情報処理学会第74回全国大会 会期:2012年3月6日(火)~8日(木) 会場:名古屋工業大学 一般社団法人情報処理学会 第74回全国大会 会期:2012年3月6日(火)~8日(木) 会場:名古屋工業大学
スパコンアプリ開発最前線

日時:3月8日(木)9:30-12:00
会場:第2イベント会場 (52・53号館 1F 5211)

【セッション概要】「京」をはじめとしてペタフロップス(1秒に10の15乗回の演算ができる)超のスパコンが次々と構築されているが、その上で走るアプリケーションの開発も着々と進められている。スパコン構築の目的はもちろんアプリケーションで結果を出すことであり、本企画の目的のひとつは、これらアプリケーションを実際に開発している研究者を招き、アプリケーションの背景、開発の現状、期待される成果などについて講演いただいて、スパコンの必要性・有用性について理解と議論を深めることにある。その一方で、これらアプリの開発には、数万~数十万コアを有効活用するアルゴリズムを考え、データ分散や通信アルゴリズムを明示的にプログラムしなければならない。近年では複雑な現象をシミュレーション・解析するためにプログラムサイズは数十万行に及ぶが、それを情報科学の専門教育を受けていないアプリ領域の研究者が書いている。スパコンアプリ開発をより生産的にするための情報科学技術について、またアプリと情報科学のコラボレーションの道筋について議論することが本企画のもうひとつの目的である。

司会:須田 礼仁 (東京大学 情報理工学系研究科 教授)
【略歴】1993年東京大学理学部修士課程修了。同年東京大学理学部助手。1997年名古屋大学工学研究科講師、2000年同助教授。2002年東京大学情報理工学系研究科助教授、2010年同教授。2010年現在、情報処理学会ハイパフォーマンスコンピューティング研究会主査、日本応用数理学会理事、自動チューニング研究会主査。高性能計算、数値アルゴリズム、自動チューニングの研究に従事。
9:30-10:30 講演-1 京速コンピュータ「京」について
横川 三津夫 (独立行政法人理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部 開発グループ グループディレクタ)
【講演概要】京速コンピュータ「京」は、文部科学省の「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」の一環として開発・整備が行われている世界トップレベルの演算性能を持つスーパーコンピュータであり、理化学研究所 と富士通株式会社が共同で開発を行っている。分散メモリ型並列計算機である「京」は、計算ノード約80000台以上からなる大規模な計算機システムであり、順調に整備が進んでいる。2011年6月には、LINPACKベンチマークによるスーパーコンピュータ性能によりTOP500ランキングの第一位と認定された。講演では、プロジェクト概要、システム概要、アプリケーションによる性能評価など最新情報について述べる。
【略歴】1960年生まれ。1984年筑波大学修士課程理工学研究科修了。日本原子力研究所入所。1997年地球シミュレータ研究開発センターにてハードウェア開発に参画。2002年産業技術総合研究所グリッド研究センター。2006年理化学研究所次世代スーパーコンピュータ開発実施本部に参画し、2009年から現職。「京」の開発、大規模シミュレーション手法の研究に従事。1994年コーネル大学コーネル理論センター客員研究員。SC2002ゴードン・ベル賞受賞。工博。
 

10:30-11:15 講演-2 実空間密度汎関数法プログラムの開発とナノ構造物質の電子状態計算

岩田 潤一 (東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻 特任講師)
【講演概要】比較的大規模な多電子系の問題を、量子力学の第一原理に基づいて計算するために発明された密度汎関数法(DFT=Density Functional Theory)は、現在物質科学の広範な分野で重要な理論的道具となっている。DFTによって現実的な物質の第一原理シミュレーションが可能となったが、その計算量はシステムサイズの3乗に比例し、ナノ物質とよばれる10,000〜100,000原子からなる超大規模系を扱うためには新たなプログラムの開発が必須であった。講演では我々が開発を行ってきた「実空間密度汎関数法プログラム-RSDFT-」と、それを用いたSiナノ物質の電子状態計算例をお話したい。
【略歴】2002年筑波大学大学院物理学研究科博士課程修了。産業技術総合研究所、筑波大学博士研究員を経て、2009年筑波大学助教。現在、東京大学工学系研究科HPCI戦略プログラム分野2(CMSI)特任講師。専門は計算物性物理学。
 
11:15-12:00 講演-3 スーパーコンピュータによる大規模遺伝子ネットワーク推定
玉田 嘉紀 (東京大学 情報理工学系研究科 助教)
【講演概要】遺伝子ネットワーク推定とは、細胞内の遺伝子の発現を観測したデータから遺伝子間の制御や依存関係を予測・推定する問題である。遺伝子ネットワーク推定には膨大な計算が必要であり、特にヒトの全遺伝子に対応した遺伝子ネットワークの推定にはスーパーコンピュータの力が欠かせない。しかし単純に並列化が可能な計算とそうでない計算があり、近年登場している数万プロセッサにおよぶ超並列マシンで高速に実行することは容易ではない。本講演では「京」アプリケーション研究開発プロジェクトである「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」で研究開発されている大規模遺伝子ネットワーク推定ソフトウェアについて紹介する。
【略歴】2005年京都大学大学院情報学研究科博士課程修了。博士(情報学)。統計数理研究所助教を経て2006年株式会社ジーエヌアイ入社。2008年より東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター特任助教。2011年より東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻助教。現在に至る。主にバイインフォマティクスにおける大規模並列計算に従事。