情報処理学会第73回全国大会 会期:2011年3月2日(水)~4日(金) 会場:東京工業大学大岡山キャンパス 情報処理学会 第73回全国大会ホームページ 社団法人情報処理学会 第73回全国大会 会期:2011年3月2日(水)~4日(金) 会場:東京工業大学 大岡山キャンパス
グリーンなスパコンでグリーンな未来を創る

日時:3月2日(水)14:30-17:00
会場:第1イベント会場 (70周年記念講堂)

【セッション概要】スーパーコンピュータは、科学においては理論や実験で明らかにできない真理に迫り、技術においては高度なシミュレーションで設計や最適化を支えてきた。地球環境の危機が叫ばれる今日、スーパーコンピュータはグリーンな地球に貢献することが求められているし、またそのポテンシャルを有している。このポテンシャルのひとつの側面は、スーパーコンピュータの処理能力により地球環境の改善に資する科学技術のイノベーションに貢献することであり、もうひとつ側面は、スーパーコンピュータ自身が地球環境にやさしいグリーンなスパコンになるということである。本セッションでは、グリーンなスパコンでグリーンな未来の地球に貢献する研究において最先端で活躍されている方々を招き、スーパーコンピュータが創るグリーンな地球の未来像を探る。

司会:須田 礼仁 (東京大学 情報理工学系研究科 教授)
【略歴】1993年東京大学理学部修士課程修了。同年東京大学理学部助手。1997年名古屋大学工学研究科講師、2000年同助教授。2002年東京大学情報理工学系研究科助教授、2010年同教授。2010年現在、情報処理学会ハイパフォーマンスコンピューティング研究会主査、日本応用数理学会理事、自動チューニング研究会主査。高性能計算、数値アルゴリズム、自動チューニングの研究に従事。
14:30-14:50 講演-1 TSUBAME2.0とJST-CRESTにおけるUltra Low-Power HPC
松岡 聡 (東京工業大学 学術国際情報センター 教授)
【講演概要】東工大TSUBAME2.0はTSUBAME1.0の後継スーパーコンピュータであるが、僅か4年半の間に30倍の性能向上を果たしたにも関わらず、通常運用時の電力消費はTSUBAME1.0と同等であり、また世界の大規模スパコンの電力性能効率を競う「The Green 500」においても世界トップかそれに近い成績を残すことが期待されている。その背景にはJST-CREST研究領域「情報システムの超低消費電力化を目指した技術革新と統合化技術」における、松岡らの「ULP-HPC: 次世代テクノロジのモデル化・最適化による超低消費電力ハイパフォーマンスコンピューティング」の研究があり、成果達成はそれらによるところが大きく、本講演ではその内容を紹介する。
【略歴】博士(理学)(東京大学)。2001年より東京工業大学学術国際情報センター教授。専門は高性能システムソフトウェア・グリッド/クラウド・並列処理(GPU・省電力・高信頼)など。NAREGIプロジェクト(2003-2007)、科研特定領域・情報爆発(2006-2010)、JST-CREST Ultra Low Power HPC (2007-2011)のリーダー。2006年のスパコンTSUBAMEは我国トップを二年間維持・世界最大のGPUスパコンとなり、現在日本初のペタフロップススパコンのTSUBAME2.0を構築中。OOPSLA 2002,CCGrid2003/2006, Supercomputing 2009の論文委員長など、国際学会の要職を多々歴任。情報処理学会坂井記念賞(1999年)、学術振興会賞(2006年), ISC Award(2008年)など受賞。欧州ISC フェロー。
14:50-15:10 講演-2 グリーンスパコンを作る
牧野 淳一郎 (自然科学研究機構研究機構 国立天文台 天文シミュレーションプロジェクト 教授)
【講演概要】省電力スパコンの開発には色々なアプローチがあるが、ある意味究極の方法は、演算器以外の使わない回路がない、専用化したハードウェアを作ることである。しかし、LSI 開発の初期コスト、特に設計コストが莫大なものになったため、多数のアプリケーション向けにそれぞれ専用回路を開発するのは現実的ではなくなっている。次善策としては、ある程度のアプリケーションレンジに対応しつつも、プロセッサの演算器以外の部分、すなわちメモリインターフェース、キャッシュメモリ、制御回路といったものを可能な限り切り詰めることが考えられる。我々が開発した GRAPE-DR は、トランジスタ利用効率の向上を目指したものであるが、結果的に極めて高い電力性能比を実現することになった、90nm と2010 年では5年遅れ程度のプロセスを使いながら、プロセッサチップ自体の電力当り性能では 45nm プロセスで製造した汎用プロセッサの 10 倍前後を実現した。講演では、この方向のアプローチの将来を展望したい。
