情報処理学会第73回全国大会 会期:2011年3月2日(水)~4日(金) 会場:東京工業大学大岡山キャンパス 情報処理学会 第73回全国大会ホームページ 社団法人情報処理学会 第73回全国大会 会期:2011年3月2日(水)~4日(金) 会場:東京工業大学 大岡山キャンパス
情報教育関連合同シンポジウム「情報処理学会員の皆様、間違っていませんか?」

日時:3月2日(水)14:30-17:00
会場:第3イベント会場 (西5号館講義棟 3F W531)

【セッション概要】情報や情報技術に対するフルエンシー(分かった上で使いこなす素養・技能)はこれからの情報社会に不可欠であり、各国の初等中等教育ではその育成に力を入れている。しかしわが国の小学校・中学校・高校における情報教育は多くの問題を抱えており、次世代においてまともに情報社会を発展させて行けるかに多くの懸念がある。しかし国民の大多数はこの問題に無関心であるし、情報技術の専門家である学会員の多くも同様だと思われる。本セッションでは初等中等教育委員会から、現在の情報教育に関する問題を解説し、これとは立場を異にする講演者からも問題提起を頂いた上で、情報処理学会や学会員が上に述べた危機的な状況を打破するためにどのように行動するべきかについて議論を試みる。

司会:辰己 丈夫 (東京農工大学 総合情報メディアセンター 准教授)
【略歴】1993年 早稲田大学大学院理工学研究科数学専攻修了。修士(理学)。廣瀬健の元で数理論理学や定理自動証明、計算量理論の証明論による分析などを研究。その後、早稲田大学情報科学研究教育センター助手、神戸大学発達科学部講師を経て、2003年から東京農工大学総合情報メディアセンター助教授(後に准教授)。現在は、情報教育、情報倫理、数学教育の情報化などに興味をもつ。2002年~2005年CE研究会幹事、2000年から現在まで初等中等教育委員会委員。2001年から現在まで一般情報教育委員会委員。2007年から情報処理教育委員会委員。他に、電子情報通信学会技術者倫理検討WG委員、技術と社会・倫理研究会専門委員。
14:30-14:50 講演-1 初等中等教育委員会からの問題提起
久野 靖 (筑波大学 ビジネス科学研究科 教授)
【講演概要】本講演では、わが国の初等中等教育における情報教育が抱える問題について紹介する。内部的な問題としては、情報教育を担当する教科・時間が、小学校(総合的な学習の時間)、中学校(技術・家庭)、高校(教科「情報」)とバラバラでつながりが無いことと、どの段階でも教える教員に情報や情報技術の専門性が無いことがある(小学校の教員は全教科を教える。中学校では技術の教員であるため情報技術を必ずしも専門としない。高校では教科新設時に数学や理科から移って来た教員が中心であり、大学で「情報」の免許を取得しても採用がない)。このため、WordやExcelの操作のみを教えるなどの授業が多く行われている。外部的な問題としては、学校の管理者や他教科教員の理解が得られず、学校によっては未履修(他の受験教科にこっそり振り替えるなど)が横行するなどがある。初等中等教育委員会では、このような状況を打破するためには、情報や情報技術のコンピュータサイエンス的側面に光を当て、プログラミングなどの体験を実際に持ってもらうことで「コンピュータとはどのようなものか」を知ること、「科学的・技術的な面白さ」に接してもらうことが必要だと考えている。そのような形で情報教育を変えて行くために、学会や学会員の皆様の協力をお願いしたいと考える。
