)。2005年〜2010年モデライズ(株)取締役CTO兼務。2010年〜統計数理研究所客員教授、東工大連携准教授兼務。ベイジアンネット、サービス工学などの研究に従事
16:50-17:30 講演-3 異常検知技術のビジネス応用最前線
比戸 将平(株式会社Preferred Infrastructure リサーチャー)
【講演概要】 世の中で得られる知見の多くは、何らかの観測対象の時間変化や、観測対象グループにおける珍しい個体の出現を捉えたものと考えることができます。特に急速な変化や異常な個体の検出するための異常検知技術は、ビジネスにおけるデータ収集・蓄積インフラの浸透とともに応用が広がっています。従来は、蓄積されたデータを目で見て確認する、閾値を設けてアラートを出す、あるいは経験に基づいて異常パターンをルール化する、などのアプローチが主流でした。しかしながら、収集できるデータの変数と量が飛躍的に増大する中で、比較的単純かつ過去に起きた異常のみ扱えるルールベース手法では不十分である場合が増えてきました。そこで最近研究と応用が進んでいるのが統計ベースと言われる最新のデータ解析技術を使ったアプローチであり、機械学習が中心的な役割を果たしています。その強みは未知の異常も扱えること、大量のデータを効率的に扱えること、可視化では人間が捉えられない複雑な隠れた異常も検出可能であることなどがあります。本講演では、実世界の異常検知問題を分類したあと、それぞれにおいて最近用いられている代表的な機械学習手法を説明し、実際のビジネスケースを紹介します。
【略歴】 京都大学大学院情報学研究科修士課程修了。2006年4月、日本アイ・ビー・エム株式会社入社。東京基礎研究所にてデータマイニング、機械学習の研究開発に従事。2012年4月より現職。