No.19

未来を切り拓く最先端VLSIテクノロジー

3月9日 15:30-17:30

会場:第5イベント会場

講演者 Speaker

イベント司会

写真五島 正裕
東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授

講演

写真南谷 崇
東京大学 情報理工学系研究科 教授

写真後藤 敏
早稲田大学 情報生産システム研究科 教授

写真高田 広章
名古屋大学 大学院情報科学研究科 教授

写真中村 宏
東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授

写真黒田 忠広
慶應義塾大学 理工学部電子工学科 教授

概要 Abstract

 CREST「情報システムの超低消費電力化を目指した技術革新と統合化技術」は,情報通信システム・ネットワークにおいて,回路・デバイス,アーキテクチャ,システム・ソフトウェア,アルゴリズム・プロトコル,応用・サービスにおける革新的要素技術の階層統合的な管理,制御によって既存技術による低消費電力化の限界を打破する研究を推進しています.
 このセッションでは,本領域で活躍されている代表者の先生方を講演者に迎え,デバイス,回路,VLSI,ソフトウェアの各階層における技術革新とそれらを統合するシステム技術によって,電力効率を100~1000倍に高める超低消費電力技術研究の現状を紹介していただきます.

プログラム Program

15:30 ~ 15:50 講演(1):情報システムの超低消費電力化技術

南谷 崇

地球規模で急拡大を続けるネットワークとそれを構成する膨大な数の情報システム/機器が消費する総電力量の爆発的増加を抑え,電力消費に伴う発熱増大や信頼性劣化による性能限界を克服することは,エネルギー総需要抑制の視点ならびに産業技術の国際競争力強化の視点から情報通信技術分野が挑戦すべき重要課題です.この講演では,デバイス,回路,VLSI,ソフトウェアの各階層における技術革新とそれらを統合するシステム技術によって,消費電力当たりの処理性能を100倍から1000倍にする超低消費電力技術の確立を目指す研究プロジェクトの現状を紹介します.

15:50 ~ 16:15 講演(2):メデイア処理における超低消費電力化技術

後藤 敏

エネルギー削減と環境保全のために革新的な電子機器の開発への期待は大きい.特に,電子機器の超低消費電力への要求は極めて強く,緊急の課題となっている.本講演では現在の放送,インターネット,携帯電話等で必要不可欠なメデイア情報処理における超低消費電力化の実現のために,画像,暗号,誤り訂正符号の符号化・復号化処理とその統合化システムに関して最新技術を紹介する.方式,アルゴリスム,アーキテクチャ,回路設計,LSI実装化技術の各観点から,超低消費電力化実現に向けての新しい手法と技術に関して,CRESTプロジェクトで得られた成果の紹介と今後の展望に関して述べる.

16:15 ~ 16:40 講演(3):ソフトウェアとハードウェアの協調による組込みシステムの消費エネルギー最適化

高田 広章

本講演では,CREST ULP領域において講演者が代表となって研究開発を進めている,ソフトウェアとハードウェアを一体で最適化することにより,必要なQoSを維持しつつ,組込みシステムの消費するエネルギーを最適化するための技術について解説する.特に,ハードウェアを必要最小限の性能で動作させることにより消費エネルギーの削減を図るDEPS(Dynamic Energy Performance Scaling)技術に関して,DEPSに対応したプロセッサ,最適化のためのツール,DEPSを実現するリアルタイムOS等について述べる.

16:40 ~ 17:05 講演(4):Power Wall問題へのブレークスルーを目指して~リーク電力削減への試み~

中村 宏

現在の情報システムの高性能化を妨げる大きな要因の一つは電力消費の増大であり,Power Wall問題と呼ばれる.本講演では,Power Wall問題を概観した後,講演者がCREST ULP領域において代表となって実施している研究プロジェクト「革新的電源制御による次世代 超低電力高性能システムLSIの研究」を紹介する.この研究プロジェクトでは細粒度パワーゲーティング方式を適用するマイクロプロセッサを設計・開発しているが,その原理,課題について説明した後,この課題を克服するために重要となる回路・アーキテクチャ・OSの各設計階層の協調について具体的な取り組みを説明する.あわせて,試作チップにおける測定結果から得られた提案手法の有効性と,今後の展開について述べる.

