No.56
3月11日 9:30-12:00,14:30-17:00
会場:第3イベント会場
イベント責任者 石田 亨 中島 秀之 パネリスト原口 亮治 竹林 洋一 樋口 知之 安田 雪 |
講演髙玉 圭樹 坊農 真弓 寺沢 憲吾 高田 輝子 梶本 裕之 山岸 典子 佐久間 淳 坂本 比呂志 高梨 克也 尾形 哲也 岸本 章宏 松尾 豊 原口 亮治 |
JSTが行っている戦略的創造研究推進事業の個人型研究「さきがけ」の情報関係2領域において現在チャレンジしている研究の発表会を中心に,研究総括が求める研究者像や,先端にいる若手さきがけ研究者がどのような研究をしているのかを知っていただき,
「さきがけ」をアピールするとともに,質の高い発表を集中的に行い全国大会に貢献したいと考えます.
「情報環境と人」領域には12課題,「知の創生と情報社会」領域には22課題が採択されており,今回はそれぞれ6名ずつのさきがけ研究者による発表を行います.
午前:さきがけセッション(1)「社会応用」 / さきがけセッション(2)「要素技術」をテーマに発表・討論を行います
午後:さきがけセッション(3)「基礎研究」 / パネル討論をテーマに発表・討論を行います
さきがけ「情報環境と人」研究領域 研究総括
石田 亨
本研究領域は,人とのインタラクションが本質的な知的機能の先端研究を行い,その成果を情報環境で共有可能なサービスの形で提供し,
さらに研究領域内外の他のサービスとのネットワーキングにより複合的な知能を形成していくことを目指すものです.
具体的には,人とのインタラクションが本質となる,ユビキタスコンピューティング,アンビエントインテリジェンス,知能ロボット, コミュニケーションやグループ行動支援などを実現するための知的機能の先端研究,ユーザビリティテスト,エスノグラフィ,統計分析など,
利用現場における知的機能の評価研究,さらに研究成果を社会に提供するためのサービスコンピューティングを用いた知的機能のネットワーキング研究を対象とします.
領域ウェブサイト:http://www.jst.go.jp/kisoken/presto/ja/kenkyu/38infoenviro.html
さきがけ「知の創生と情報社会」研究領域 研究総括
中島 秀之
本研究領域は,多様もしくは大規模なデータから,有用な情報である「知識」を生産し,社会で活用するための基盤的技術となる研究を対象とします.
具体的には,大規模データを処理するための革新的な技術,統計数理科学を応用した分析・モデル化技術,あるいは実社会から得られる多様なデータを構造化・分析して知識を抽出する技術,センサによる情報取得やシミュレーション結果等の複数のリソースから新たな知識を創出する技術などの基盤技術に加えて,獲得した知識を実社会に適用するために必要とされる,シミュレーション,データの可視化,新しい情報社会の仕組みを支える応用技術などに関する研究が含まれます.
領域ウェブサイト:http://info.jst.go.jp/index.html
「社会システムや様々な環境への応用展開に向けた研究内容や“今”的なおもしろい使い方」などをテーマとした研究課題を発表します.
9:30~9:45 学習進化機能に基づくスパイラル・ケアサポートシステム
髙玉 圭樹
本研究では,高齢化社会における介護支援に焦点を当て,高齢者・介護士・経営者それぞれが抱える問題を解決し,介護の質を向上させるスパイラル・ケアサポートシステムの構築を目指します.特に,学習進化機能を導入することにより,高齢者毎に対応した介護支援を実現し,その有効性を実際の介護福祉施設で検証します.さらに,医療と比べて体系化されていない介護支援システムの標準化とデファクトスタンダードを追求します.
9:45~10:00 インタラクション理解に基づく調和的情報保障環境の構築
坊農 真弓
情報機器の発展はろう者の生活に大きな変化をもたらしてきました.例えばポケベルや携帯メールは外出先での連絡を可能にし,自宅でFAX を待つ従来の生活を一変させました.今後は映像通信技術の発展に伴い,手話を用いた映像による社会参画の機会が増えると予想されます.本研究では,遠隔地にいるろう者と聴者が対等に議論可能な場として,映像通信技術を用いた調和的情報保障環境の構築とそのガイドライン作成を目指します.
10:15~10:30 擬似コード変換と統計解析による文書画像からの知識抽出
寺沢 憲吾
手書き文字や保存状態の悪い文書など, 従来の技術では「取り扱いにくい」ものであった文書画像データを, 画像特徴量に基づく擬似コード変換技術を用いて「取り扱いやすい」データに変換します.これにより, 近年加速度的に流通量を増している文書画像データベースを対象として, ウェブ検索で一般に用いられているような全文検索が可能となるとともに, さらに進んだ統計解析による知識の抽出・知識の創出を目指します.