【略歴】1990年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了、東京大学教養学部助手を経て94年より同助教授、99年より同大学大学院理学系研究科助教授、2006年6月より国立天文台教授、現在にいたる。学術博士。
15:10-15:30 講演-3 電極触媒反応の第一原理シミュレーション
杉野 修 (東京大学 物性研究所 准教授)
【講演概要】燃料電池や太陽電池は次世代のエネルギー社会を支える要素技術であるが、その基礎過程を探っていくと、電子やイオンが電荷およびエネルギーを荷って、物質中をどのように伝達するかという物質科学の大問題に行き着く。しかし、最近になってシミュレーションを用いてその詳細を明らかにしようとする研究が各地で行われるようになった。本講演では電極触媒の作用によってどのように化学エネルギーが電気エネルギーに変換されるかを追った一連の計算について紹介し、ペタフロップスの時代にはどのような研究が可能になるのかについて紹介する予定である。
【略歴】1984年東大理学部物理学科卒、1989年同大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。同年NEC基礎研究所入社。第一原理計算の手法開発および電子材料応用等に従事。2002年東京大学物性研究所准教授。理学博士。2000年頃より燃料電池反応を始めとする界面電子移動反応を手掛け、現在に至る。
15:30-15:50 講演-4 二酸化炭素地下貯留のシミュレーション
山本 肇 (大成建設(株)技術センター 土木技術研究所 地盤・岩盤研究室 主任研究員)
【講演概要】二酸化炭素の回収・貯留(CCS)は、火力発電所や製鉄所などの工場からの排気ガスに含まれる二酸化炭素を分離・回収し、船舶やパイプラインなどを通じて輸送し、ボーリングを通じて地層中に貯留する技術であり、地球温暖化対策の切り札の一つと考えられている。この貯留事業の経済性や安全性を評価するアプローチとして、数値シミュレーション技術は非常に重要である。本講演では、地球シミュレータなどの超並列スパコンを用い、地中に貯留された超臨界CO2の挙動をシミュレートした事例を紹介する。
【略歴】1995年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(地球システム工学専攻)。博士(工学)。同年、大成建設株式会社入社。現在は、同社 技術センター 土木技術研究所 主任研究員。2003~04年 ローレンスバークレー国立研究所 客員研究員。地下水の流れの調査や数値解析の研究をベースに、建設工事中の周辺環境保全対策や放射性廃棄物の地層処分研究などに従事。土木学会、地盤工学会、アメリカ地球物理学会、各会員。
15:50-16:10 講演-5 次期IPCC報告書へ向けた温暖化予測実験 -気候変動対策への貢献を目指して-
河宮 未知生 ((独)海洋研究開発機構 地球環境変動領域 主任研究員)
【講演概要】2007年に発行されたIPCC第4次報告書では、近年の温暖化傾向が人為起源であることがほぼ断定され話題になった。次の報告書は2013年に発行予定であり、それに向けた温暖化予測実験が進行中である。次期報告書で大きなテーマになると見られているのは、30年程度の時間スケールを念頭に置いた近未来予測や、炭素循環などの生物・化学過程を考慮にいれた長期予測、集中豪雨や渇水などの極端現象予測であり、温暖化の緩和抑制策・適応策への貢献を強く意識したものとなっている。講演では最新の予測結果を紹介するとともに、温暖化予測に対して「地球シミュレータ」が果たす役割や、次世代計算機「京」が占める位置付けについても触れたい。
【略歴】専門:気候モデリング・海洋物理学。1969年愛知県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。東京大学気候システム研究センター研究員、独キール海洋学研究所研究員などを経て現職。その間、東京大学客員准教授、東北大学非常勤講師などを歴任。日本海洋学会幹事。博士(理学)。著書:「地球温暖化はどこまで解明されたか」(共著、丸善)、「計算力学シミュレーションハンドブック」(共著、丸善)、“Climate Sense” (共著、Tudor Rose)。
16:10-17:00 パネル討論 グリーンなスパコンでグリーンな未来を創る
