情報処理学会第74回全国大会 会期:2012年3月6日(火)~8日(木) 会場:名古屋工業大学 一般社団法人情報処理学会 第74回全国大会 会期:2012年3月6日(火)~8日(木) 会場:名古屋工業大学
次世代eラーニング研究シンポジウム

日時:3月7日(水)10:00-12:00
会場:第3イベント会場 (52・53号館 1F 5212)

【セッション概要】システム利用コストや可用性の向上がなされているクラウドコンピューティングが、教育の現場でも効果を発揮することが期待されている。また、クラウド上でのコンテンツの共有やスマートフォン、タブレットPCといった多様化する端末の安価なアプリケーションへの対応も進んでいる。さらにソーシャルネットワーキングという新しいコミュニケーションやコミュニティもひとつの情報基盤の一端を担いつつある。このような情報やアプリケーションの開放はeラーニングの利用領域や学習指導そのものの在り方までも変えていくのではないかという期待がある。本シンポジウムではクラウド化された遠隔学習環境がもたらす効果について、この分野に関心の深い方々を教育機関から2名、企業から1名の講師を招き議論を頂く。

司会:平澤 茂一 (サイバー大学 学長)
【略歴】1961年早稲田大学第一理工学部数学科卒業、1963年同学部電気通信学科卒業。同年三菱電機(株)入社、中央研究所所属。1975年工学博士(大阪大学)。1981年早稲田大学教授、理工学部工業経営学科(現経営システム工学科)所属。2009年早稲田大学名誉教授、同年サイバー大学教授。2011年サイバー大学学長、現在に至る。IEEEライフフェロー、電子情報通信学会フェロー。
10:00-10:40 講演-1 知的基盤としてのeラーニングの将来性
白井 克彦 (放送大学学園 理事長)
【講演概要】eラーニングは、その利便性から生涯学習としての開かれた学びの場を提供する有効な手段として位置づけられる。さらにブロードバンドの浸透とウェブの進化がマルチメディア技術の発達と相まって、いわゆる双方向学習もネット上で可能となりつつある。しかし、eラーニングで講義を行う教員にとっての最大の課題は、コンテンツの制作だけでなく、eラーニングによる教育効果という次元の異なる期待への対応である。eラーニングにおけるクラウド化のメリットは、単なるシステムコストの削減ではなく、評価の高い教育コンテンツの共有ではないだろうか。これまでの早稲田大学でのeラーニングの経験と放送大学での取り組みから、将来的なeラーニングの形態について考察する。
【略歴】1963年早稲田大学第一理工学部電気工学科卒業、1965年同学大学院修士課程を経て、同学第一理工学部助手、1968年専任講師、1970年助教授、1973年工学博士(早稲田大学)、1975年教授。 2002年~2010年早稲田大学第15代総長。2010年早稲田大学名誉教授。2011年放送大学学園理事長、現在に至る。この間、2002年人工知能学会功績賞受賞、2005年 第56回日本放送協会放送文化賞を受賞、イタリア共和国功労勲章グランデ・ウッフィチャーレ賞。2005年~2007年財団法人 大学基準協会会長、2009年~2011年社団法人日本私立大学連盟会長。専門は知能情報学。2001年電子情報通信学会フェロー。
 
10:40-11:20 講演-2 クラウドとモバイルコンピューティングがもたらすeラーニングの進化と可能性
川原 洋 (サイバー大学 IT総合学部 学部長)
【講演概要】2007年春に開校し、全ての授業と試験をオンライン上で実施するサイバー大学の学習環境は基本的にWebと特定インターネットブラウザによって提供されてきた。通信制大学における在校生の大半が社会人を占めることから、就業者学生にとって卒業に至るまでの最大の要因は日々の学習時間そのものの確保である。また,eラーニングの学習効果の観点から、いわゆる高度マルチメディア教育の具体的な方法論として、学生による協調学習の効果が多く報告され、その基本理念を学習管理システム(LMS)の運用に取り入れている。クラウドコンピューティングは、システム運用コストの軽減や経営資産の有効利用という観点から、ハードからソフトに至るまで広く企業活動の中に受け入れられつつあるが、eラーニングにおいても、学習コンテンツの管理コストやアプリケーションの稼働コストを削減し、PCやスマートフォンを含む多様化する学習端末をLMSから独立させて利用することが容易となる。ことにモバイル端末の利用を促進することは、学生間の発言のトラフィックがソーシャルネットワーキングサービス(SNS)機能により増加し、協調学習効果の向上が期待される。本講演ではクラウド化された学習情報の可用性の向上やモバイル端末の利用による新たな学習効果について議論したい。
【略歴】1979年カリフォルニア州立大学(フンボルト校)理学部物理学科B.S.、1984年マサチューセッツ工科大学(MIT)工学部海洋工学科博士課程Sc.D.、1979年-1984年ウッズホール海洋学研究所海洋工学部助手、1984年シュルンベルジェ(株)検層技術部入社、1992年新日鉄ソリューションズ(株)(旧新日鉄情報通信システム(株)入社、1997年日本IBM(株)(旧ロータス)入社、2000年ソフトバンクBB(株)(旧ソフトバンク・ECホールディングス(株))入社。以来ソフトバンク・グループ内において様々な海外IT企業との合弁事業やネット関連事業会社のCTOを歴任。2007年サイバー大学IT総合学部教授就任、2011年同校IT総合学部長、および(株)日本サイバー教育研究所取締役就任、現在に至る。日本MITエンタープライズフォーラム理事。
 
11:20-12:00 講演-3 大学教育におけるeラーニングへの期待
國井 秀子 (リコーITソリューションズ株式会社 取締役会長執行役員)
【講演概要】eラーニングは、教育の効率化に資するツールとして期待が大きかったが、実態としては企業でも大学でも予想ほどの普及はしていない。その要因としては、コンテンツ作成の負荷もあるが、それ以上にeラーニングの特徴を活かした教育の手法や活用の仕方が構築されていないことによる。著者は、企業での利用者でもあり、開発・サービス提供者でもあるので、この両面の経験を通して今後のeラーニングのあり方を議論する。特に、TAなどの支援体制も不十分で実践教育が弱い日本の大学において、知識取得についてはeラーニングでの予習・復習を主体とし、対面の授業は実践的教育を中心にすることによって総合的な教育ができるのではないかと考える。
【略歴】1973年お茶の水女子大学理学研究科物理専攻修士、1983年テキサス大学コンピュータサイエンス学科Ph.D. 1982年(株)リコー入社、以来同社のソフトウェア分野の研究開発責任者。2008年リコーソフトウエア株式会社(現在 リコーITソリューションズ株式会社)会長就任、現在に至る。日本学術会議連携会員、文部科学省中央教育審議会委員、一般社団法人情報サービス産業協会副会長、日本データベース学会副会長。情報処理学会フェロー。電子情報通信学会フェロー。