10:15~10:30 金融市場における相転移の時空間構造の自動抽出と予測
高田 輝子
金融バブルのような相転移現象の制御や予測は重要な課題です.しかしこうした異常現象はデータが少なくノイズが大きい一方,多くの要因が絡む複雑な構造を有するため,データから帰納的に本質的構造を抽出するのは原理的に困難です.本研究では,大規模データを有効活用する頑健かつ効率的な統計手法を用いて金融バブルの時系列構造を可視化し,発見された有用なパターンを基に因果関係解明や予測の高精度化を目指します.
10:30~10:45 総合討論
「人間の特質解明や情報圧縮という,重要な概念に基づく要素技術の姿」をテーマとした研究課題を発表します.
10:45~11:00 触覚の時空間認知メカニズムの解明に基づく実世界情報提示
梶本 裕之
本研究は,実世界での最適な情報提示手法として触覚に着目し,触覚を用いた情報提示が持つ高い潜在能力を引き出すことを目指します.触覚による情報提示はリアルタイム性と直感性に優れ,視聴覚を阻害しないことから,実世界での情報提示手段として高い潜在能力を持つと考えられます.本研究では,実世界情報提示で主要と思われる閲覧と誘導という2つの行動について,皮膚感覚の時空間特性に基づいた最適設計論を確立します.
11:00~11:15 脳活動の推定に基づく適応的な環境知能の実現
山岸 典子
今後のユビキタス環境では,ユーザの意図を理解し,「欲しいところに欲しい情報が,ちょうどよいタイミング」で提供されることが望まれます.本研究では,ユーザに適応的な環境知能の実現を目指し,脳活動の推定に基づいて,時々刻々と変化するユーザの注意の方向や知的作業に対する準備状況を推定する手法を開発します.これにより,情報通信技術の恩恵を自然に受けることができる適応的,親和的かつ能動的な情報環境を実現します.
11:15~11:30 実社会情報ネットワークからのプライバシ保護データマイニング
佐久間 淳
ネットワーク技術の発展により「誰とどこへ行って何をした」「誰が誰にメールした・電話した」といった経済活動や人間同士の関係,人間とサービスの関係など,個人の生活に密接に関係した情報の蓄積が可能になりつつあります.詳細度の高い個人情報は悪用を防ぐための慎重な取り扱いを要しますが,私たちの生活を支援する画期的なサービスを生み出す源泉ともなります.本研究では,ネットワーク構造をもつプライベートな情報の保護と活用を両立させる知識発見技術の構築を目指します.
11:30~11:45 圧縮データ索引に基づく巨大文書集合からの関連性マイニング
坂本 比呂志
ニュース記事や特許,遺伝子データなどの多様なテキストデータの洪水からデータ同士の重要な関連性を取り出す要求が高まっています.本研究は,データ圧縮の理論を応用して冗長な部分を削ぎ落とすことで重要情報を特定し,これまでは困難であった巨大なテキストデータの集まりから,埋もれた知識の発見を目指します.
11:45~12:00 総合討論
「人とのインタラクションを本質とした知的機能や手法開発・設計論構築,また現在の計算機環境を活用した人工知能の創出など,様々な基礎研究の姿」をテーマとした研究課題を発表します.
14:30~14:45 多人数インタラクション理解のための会話分析手法の開発
高梨 克也
グループでの情報交換や合意形成は現代社会の重要な活動の1つです.こうした活動の効率を向上させる情報処理技術の開発には,まず多人数インタラクションの理解に資する手法を開発しなければなりません.本研究では,実社会のミーティングのフィールド調査を中心とし,従来主に2者間の会話を対象としていた会話分析の手法を拡張します.また,開発した手法をミーティングなど,多様な多人数インタラクションの現場に適用します.
14:45~15:00 長期インタラクション創発を可能とする知能化空間の設計論
尾形 哲也
本研究では,人間とロボットを含む知能化空間が互いの予測と適応を繰り返すことで,動的に発展していくコミュニケーション(事象やそれを表すサイン)に着目します.実環境変化を予測する順モデルを構築し,これを能動的な環境認知,言語への変換,さらに人間行為の予測に適用します.このモデルから,知能化空間が身体の一部となったかのような“さりげない長期支援”の設計論を構築し,多様なシステムへの適用を図ります.