【討論概要】巨艦巨砲主義的とも言われるスパコンであるが、2つの意味でグリーン化に貢献している。第1のグリーン化はスパコンそのものの省電力化、第2のグリーン化はスパコンを用いた省エネルギー化・グリーン化のための科学技術シミュレーション・大規模データ処理である。本パネルでは、「イマ」の最先端を走る方々によって、グリーンスパコンとグリーンシミュレーションの「ミライ」を明らかにする。すなわち、スパコンをはじめとする情報技術の地球環境への貢献の可能性、また、それを実現するために必要となる超省電力超高性能ハードウェア技術、高性能並列化ソフトウェア技術、数値アルゴリズムとシミュレーション手法、物理現象のモデリング手法、大規模データ処理によるシミュレーションモデルの精緻化およびシミュレーション結果の分析等の研究課題を論じ、スパコンによる地球のグリーン化への道筋を指し示す。
司会:佐藤 三久 (筑波大学 計算科学研究センター 教授)
【略歴】1959年生。1982年東京大学理学部情報科学科卒業。1986年同大学院理学系研究科博士課程中退。新技術事業団研究員を経て、1991年、通産省電子技術総合研究所入所。1996年、新情報処理開発機構並列分散システムパフォーマンス研究室 室長。2001年より、筑波大学 システム情報工学研究科 教授。2007年より、同大学計算科学研究センターセンタ長。理学博士。2009年度より、情報処理学会理事。並列処理アーキテクチャ、言語およびコンパイラ、計算機性能評価技術、グリッドコンピューティング等の研究に従事。
パネリスト:松岡 聡 (東京工業大学 学術国際情報センター 教授)
【略歴】博士(理学)(東京大学)。2001年より東京工業大学学術国際情報センター教授。専門は高性能システムソフトウェア・グリッド/クラウド・並列処理(GPU・省電力・高信頼)など。NAREGIプロジェクト(2003-2007)、科研特定領域・情報爆発(2006-2010)、JST-CREST Ultra Low Power HPC (2007-2011)のリーダー。2006年のスパコンTSUBAMEは我国トップを二年間維持・世界最大のGPUスパコンとなり、現在日本初のペタフロップススパコンのTSUBAME2.0を構築中。OOPSLA 2002,CCGrid2003/2006, Supercomputing 2009の論文委員長など、国際学会の要職を多々歴任。情報処理学会坂井記念賞(199年)、学術振興会賞(2006年), ISC Award(2008年)など受賞。欧州ISC フェロー。
パネリスト:牧野 淳一郎 (自然科学研究機構研究機構 国立天文台 天文シミュレーションプロジェクト 教授)
【略歴】1990年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了、東京大学教養学部助手を経て94年より同助教授、99年より同大学大学院理学系研究科助教授、2006年6月より国立天文台教授、現在にいたる。学術博士。
パネリスト:杉野 修 (東京大学 物性研究所 准教授)
【略歴】1984年東大理学部物理学科卒、1989年同大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。同年NEC基礎研究所入社。第一原理計算の手法開発および電子材料応用等に従事。2002年東京大学物性研究所准教授。理学博士。2000年頃より燃料電池反応を始めとする界面電子移動反応を手掛け、現在に至る。
パネリスト:山本 肇 (大成建設(株)技術センター 土木技術研究所 地盤・岩盤研究室 主任研究員)
【略歴】1995年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(地球システム工学専攻)。博士(工学)。同年、大成建設株式会社入社。現在は、同社 技術センター 土木技術研究所 主任研究員。2003~04年 ローレンスバークレー国立研究所 客員研究員。地下水の流れの調査や数値解析の研究をベースに、建設工事中の周辺環境保全対策や放射性廃棄物の地層処分研究などに従事。土木学会、地盤工学会、アメリカ地球物理学会、各会員。
パネリスト:河宮 未知生 ((独)海洋研究開発機構 地球環境変動領域 主任研究員)
【略歴】専門:気候モデリング・海洋物理学。1969年愛知県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。東京大学気候システム研究センター研究員、独キール海洋学研究所研究員などを経て現職。その間、東京大学客員准教授、東北大学非常勤講師などを歴任。日本海洋学会幹事。博士(理学)。著書:「地球温暖化はどこまで解明されたか」(共著、丸善)、「計算力学シミュレーションハンドブック」(共著、丸善)、“Climate Sense” (共著、Tudor Rose)。