No.25

誰が,何を,いつ,どこで,なぜ,どうやって翻訳するか?

3月10日 9:30-12:00

会場:第5イベント会場

講演者 Speaker

イベント司会

写真内山 将夫
情報通信研究機構 知識創成コミュニケーション研究センター言語翻訳グループ 主任研究員

パネル司会

写真影浦 峡
東京大学 教育学研究科 教授

講演・パネリスト

写真結城 真悠
株式会社ロックエンジェルリミテッド 代表取締役

写真内田 眞人
作品社 編集部 編集長

写真加藤 直孝
日本アイ・ビー・エム株式会社 トランスレーション・サービス・センター アドバイザリーS/Wエンジニア

写真野田 幸江
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本 企画・広報担当

写真真藤 直観
GentooJP

写真飴谷 茂寛
GentooJP

概要 Abstract

翻訳は,日本と世界との関わりにおいて多大な影響をもつ.近年,Web等の発達により,オンラインボランティア翻訳者が急増している.一方では,従来の産業翻訳者や文学等の翻訳者もいる.本特別セッションでは,これらの人々が集まり,それぞれの立場から翻訳について議論をすることを目標とする.

プログラム Program

9:30-9:45 講演(1):翻訳企業

結城 真悠

昨今の景気低迷で翻訳業務の海外流出・低価格化に拍車がかかっている.プロ翻訳者のなかには「翻訳だけでは食べていけない」厳しい状況に直面している者もいる.しかしこの状況から翻訳業界が反省すべき点もいくつか見えてくる.本講演ではそれらの反省点を踏まえ,他業界とも協調しながら今後どのように日本の翻訳文化を発展させていくべきかについて,翻訳者・翻訳会社の立場から展望を述べる.

9:45-10:00 講演(2):出版翻訳

内田 眞人

書籍というのは,作品でもあり,また商品でもあるという二面性を持っており,この運命から逃れることはできません.書籍翻訳とは,矛盾するこの二面性に同時に応えるという,アクロバティックな作業だと思います.「完璧」な翻訳,「誤訳」のない翻訳というものはなく,一方で,これまでの語学的な基本,さらに各専門分野の常識を踏まえ,もう一方でマーケットを睨みながら,新たなニーズを創り出していくべく,時代にあった解釈や翻訳文を編み出していくものだと思います.そして,出版不況が進む現在,出版社のみならず,翻訳者のエコノミーの困難な問題も存在します.出版翻訳の現場の実態と本音について,赤裸々に語ってみたいと思います.

10:00-10:15 講演(3):国際企業の多言語化

加藤 直孝

ソフトウェアがユーザーと意思疎通するために出力する文字列をProgram Integrated Information(PII)文字列と呼ぶ.ソフトウェアを国際化するためには,このPII 文字列を翻訳する必要がある.ところが,この翻訳をどのようにして行なうかを述べた文献は極めて少ない.そのため,ソフトウェアの科学者やエンジニアは,PII 文字列の翻訳や翻訳検証テストに関して誤解をしている場合が多い.本講演では,PIIの翻訳をどのようにして行なうかを説明する.PII 文字列の翻訳が抱える多くの問題は,翻訳者とソフトウェア科学者やエンジニアが協力して取り組むべき課題であることをお伝えする.

10:15-10:30 講演(4):NGO系翻訳

野田 幸江

世界各国の国別人権状況をまとめた年次報告書,各種調査報告書,ニュースリリース,緊急アクションのケースシート,ウェブサイト用の文章など,ロンドンの国際事務局から送られてくる膨大な量の人権に関する英語の文章を,多数のボランティアの方々と分担して翻訳しています.翻訳したものは団体として公式の文書となるため,原則として職員を含む3人以上の目を通すこととし,訳語や表現の統一のためのルールブックを作っています.経験豊富な二次訳者の育成と翻訳のスピードアップ,遠隔地にいるボランティアの方々とのコミュニケーションが課題です.

10:30-10:45 講演(5):オープンソースソフトウェアのマニュアル等の翻訳

真藤 直観

オープンソースソフトウェアのマニュアル翻訳について,GentooLinuxの事例を中心に紹介するとともに,他のオープンソース関連の翻訳作業の現状について報告する.

10:45-12:00 パネル討論

講演者略歴 Biography

内山 将夫
1992年筑波大学卒業.1997年同大学院工学研究科修了.博士(工学).現在,情報通信研究機構主任研究員.言語処理の実際的で学際的な応用に興味がある.言語処理学会,情報処理学会,ACL等会員.

影浦 峡
東京大学教育学部・マンチェスター大学科学技術研究所卒.PhD.
学術情報センター・国立情報学研究所を経て,現在,東京大学大学院教育学研究科教授.専門は言語とメディア.

結城 真悠
約3年間の米国留学後,メーカーに翻訳者として勤務した後フリーランスとして独立.2000年に翻訳者コミュニティ『翻訳パラダイス』を立ち上げ,翻訳会社を設立.現在はエージェント兼翻訳者として活動しながら後進の指導にあたっている.翻訳歴19年.

内田 眞人
1960年生まれ.作品社の書籍編集者となって25年.年間,約10~12冊ほどを企画編集し,これまで200冊以上の編集に携わる.翻訳書の比率は半数以上で,主な言語は英語・仏語・韓国語など.ジャンルは,『ピーク・オイル』(益岡賢訳)等のグローバル経済から,ネグリ『マルクスを超えるマルクス』等の思想・哲学まで幅広い.最近では,NHKが特別番組を放映し話題となった仏の思想家ジャック・アタリの『21世紀の歴史』等を編集.

加藤 直孝
昭和59年大阪大学工学部通信工学科卒業.同年日本アイ・ビー・エム株式会社入社.3270ディスプレー端末開発,ノートブックPC開発に従事.平成14年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了.平成16年から慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問).現在,日本IBMのPIIおよびマニュアルを翻訳する部署で翻訳プロジェクトに従事.

野田 幸江
横浜市立大学文理学部文科(政治学)卒業.2004年より国際人権団体アムネスティ・インターナショナル日本の企画・広報担当職員として,英文ニュースリリースの日本語訳・配信・翻訳ボランティアのコーディネートに携わっている.

真藤 直観
2002年頃からGentoo Linuxを使い始める
2002年GentooJP発足とともにドキュメント,翻訳チームに参加し,以降GentooJPのメンバーとして活動
2007年11月よりGentoo.orgドキュメント開発者メンバーとして翻訳作業中心に活動
以降,GentooJPの翻訳ドキュメントのコミッター及びGentooJPメンバとして活動中

飴谷 茂寛
2004年7月にGentooのGWN(Gentoo Weekly News)の翻訳チームに参加
2004年同月,Gentoo JP Document 翻訳チームに参加
2004年11月にGentoo JP Documentチームの取りまとめ役に就任
2005年2月にGentoo本家開発者入りし,翻訳作業中心で活動
2006年初旬,Gentoo本家開発者を引退
現在は,GentooJPとして活動