イベント企画
情報学研究における質的アプローチの可能性を探る
9月5日(水) 15:30-17:30
第3イベント会場(東館 1F E105)
【セッション概要】 情報処理学会「情報システムと社会環境」研究会は、情報システムの有効性評価の手法について、分科会を設けてガイドラインの策定を目指してきました。その中で議論になったのは、情報システムの有効性は、それが存在するコンテクスト(状況、人や組織、歴史、風土、成熟)に強く依存するというものでした。このことは,情報システムを「個別一回性の現象」ととらえることを意味します。個別一回性の現象をどのようにとらえ、解釈するかについては、すでに社会学や看護学、そして最近では心理学、政策科学が扱うようになっています。これらは、一括して「質的研究」あるいは「質的アプローチ」と呼ばれています。本セッションでは、質的アプローチで先行している分野での具体的な研究事例をお聞きして、情報学および情報システム学における展開の可能性を探りたいと思います。
司会: 児玉 公信(情報システム総研 取締役副社長)
【略歴】 都立大学人文学部(心理学)卒業。石油元売りの情報システム部、製鉄業の情報子会社などを経て現職。企業情報システムの基幹部分の再構築のためのモデリング、アーキテクティングを提供。技術士(情報工学部門)、博士(情報学)。はこだて未来大学客員教授。情報処理学会、経営情報学会、日本心理学会、日本人間工学会、ACM各会員。
15:30-15:40 趣旨説明
15:40-16:10 講演-1 アクションリサーチの魅力と責任
矢守 克也(京都大学防災研究所 教授)
【講演概要】 アクションリサーチとは「実践的研究」と訳されて、たとえばシミュレーションや質問紙調査といった個別の研究方法と並置されていることもあります。しかし、実際には、アクションリサーチとは、研究(者)と世の中(現場やフィールド)との出会い方、あるいは、両者の関係のあり方の一種ととらえる方がベターです。多くの場合、アクションリサーチは、単発の研究活動としては完結しません。長期にわたって、さまざまな研究方法を使って、また質・量双方のデータを用いながら、現場の「ベターメント」のために(何が「ベターメント」なのかという問いを含めて)研究者と多様な現場関係者が共同実践するというスタイルをとります。このプレゼンでは、防災・減災の領域で、私自身が手がけているアクションリーチについて、いくつか具体例を紹介することを通して、上記のことを皆さまにお伝えしたいと思います。ご紹介する予定の事例は以下の通りで、括弧の中は私が関わってきた年数です。被災者の語り部団体を舞台とする事例(約15年)、「クロスロード」と呼ばれる防災ゲームに関する事例(約10年)、高知県の小さな海岸沿いの集落(小学校)での津波防災実践の事例(約5年)。
【略歴】 現在、京都大学防災研究所防災研究所・巨大災害研究センター・教授、同上・地震予知研究センター阿武山観測所・教授、京都大学大学院情報学研究科・教授、人と防災未来センター上級研究員、同震災資料研究主幹などを兼任。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程単位取得退学。博士(人間科学)。専門は、社会心理学、防災心理学。アクションリサーチの手法を生かして、「クロスロード」、「ぼうさいダック」などの防災教育ツールを開発。全国の小中学校で防災教育にも従事。
16:10-16:40 講演-2 構造構成主義からみた質的研究のエッセンス
西條 剛央(早稲田大学 専任講師)
【講演概要】 「構造構成主義からみた質的研究のエッセンス」について。
【略歴】 早稲田大学大学院商学研究科専任講師。「ふんばろう東日本支援プロジェクト」代表。1973年宮城県仙台市生まれ。早稲田大学大学院で博士号(人間科学)取得。専門は心理学と哲学。質的研究の一般評価システムに関する研究を推進。
16:50-17:30 パネル討論 情報システムの現場と質的研究の可能性
【討論概要】 複雑化、多様化している現在の情報システムは、もはや定量的効果だけでは評価できなくなっている。情報システムの有効性は、それが存在するコンテクストに強く依存するからである。このことは、情報システム研究における有効性評価にも多くの課題を投げかけることになった。この問題に取り組むために、「情報システムと社会環境」研究会では有効性評価分科会を立ち上げて、さまざまな切り口から議論を繰り返している。中でも、間接的な効果や組織構築、人の成長など、定量化できない「良さ(quality)」の評価を如何に効果的に取り入れるのかに関する話題が拡大し続けている。そこで本パネルでは、質的アプローチで先行している分野での具体的な研究事例や課題を参考にして、情報学および情報システム学における質的アプローチの可能性を追求したい。そして、会場への参加者と共に、質的研究の課題とその解決の糸口を探ることとしたい。
司会: 神沼 靖子(情報処理学会フェロー)
【略歴】 1961年 日本鋼管KKに始まり、横浜国大、埼玉大、帝京技科大を経て、前橋工科大教授を2003年3月に定年退職。現在、情報システム教育のアドバイザ、企業における人材育成、執筆などに携わる。学術博士。情報システム学、情報システムの質的評価の研究などに興味をもつ。情報処理学会フェロー。情報処理教育委員会、情報システム教育委員会等のメンバー。
パネリスト: 矢守 克也(京都大学防災研究所 教授)
【略歴】 現在、京都大学防災研究所防災研究所・巨大災害研究センター・教授、同上・地震予知研究センター阿武山観測所・教授、京都大学大学院情報学研究科・教授、人と防災未来センター上級研究員、同震災資料研究主幹などを兼任。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程単位取得退学。博士(人間科学)。専門は、社会心理学、防災心理学。アクションリサーチの手法を生かして、「クロスロード」、「ぼうさいダック」などの防災教育ツールを開発。全国の小中学校で防災教育にも従事。
パネリスト: 西條 剛央(早稲田大学 専任講師)
【略歴】 早稲田大学大学院商学研究科専任講師。「ふんばろう東日本支援プロジェクト」代表。1973年宮城県仙台市生まれ。早稲田大学大学院で博士号(人間科学)取得。専門は心理学と哲学。質的研究の一般評価システムに関する研究を推進。
パネリスト: 新目 真紀(青山学院大学ヒューマン・イノベーション研究センター 研究員)
【略歴】 青山学院大学ヒューマン・イノベーション研究センター客員研究員、2007年より青山学院大学総合研究所に在籍し2011年から現職、大手電気メーカ、外資系のHRMシステム会社への勤務を経て現在に至る。2006年早稲田大学大学院国際情報通信研究科修士課程修了。日本教育工学会、情報処理学会、ヒューマンインタフェース学会会員。
パネリスト: 矢島 彩子(富士通株式会社スマートシティ推進本部 研究員)
【略歴】 1996年岩手大学大学院人文社会科学研究科修了、2001年聖心女子大学文学研究科博士後期課程単位取得退学、同年(株)富士通研究所入社。主に、情報提示のユーザビリティの研究を行いながら、エスノグラフィーをベースにした業務実態を把握するフィールドワーク手法(主に聴く手法)開発に従事した後、2006年10月より、富士通(株)へ異動、現在に至る。お客様のフィールドイノベーションに自ら寄り添ってきたが、2009年10月より、顧客に近いフィールド・イノベータの支援部隊に身をおき、彼らをフィールド調査・分析を後方から支援。2012年4月より、スマートシティ推進本部へ異動。