2D-1
クリプキの哲学的パラドクスに対する人工知能学習の視点からの考察
○安村 薫(松蔭大)
哲学の世界で著名な「クリプキのパラドクス」によると、人が言語の意味を学習し理解していると思っていてもそれが明日には覆るかもしれないという論証が可能で、それをもとに「言葉は意味を持ち得ない」という乱暴な結論が導かれる。このようなシンプルなパラドクスに対しては、シンプルな反駁がなされなければならないと考えるが、哲学の文献では数理科学者が思うようなシンプルな議論を見ない。しかし、ひとたびこのパラドクスを認めてしまえば、人工知能の学習などの研究はすべて存在意義が問われ、人間のすべての知識も権威を失うというばかげたジレンマに陥る。本公演では、この問題に対しての情報科学者から哲学者に向けてのすっきりとした解答を試みてみたい。