15:00~15:15 大規模並列化によるハイパフォーマンス人工知能技術
岸本 章宏
人工知能技術において代表的な手法である探索アルゴリズムは, 大規模な空間を探索し, 有益な情報を求めるための基盤技術です.本研究では, 大多数の計算機を利用した並列計算によって, 探索アルゴリズムの超高速化を行い, 現状の計算機で取り扱えるデータよりも, はるかに大規模なものを取り扱うことを可能にします.その一例として, ゲームとプランニングを研究題材として取り扱い, これらの題材で, 高性能なシステムを開発します.
15:15~15:30 ネットワーク理論と機械学習を用いたウェブ情報の構造化・知識化
松尾 豊
本研究では, ネットワーク理論と機械学習に基づく, 画期的なウェブ情報の統合・知識化アルゴリズムの構築を目指します.特に, エンティティ(人物や組織, 物質, 製品名等)のネットワークに着目し, 目的に応じた予測のための構造化技術を構築します.大量のウェブ情報に書かれたエンティティ間の構造を抽出し, 目的に応じて知識として利用するための基盤であり, ウェブの次世代「知識エンジン」につながる技術です.
15:30~15:45 総合討論
16:00~17:00 さきがけとは
モデレータ:原口 亮治
パネリスト:石田 亨,中島 秀之,竹林 洋一,樋口 知之,安田 雪
さきがけ研究領域の紹介や今後領域として期待される研究課題等について,2人の研究総括と領域アドバイザによる討論を行います.会場からの質問も受け付ける予定です.
石田 亨
京都大学大学院情報学研究科教授
2009年よりJSTさきがけ「情報環境と人」研究領域研究総括(兼務)
1980年代より人工知能,マルチエージェントシステムの研究に従事
1998年に社会情報学専攻の設立に参加して以来,コミュニティウェア,デジタルシティ,異文化コラボレーション,言語グリッドなど社会と情報の接点で研究プロジェクトを立ち上げてきた
最近は,ネットワークと多数の人々が作り上げる集合知に興味を感じている
中島 秀之
公立はこだて未来大学 学長
2008年より JSTさきがけ「知の創生と情報社会」研究領域 研究総括(兼務)
1983年 東京大学大学院 工学系研究科情報工学専門課程修了,工学博士
電子技術総合研究所(のち産業技術総合研究所)において情報科学部長,サイバーアシスト研究センター長などを歴任
研究分野は論理プログラミング,人工知能,マルチエージェント,ユビキタスコンピューティング,デザイン論など
髙玉 圭樹
1995年~ 全日本空輸株式会社 入社
1998年~ (株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 入所
2002年~ 東京工業大学大学院総合理工学研究科講師
2006年~ 電気通信大学電気通信学部助教授,2008年~同准教授
マルチエージェントシステム,分散人工知能,強化学習,創発的計算手法,計算組織理論,組織学習,社会シミュレーションなどの研究に従事
坊農 真弓
2002年~ ATRメディア情報科学研究所研究員等
2006年~ 京都大学大学院情報学研究科 西田・角研究室研究員
2007年~ 日本学術振興会特別研究員(PD)
2007年~ カリフォルニア大学ロサンゼルス校,Center for Language,
Interaction, and Culture (CLIC), ポスドク客員研究員
2008年~ テキサス大学オースティン校,文化人類学部, 客員研究員
2009年~現在 国立情報学研究所コンテンツ科学研究系助教
2009年~現在 総合研究大学院大学助教(兼任)
人と人とのコミュニケーション研究に従事
寺沢 憲吾
平成18年~平成19年 北海道大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー研究員
平成19年~平成20年 北海道大学博士研究員
平成20年~平成21年 JSTさきがけ研究員(専任)
平成21年~現在 公立はこだて未来大学システム情報科学部助教
知識マルチメディア基盤技術の研究に従事
高田 輝子
1991年~1997年 野村総合研究所研究員,野村投資信託委託(現野村アセッ トマネジメント)投資調査部
2002年~2004年 大阪市立大学大学院経営学研究科講師
2004年~現在 大阪市立大学大学院経営学研究科准教授
ロバストな統計手法の開発と応用,金融市場を主とした異常時の振舞の解析や発生メカニズムの解明に従事
梶本 裕之
平成15年~平成18年 東京大学大学院情報理工学系研究科助手
平成18年~平成19年 電気通信大学電気通信学部助教授
平成19年~現在 電気通信大学電気通信学部准教授
触覚を中心としたバーチャルリアリティ,ヒューマンインタフェースについて研究
山岸 典子
1998-2000年 株式会社エイ・ティ・アール人間情報通信研究所 研究員