17:05 ~ 17:30 講演(5):高性能・超低電力短距離ワイヤレス 可動情報システムの創出

黒田 忠広

ロボットや車や携帯電話などをワイヤレスネットワークに接続して高度なサービスを提供する可動情報システムの構築に必要な高性能短距離無線通信技術とエネルギー無線給電技術に関する研究成果を報告する.具体的な目標は,コイル配列を用いてチップ間通信を10Tbps/100mWで行い,偏波変調通信を用いて至近距離の端末間通信を10Gbps/10mWで行い,オールモスト・デジタル無線を用いて短距離の端末間通信を100Mbps/1mWで行う.また,動きながら電力の供給を受けることができる給電シートを有機トランジスタ技術で低コストに実現する.こうした新技術の創出は,情報処理のエネルギー問題を解決するとともに,日本のエレクトロニクス産業の国際競争力を一層強くするのに寄与する.

講演者略歴 Biography

五島 正裕
1992年京都大学工学部情報工学科卒業.1994年同大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.同年より日本学術振興会特別研究員.1996年京都大学大学院工学研究科情報工学専攻博士後期課程退学,同年より同大学工学部助手.1998年同大学大学院情報学研究科助手.2005年東京大学情報理工学系研究科助教授,現在に至る.高性能計算機システムの研究に従事.博士(情報学).2001年情報処理学会山下記念研究賞.2002年同学会論文賞受賞.IEEE会員.

南谷 崇
1969年東大工学部計数工学科卒,1971年同大学院修士了.同年日本電気中央研究所.1978年工学博士.1981年東工大工学部情報工学科助教授.1989年同電気電子工学科教授.1995年東大工学系研究科計数工学専攻教授.1996年東大先端科学技術研究センター教授.2001年から2004年まで東大評議員・先端研センター長.2005年からJST-CREST「情報システムの超低消費電力化」領域の研究総括.IEEE-CS TC on Dependable Computing委員長.IFIP-TC10 日本代表.IEEE Fellow.電子情報通学会フェロー.学術会議連携会員.

後藤 敏
1968年早稲田大学理工学部電気通信学科,1970年同大学院修士を修了し,NECに入社.C&Cメデイア研究所長,支配人,情報通信メデイア研究本部長を経て2003年より早稲田大学大学院情報生産システム研究科教授.現在,グローバルCOE,CREST,知的クラスタ等のプロジェクトをリーダとして実行中.電子情報通信学会より業績賞を受賞.工学博士,電子情報通信学会フェロー,IEEEフェロー.

高田 広章
名古屋大学大学院情報科学研究科教授.1988年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.同専攻助手,豊橋技術科学大学助教授等を経て,2003年4月より現職.2006年4月より附属組込みシステム研究センター長を兼務.博士(理学).組込みシステム開発技術の研究に従事.オープンソースのリアルタイムOS等を開発するTOPPERSプロジェクトを主宰.

中村 宏
1990年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了.工学博士.現在,東京大学大学院情報理工学系研究科准教授.高性能・低消費電力VLSIアーキテクチャ,ハイパフォーマンスコンピューティング,ディペンダブルコンピューティング等の研究に従事.現在,情報処理学会計算機アーキテクチャ研究会主査.情報処理学会より論文賞,山下記念研究賞,坂井記念特別賞,各受賞.IEEE,ACM 各 senior member.

黒田 忠広
1982年東京大学工学部電気工学科卒.工学博士.同年東芝入社.88~90年カリフォルニア大学バークレイ校にて客員研究員としてLSI CADを研究.2000年に慶應義塾大学に移り,2002年より教授.カリフォルニア大学バークレイ校の客員教授を兼任.しきい値や電源電圧を制御した低電力CMOS回路や誘導結合を用いた近接場ワイヤレスチップ間通信などを研究.2008 電子情報通信学会業績賞を受賞.IEEEフェロー.IEEE SSCS監理委員会メンバー.IEEE上級講師.