イベント企画
スパース信号処理の最前線
9月6日(木) 13:00-16:00
第2イベント会場(西館 B1F マルチメディアホール)
【セッション概要】 信号の疎表現に注目したアプローチであるスパース信号処理が、雑音除去、画像復元、圧縮センシング、ブラインド信号源分離といった様々な信号処理の分野で、注目を集めている。疎表現は信号のモデル化の一形態であり、近似理論、調和解析、統計的機械学習といった応用数学分野との関連性も深い。このようにスパース信号処理は、応用数学と信号処理の交差点に位置しており、そのポテンシャルの高さから、信号処理分野にパラダイムシフトを起こす可能性を秘めた技術であると言える。本企画では、スパース信号処理に関する最新の技術動向を第一線の研究者より講演頂き、FIT参加者への情報提供の場としたい。
前半司会: 坂東 幸浩(NTT-AT)
【略歴】 NTTアドバンステクノロジ株式会社 担当課長。2000年から2002年、日本学術振興会特別研究員。2002年、九州大学大学院システム情報科学研究科 博士後期課程修了。同年、日本電信電話株式会社 入社。入社後は、NTTサイバースペース研究所にて、次世代映像フォーマットのための高能率符号化アルゴリズム研究等に従事。2011年より、現職。2008年FIT船井ベストペーパー賞、2012年情報処理学会 長尾真記念特別賞等受賞。博士(工学)。
13:00-13:45 講演-1 圧縮センシングの基礎
和田山 正(名古屋工業大学大学院工学研究科 教授)
【講演概要】 近年、圧縮センシング技術は、信号処理・機械学習・情報理論など幅広い分野で注目されている。CandesとTaoによるスパース信号のランダム線形観測に基づくL1再現可能性に関する理論的研究の登場が圧縮センシングの研究の広がりのひとつの大きな契機となった。最近では、L1再現と異なる様々な種類の再現アルゴリズムが登場し、その理論的性能解析も進みつつある。本講演では、圧縮センシングの問題設定、ならびに研究の発展を概観する。特に圧縮センシングの数理的側面を重視する。
【略歴】 1991年 京都工芸繊維大学電子工学科卒。1993年 京都工芸繊維大学大学院博士前期課程修了。1997年 京都工芸繊維大学 博士(工学,論文提出)。1995年から2004年9月までまで岡山県立大学 情報工学部 助手。2004年10月より名古屋工業大学 大学院工学研究科 助教授。2007年4月より名古屋工業大学 大学院工学研究科 准教授。2010年4月より名古屋工業大学 大学院工学研究科 教授。2010年10月1日 (兼任) 統計数理研究所 客員教授。
13:45-14:30 講演-2 圧縮センシングのL1ノルム復元問題に関する理論
竹田 晃人(東京工業大学大学院総合理工学研究科 知能システム科学専攻 助教)
【講演概要】 圧縮センシングとは疎性を内包する原情報を少数観測から復元しようとする近年注目されているアイディアである。さて、疎な原情報の復元の為には拘束条件付のL1ノルム最小化問題を解けば良いことが知られるが、復元の為に最低限必要な観測数が幾種類かの解析により議論されている。講演ではそれらの観測数下限を見積もる方法について概観する。
【略歴】 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了・博士(理学)。現在東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻助教。専門は統計物理学とその情報科学分野への応用。

後半司会: 久保田 彰(中央大学理工学部電気電子情報通信工学科 准教授)
【略歴】 1997年、大分大学工学部電気電子工学科卒業。1999年、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。2002年、同大大学院博士課程修了。同年、日本学術振興会特別研究員。2003年、米国カーネギーメロン大学訪問研究員。2004年、神奈川大学ハイテクリサーチセンター研究員。2005年、東京工業大学大学院総合理工学研究科助手。2009年、中央大学理工学部助教。2011年、同准教授。
14:45-15:30 講演-3 連続信号のスパースサンプリング:標本数はどこまで減らせるか?
平林 晃(山口大学大学院医学系研究科応用分子生命科学系専攻 准教授)
【講演概要】 スパース性に着目した信号・画像処理の研究は比較的古くから行われていますが、近年の特徴の一つは、信号に含まれる本質的な情報のみを直接観測あるいは標本化しようとする取り組みが始められていることです。その代表例である圧縮センシングはスパースな高次元ベクトルを観測対象にしています。このベクトルが連続信号を標本化したものである場合、連続信号そのものにスパース性を導入すれば、高効率の圧縮標本化を実現できることがあります。本講演では、このような連続信号に対するスパース性の概念である「不確定率有限信号」を紹介し、このクラスの信号が「自由度の出現頻度(不確定率)」に非常に近い周波数で標本化・再構成されることを示します。そして、この研究の画像処理への応用事例を紹介し、今後の研究動向を展望します。
【略歴】 1995年東京工業大学大学院情報理工学研究科修士課程修了、1999年博士(工学)(東京工業大学)。1995年東京工業大学助手、2000年山口大学講師、2002年同助教授、現在同准教授。スパース標本化理論とその応用に関する研究を行う。2001年計測自動制御学会技術賞、2004年財団法人手島工業教育資金団発明賞。電子情報通信学会、計測自動制御学会、IEEE各会員。
15:30-16:00 講演-4 カラー画像疎表現とそのカラー画像復元への応用
齊藤 隆弘(神奈川大学工学部電気電子情報工学科 教授)
【講演概要】 近年、画像疎表現に基づく画像復元の研究が急速に進展し、画像復元の分野に新しい地平が開かれつつある。画像疎表現に基づく画像復元に関するこれまでの研究は主として応用数学の観点から行われてきたこともあり、多くの研究はモノクローム画像を対象としたものであった。本講演では、“カラー画像固有の性質を考慮したカラー画像疎表現とこれに基づくカラー画像復元”に関する講演者らのこれまでの研究成果を中心に紹介する。
【略歴】 1976年3月、東京大学工学部電気工学科卒業。1981年3月、東京大学工学研究科博士課程修了、工学博士。同年4月、神奈川大学工学部電気工学科、専任講師。1991年より、同大学・教授。現在、同大学・学長補佐、自己点検評価、FD等を担当。1981年、電子通信学会学術奨励賞、1989年電子情報通信学会業績賞、1990年同学会論文賞。2006年より、映像情報メディア学会・フェロー。画像符号化、信号・画像処理、画像エレクトロニクス等の研究に従事。