No.57
3月10日 15:30-17:50
会場:第4イベント会場
イベント司会
基調講演
活動報告
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講演
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内閣府総合科学技術会議科学技術連携施策群情報の巨大集積化と利活用基盤技術開発連携群では,文部科学省の高性能データベース・Web社会分析プロジェクト,経済産業省の情報大航海プロジェクト,総務省の情報の信憑性・信頼性に関するプロジェクトを連携させることにより,あらゆる情報コンテンツ化を簡便,的確かつ安心して収集解析管理する次世代の知的な情報利活用のための基盤技術開発を目的として実施しています.また,各省施策を補完するということで,補完的課題として「センサ情報の社会利用のためのコンテンツ化」というプロジェクトを進めています.今回,情報の巨大集積化と利活用基盤技術開発連携群は,情報処理学会創立50周年記念全国大会講演会特別セッション「センシングWebとプライバシマネジメント-プライバシに配慮したセンサ情報の社会的利用-」を(社)情報処理学会と共同主催することになりました.本セッションでは,連携施策群タスクフォース委員の安田浩教授(東京電機大学)に基調講演をお願いするとともに,補完的課題の受託機関で開発された基盤技術及びその利用事例を紹介し,多くの研究開発者に,これらの基盤技術を活用していただくよう,普及活動を行っています.
15:30-16:00 基調講演:WEB時代とID・プライバシ管理
安田 浩
WEB3.0時代は,個性を発揮できる世界であると同時に,それが故の危険性・脆弱性が問題となることも明らかである.情報ビッグバン(大爆発)への対処法,情報の信憑性に関する不安,プライバシ侵害の危険,有害情報の蔓延,成りすましの危険などセキュリティに関わる課題を解析し,対応技術の展望を紹介する.
16:00-16:20 活動報告:情報の巨大集積化と利活用基盤技術開発連携群の活動報告
西尾 章治郎
爆発的に増加しているインターネット情報を集積・利活用できる知的情報アクセス基盤構築に向け,平成19年度より総合科学技術会議(内閣府)のイニシアティブの下,「情報の巨大集積化と利活用基盤技術開発」連携施策群の活動を推進している.現在,情報大航海プロジェクト(経産省),情報信憑性検証技術(総務省),超高性能DB,Web社会分析(文科省),センシングWeb(代表:京大)の施策を対象に,新たな利活用を生み出すべく各施策間の連携を推進している.本講演では,これらに関するこれまでの成果の紹介を中心に報告する.
16:20-16:35 講演(1):画像情報に対するプライバシ情報処理
美濃 導彦
近年,さまざまな場所に防犯カメラや人感センサが設置されている.これらの情報がインターネットで見られるようになれば,遠隔地の天候や混雑度などについてリアルタイムの状況を確認することができて便利だと考えられる.しかし,これらのセンサ情報にはプライバシ情報が含まれるため,そのままインターネットへ公開することはできない.本プロジェクト「センシングWeb」では,これらのセンサ情報を,プライバシを保護しながら公開・利用する方法について研究を進めてきた.本講演では,このプロジェクトの概要を紹介するとともに,カメラ映像に関するプライバシ情報保護に関する技術開発について述べる.
16:35-16:50 講演(2):音声情報に対するプライバシ情報処理
中川 聖一
音センサ(マイクロホン)によって収録される音情報には,背景情報や音声情報が含まれる.背景音には場の雰囲気などの情報が,音声情報には個人性情報,言語情報,感情情報など様々な情報が含まれている.これを利活用することができれば様々な場面で非常に有用であると考えられるが,同時に含まれているプライバシ情報も多いため,公共的に情報を利用するためにはプライバシ保護が必要となる.本プロジェクトでは,次の3つの項目について研究・開発を行った.①背景音中からの音声除去,②雑音中の音声の声質変換,③音声中に存在するプライバシに関連する言語情報の除去.本講演では,これらの技術を紹介する.
16:50-17:05 講演(3):センサ情報に基づく実世界コンテンツ
馬場口 登
本講演では,実世界環境における現在の人々の動きを直感的に分かりやすく提示することを目的とし,環境内に設置された複数カメラの撮影映像を,3次元実空間内の位置関係に基づき統合することにより,環境を3次元的に実時間で表示する実世界コンテンツ「ディジタルジオラマ」について述べる.
17:05-17:20 講演(4):センサ群からの情報の構造化
谷口 倫一郎
センシングウェブは各種のセンサが空間的に多数配置されており,各センサーから実世界の情報を獲得する.それぞれのセンサを通して獲得する実世界の情報は断片的なものであり,その情報自体はもちろん重要であるものの,センシングウェブとして意味のある情報を社会に提供するためには,複数のセンサーから得られた情報を統合し,新たな情報を創出する必要がある.我々はこのような観点から,複数のセンサから得られたセンサ情報を構造化し,提示する方法について研究開発を進めた.本発表では複数のセンサから得られた人物の検出/追跡結果を統合して広域での人物活動状況を提示する手法とその実証実験の結果について述べる.