【略歴】1984年 東京工業大学理工学研究科情報科学専攻博士後期課程単位取得退学。同年 同大学理学部情報科学科助手。1989年 筑波大学講師。同大学助教授を経て、現在、筑波大学ビジネス科学研究科教授。理学博士 (1986年 東京工業大学)。プログラミング言語、ユーザインタフェース、情報教育に興味を持つ。著書に「UNIXの環境設定」「入門JavaScript」「Rubyによる情報科学入門」「Javaによるプログラミング入門」などがある。
14:50-15:10 講演-2 人と社会と情報技術
児玉 公信 (株式会社情報システム総研 取締役副社長)
【講演概要】初等中等教育委員会は、プログラミングなどの体験を重要視しているが、初中等教育において、それが他の学習機会を押しのけてまで重要であるとは思えない。情報技術を学ぶのではなくて、学びの環境として自然に情報技術が使われるような授業設計こそが望ましい。かつてはそのような教育実践もされてきた。そもそも、初中等教育ではしっかりとした学習の土台(Batesonの学習II)を形成することが肝要だが、それができていない。これは情報処理教育の問題ではなく、初中等教育そのものの問題なのである。情報処理学会は、総合的学習の時間の中で、人や社会との交わりを通して自ずと情報技術に触れるような授業設計、教育実践を支援すべきである。
【略歴】1978年東京都立大学人文学部(心理学)卒業。石油元売り、大学受託研究員、システムインテグレータを経て2009年より現職。オブジェクト指向、モデル中心、アジャイル開発の基幹システム再構築プロジェクトを抱える。技術士(情報工学部門)、博士(情報学)。慶應義塾大学准教授(有期、非常勤)ほか5校で非常勤講師。情報処理学会技術士委員会委員長、情報システムと社会環境研究会幹事。著書に「UMLモデリングの本質」、「UMLモデリング入門」(ともに日経BP刊)、「実践!ファンクションポイント法」(JMAM刊)のほか、オブジェクト指向技術の訳書多数。
15:10-15:30 講演-3 1990年「はじめて出会うコンピュータ科学」と 2009年「デジタル社会はなぜ生きにくいか」から考えてみる初等中等情報教育
徳田 雄洋 (東京工業大学 大学院情報理工学研究科 教授)
【講演概要】「はじめて出会うコンピュータ科学」(岩波書店 全8巻)は操作中心でないコンピュータサイエンスの楽しい見方を伝える1990年の試みである。その当時もその後も、操作中心の情報教育は圧倒的に主流である。21世紀初頭に入り我々をとりまく環境はさらに急速に変化している。今日では、現実主義的な操作中心教育も、浮き世離れしたコンピュータサイエンスの楽しい見方も、個人の生存に必要な知識・技術として不十分なものとなった。現在の我々、現代の大人・子供にとって、2009年「デジタル社会はなぜ生きにくいか」(岩波新書)で試みたような「ビッグピクチャ」の理解が不可欠となっている。
【略歴】1977年東京工業大学大学院博士課程中退。理学博士。カーネギーメロン大学(1983‐84年)およびピサ大学(1999年)客員科学者。現在、東京工業大学大学院教授。ソフトウェア生成系、情報ネットワークの研究に従事。2004年Web工学国際会議最優秀論文賞(ICWE2004ミュンヘン開催)受賞、2009年文部科学大臣表彰科学技術賞受賞。著書に「言語と構文解析」「コンパイラの基礎」など。
15:30-17:00 パネル討論 わが国の次の時代を担う世代にどのような形で「情報」「情報技術」 を学んでもらうべきか? そのために情報処理学会は何をするべきか?