2000-2003年 国際電気通信基礎技術研究所 人間情報科学研究所 研究員
2003-現在 国際電気通信基礎技術研究所 脳情報研究所 主任研究員
2006-現在 独立行政法人情報通信研究機構未来ICT研究センター在籍出向
視覚ダイナミクスの解明に関する研究に従事 (認知心理学,神経科学)
佐久間 淳
平成15年4月~平成16年6月 日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所 副主任研究員
平成16年7月~平成21年3月 東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻助手(平成19年4月からは同助教)
平成21年4月~現在 筑波大学システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻准教授
機械学習と知識発見,特にプライバシ保護データマイニングに関する研究に従事
坂本 比呂志
平成8年4月~10 年12月 日本学術振興会特別研究員
平成11年1月~15 年7月 九州大学大学院システム情報科学研究院助手
平成15年8月~現在 九州工業大学大学院情報工学研究院准教授
機械学習の理論と応用,ウェブマイニング,データ圧縮の理論と半構造データからの情報抽出,半構造データベースへの応用に関する研究に従事
高梨 克也
2000年1月~2005年3月 独立行政法人情報通信研究機構専攻研究員
2005年6月~2009年9月 京都大学学術情報メディアセンター研究員,同特定
助教を経て,2009年10月より科学技術振興機構さきがけ研究員
2005年4月~2007年3月 東京大学大学院情報学環客員研究員
コミュニケーションの組織化を支える認知的・社会的プロセスの解明に従事
人工知能学会,言語処理学会,日本認知科学会,社会言語科学会,日本語用論学会各会員
尾形 哲也
1997年~1999年 日本学術振興会特別研究員
1999年~2001年 早稲田大学理工学部助手
2001年~2003年 理化学研究所脳科学総合研究センター研究員
2003年~2005年 京都大学大学院情報学研究科講師
2005年~現在 京都大学大学院情報学研究科助教授(現・准教授)
神経力学モデルによるインタラクション創発システムに関する研究に従事
岸本 章宏
平成17年~平成19年 公立はこだて未来大学システム情報科学部助手
平成19年~平成21年 公立はこだて未来大学システム情報科学部助教
平成21年~現在 東京工業大学 大学院情報理工学研究科 助教
人工知能と並列コンピューティングに関する研究に従事
松尾 豊
平成14年4月~平成19年9月 産業技術総合研究所研究員
平成17年8月~平成19年9月 スタンフォード大学客員研究員
平成19年10月~現在 東京大学大学院工学系研究科総合研究機構准教授
ウェブマイニング,位置情報のデータマイニング,対話システムとウェブマイニング,およびウェブマイニングと知の構造化に関する研究に従事
原口 亮治
2001年~ 科学技術振興事業団
竹林 洋一
1980年~ 東京芝浦電気株式会社 総合研究所研究員
1995年~ 米国マサチューセッツ工科大学・メディア研究所・客員研究員
1989年~ 株式会社東芝 総合研究所情報システム研究所主任研究員
1996年~ 株式会社東芝 研究開発センター情報・通信システム研究所
ヒュー マンインタフェース技術センター長
2000年~ 東京工業大学大学院総合理工学研究科 客員教授
2000年~ 株式会社東芝 研究開発センターヒューマンインタフェースラボ
ラトリー技監
2002年~ 静岡大学情報学部 教授
2006年~静岡大学創造科学技術大学院 教授
専門分野は,ヒューマンインタフェース,人工知能
樋口 知之
平成元年 文部省統計数理研究所 予測制御研究系 予測理論研究部門助手
平成6年 同部門助教授
平成14年 予測制御研究系システム解析研究部門教授
平成16年 副所長(研究企画担当)就任 現在に至る
平成17年 改組に伴いモデリング研究系時空間モデリンググループ教授
現在に至る
安田 雪
1990年9月~1995年3月 国際基督教大学,立教大学,駒沢大学非常勤講師
1994年4月~1999年12月 立教大学社会学部専任講師,助教授
1999年10月~2000年3月 東京大学大学院総合文化研究科非常勤講師
1999年10月~2000年3月 東京大学教養学部非常勤講師
1999年12月~2000年9月 社会ネットワーク研究所所長
2002年10月~現在 (有)社会ネットワーク研究所所長・取締役社長
2003年1月~現在 NPO法人グローバルビジネスリサーチセンター GBRC社会ネットワーク研究所 所長
2004年2月16日~2008年3月31日 東京大学大学院経済学研究科・ものづくり経営研究センター 特任助教授
2008年4月1日~関西大学社会学部教授