17:20-17:35 講演(5):センサ情報利用によるシースルービジョン
大田 友一
センシングウェブが提供するセンサ情報のオープン利用の仕組みを活用し、歩行者が持つPDAなどの携帯型情報端末に、環境に設置されたカメラの映像を適切に加工した映像情報を提示し、自分の眼では直接見ることが出来ない視覚情報を歩行者に提供する「シースルービジョン」について述べる。シースルービジョンとは、物体の透視能力を備えた眼を意味し、歩行者が目の前のビルなどの遮蔽物を透視して遠方を見ることが出来る機能を表現しているが、環境に設置されたカメラ映像の「透明性」を高める、すなわち、カメラで何が撮影されているかを被写体である一般市民が日常生活の中で容易に把握できる機能の提供という側面もある。シースルービジョンを実現するための要素技術、プライバシを保護するための枠組みなどを紹介する。
17:35-17:50 講演(6):センサ情報の共有
鰺坂 恒夫
センサにより自動収集される情報を不特定多数のユーザがオープンに利活用するための共有のしくみについて述べる.データ形式の標準化が必要であることは明らかであるが,それを定めるためには情報需給のアーキテクチャを明確にすることが求められる.センサ情報には特有の統合機能として時空間統合があり,これをアプリケーションサービスの構成に必要なスキーマ変換機能と組み合わせたアーキテクチャを与える.データ形式標準はXMLで規定するが,オブジェクト(空間)優先とフレーム(時間)優先が対等に記述できるようにしている.ロボットインタフェースとの共通化についてもふれる.
谷本 茂明
1982年徳島大学工学部電気工学科卒業.1984年徳島大学大学院工学研究科電気工学専攻修了.同年日本電信電話公社入社.2007年科学技術連携施策群(情報利活用担当)主監補佐.2009年千葉工業大学社会システム科学部准教授.現在,情報セキュリティ,PKI応用等の研究に従事.博士(工学).情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各会員.
安田 浩
1967年東京大学工学部電子科卒業、1972年同大学院博士課程修了。同年4月日本電信電話公社入社。NTT理事・情報通信研究所所長を経て、1997年3月退社。1997年4月東京大学教授。国際・産学共同研究センター長を経て、2007年3月退職。2007年4月より東京電機大学教授、未来科学部 情報メディア学科所属。2007年6月より東京大学名誉教授。
西尾 章治郎
1975年京都大学工学部数理工学科卒業.1980年同大学院工学研究科博士後期課程修了.工学博士.京都大学工学部助手,大阪大学基礎工学部および情報処理教育センター助教授,大阪大学大学院工学研究科情報システム工学専攻教授を経て,2002年より大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻教授
となり,現在に至る.2000年より大阪大学サイバーメディアセンター長,2003年より大阪大学大学院情報科学研究科長,その後2007年より大阪大学理事・副学長に就任.本学会理事を歴任.本学会論文賞を受賞.本学会フェロー.
美濃 導彦
1978年京大・工・情報工学卒.1983年同大大学院博士課程了.同年工学部助手,1987年~1988年マサチューセッツ州立大学客員研究員,1989年京都大学工学部附属高度情報開発実験施設助教授,1995年同教授,1997年京都大学総合情報メディアセンター教授,2002年京都大学学術情報メディアセンター教授.画像処理,人工知能,知的コミュニケーション関係の研究に従事.工博.IEEE,ACM,情報処理学会,画像電子学会,日本ロボット学会各会員.
中川 聖一
1976年京都大学大学院博士課程修了.同年京都大学工学部情報工学科助手.1980年豊橋技術科学大学講師.1990年教授.1985-1986年カーネギメロン大学客員研究員.音声情報処理,自然言語処理,人工知能の研究に従事.工学博士.電子情報通信学会フェロー,情報処理学会フェロー.単著「確率モデルによる音声認識(電子情報通信学会)」,「情報理論の基礎と応用(近代科学社)」,「パターン情報処理(丸善)」,編著「Spoken
Language Systems(IOS Press)」.
馬場口 登
1979年大阪大学工学部通信工学科卒業,1981年同大学大学院前期課程修了,愛媛大学工学部,大阪大学工学部,産業科学研究所を経て,現在,大阪大学大学院工学研究科教授.1996-97年カリフォルニア大学サンディエゴ校文部省在外研究員.工学博士.マルチメディア(画像・映像・音響)処理に関する研究に従事.著書:人工知能の基礎(昭晃堂)ほか.PCM2006、IAS2009
Best Paper Award, FIT2009論文賞.電子情報通信学会フェロー.
谷口 倫一郎
1978年,九州大学工学部情報工学科卒.1980年,同大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.1980年,同大学院総合理工学研究科助手.1989年,同助教授.1996年,九州大学大学院システム情報科学研究科(現研究院)教授.工学博士.コンピュータビジョン,並列処理,映像情報処理等の研究に従事.1995年情報処理学会坂井記念特別賞,2001年映像情報メディア学会丹羽高柳論文賞などを受賞.
大田 友一
1977年京都大大学院博士課程了.京都大学情報工学科助手,筑波大学電子・情報工学系講師,カーネギーメロン大学計算機科学科客員研究員,筑波大学電子・情報工学系助教授を経て,1992年同教授.2004年同大学院システム情報工学研究科教授.2009年より、同研究科研究科長.工博.コンピュータビジョン,視覚情報メディア,複合現実感の研究に従事.現在、電子情報通信学会情報・システムソサイエティ会長.国際パターン認識連盟フェロー, 電子情報通信学会フェロー,情報処理学会フェロー.
鰺坂 恒夫
1980年京都大学理学部物理学系卒,85年同大学院工学研究科情報工学専攻博士課程研究指導認定退学,88年工学博士,85年京都大学工学部情報工学科助手,90年同助教授,97年より和歌山大学システム工学部デザイン情報学科教授.専門領域はソフトウェア工学.最近の興味は意味的なモデリング,領域横断的なデザイン(設計)科学,人文社会科学との境界領域,教育法など.