【討論概要】本セッションのテーマは、わが国の初等中等教育における情報教育がどのような問題を抱えているか、またそのような現状をどのように変えて行くことが望ましいのかについて共通の理解を形成した上で、それを実際にインプリメントしていく上で情報処理学会や個々の学会員がどのような形で具体的に貢献して行くべきかを考えることである。これまで、教育の問題に対しては「このような問題があるから改めて欲しい」という「要望・提言」がなされることが多かったが、それでは単に外野から意見を言っていると受け取られるだけである。今後はこれを改め、学会が自らの問題として取り組み、実際に教育に関与することを始めなければならないのではないか。そのような考え方に基づいて、学会や個々の学会員が具体的に何を実際に行うべきなのかについて、議論したい。
司会:辰己 丈夫 (東京農工大学 総合情報メディアセンター 准教授)
【略歴】1993年 早稲田大学大学院理工学研究科数学専攻修了。修士(理学)。廣瀬健の元で数理論理学や定理自動証明、計算量理論の証明論による分析などを研究。その後、早稲田大学情報科学研究教育センター助手、神戸大学発達科学部講師を経て、2003年から東京農工大学総合情報メディアセンター助教授(後に准教授)。現在は、情報教育、情報倫理、数学教育の情報化などに興味をもつ。2002年~2005年CE研究会幹事、2000年から現在まで初等中等教育委員会委員。2001年から現在まで一般情報教育委員会委員。2007年から情報処理教育委員会委員。他に、電子情報通信学会技術者倫理検討WG委員、技術と社会・倫理研究会専門委員。
パネリスト:久野 靖 (筑波大学 ビジネス科学研究科 教授)
【略歴】1984年 東京工業大学理工学研究科情報科学専攻博士後期課程単位取得退学。同年 同大学理学部情報科学科助手。1989年 筑波大学講師。同大学助教授を経て、現在、筑波大学ビジネス科学研究科教授。理学博士 (1986年 東京工業大学)。プログラミング言語、ユーザインタフェース、情報教育に興味を持つ。著書に「UNIXの環境設定」「入門JavaScript」「Rubyによる情報科学入門」「Javaによるプログラミング入門」などがある。
パネリスト:児玉 公信 (株式会社情報システム総研 取締役副社長)
【略歴】1978年東京都立大学人文学部(心理学)卒業。石油元売り、大学受託研究員、システムインテグレータを経て2009年より現職。オブジェクト指向、モデル中心、アジャイル開発の基幹システム再構築プロジェクトを抱える。技術士(情報工学部門)、博士(情報学)。慶應義塾大学准教授(有期、非常勤)ほか5校で非常勤講師。情報処理学会技術士委員会委員長、情報システムと社会環境研究会幹事。著書に「UMLモデリングの本質」、「UMLモデリング入門」(ともに日経BP刊)、「実践!ファンクションポイント法」(JMAM刊)のほか、オブジェクト指向技術の訳書多数。
パネリスト:徳田 雄洋 (東京工業大学 大学院情報理工学研究科 教授)
【略歴】1977年東京工業大学大学院博士課程中退。理学博士。カーネギーメロン大学(1983‐84年)およびピサ大学(1999年)客員科学者。現在、東京工業大学大学院教授。ソフトウェア生成系、情報ネットワークの研究に従事。2004年Web工学国際会議最優秀論文賞(ICWE2004ミュンヘン開催)受賞、2009年文部科学大臣表彰科学技術賞受賞。著書に「言語と構文解析」「コンパイラの基礎」など。
パネリスト:高岡 詠子 (上智大学 理工学部情報理工学科 准教授)
【略歴】慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻博士課程修了、博士(工学)。千歳科学技術大学総合光科学部准教授等を経て、現在上智大学理工学部情報理工学科准教授。他に、非常勤として国際基督教大学(2010年度より)、明治学院大学(2011年度より)で情報科教育法を担当。主著: 情報科学の基礎('07)、(財)放送大学教育振興会、eラーニングからブレンディッドラーニングへ(共立出版)、The Art of Computer Programming Volume 3 Sorting and Searching Second Edition 日本語版(アスキー)。プログラミング教育、情報教育、教材作成、教育支援システムなどに興味をもつ。2004年~2008年CE研究会運営委員、2008年~現在までCE研幹事、2010年から初等中等教育委員会、論文誌編集委員、学会誌編集委員。
パネリスト:神沼 靖子 (一般社団法人情報処理学会 フェロー)
【略歴】1961年 日本鋼管KKに始まり、横浜国大、埼玉大、帝京技科大を経て、前橋工科大教授を2003年3月に定年退職。現在、情報システム教育のアドバイザ、企業における人材育成研修講師、書籍の執筆などに携わる。学術博士。情報システム学、高度IT人材の育成に興味をもつ。当学会フェロー。情報処理教育委員会、情報システム教育委員会、アクレディテーション委員会、初等中等教育委員会等のメンバー。