【1】手頃な情報保障: 情報系研究者に望むこと  青柳まゆみ  (筑波大学大学院 人間総合科学研究科)  E-mail: maoyagi@human.tsukuba.ac.jp  2006.03.08 【2】発表の概要  1. 視覚障害者とは  2. 視覚障害者と情報アクセス  3. 大学における視覚障害学生支援の現状と課題  4. 学会や会議の場における視覚障害者に対する配慮の可能性  5. 情報系研究者に望むこと 【3】視覚障害者の人数 (年齢別)  (厚生労働省平成13年調べの資料を一部改変)    0〜17歳: 2%   18〜29歳: 2%   30〜39歳: 3%   40〜49歳: 5%   50〜59歳: 15%   60〜69歳: 22%   70歳以上: 51%  総数: 305,800人 【4】視覚障害者の人数 (程度別)  (厚生労働省平成13年調べの資料を一部改変)   1級: 35%   2級: 25%   3級: 9%   4級: 9%   5級: 11%   6級: 11%  総数: 305,800人 【5】全盲者のパソコン活用例 【6】点字ディスプレイ 【7】全盲者のパソコン活用  ○スクリーン・リーダー、点字ディスプレイ等を利用  ○晴眼者との直接的な文字コミュニケーションが可能  ●複雑なレイアウトの文書や表等は、特に内容の理解が困難  ●一部のpdfファイルなど、オリジナル・テキストの抽出が困難なフォーマット形式がある 【8】弱視者のパソコン活用例1 【9】弱視者のパソコン活用例2 【10】弱視者のパソコン活用  ○画面拡大ソフト、スクリーン・リーダー等を利用  ○文字サイズ、書体、文字間隔、行間隔などの自由な変更が可能  ○配色の自由な変更が可能(黒地に白文字等)  ●視覚の制限(全体像の把握が困難、細部の識別が困難等)により、情報の認識に時間がかかる 【11】大学で受けている具体的な支援内容 ―特に講義、ゼミ等への参加に際して―  ○印刷物の電子データ化  ○オリジナル・テキストデータの提供  ○板書の読み上げ  ○指示語の使用に関する配慮 【12】印刷物のテキストデータ化/点訳手順  画像データの取り込み  テキストデータへの変換  校正  点字データへの変換 【13】印刷物のテキストデータ化/点訳手順1 画像データの取り込み:  スキャナを使って印刷物の情報を「絵」のデータとしてパソコンに送る  *鮮明な画像をパソコンに送ることが重要 テキストデータへの変換:  OCRソフトを使って、「絵」のデータを「文字」のデータに変換する  *文字認識の精度を上げるためには丁寧な認識設定が必要 【14】印刷物のテキストデータ化/点訳手順2 校正:  原本とテキストデータを見比べながら、誤変換やレイアウトの崩れを手動で修正する  *校正のレベルについては、事前に依頼者と相談 点字データへの変換:  自動点訳ソフトを使って、テキストデータを点字データ(かなベース)に変換する。  *漢字の読み方の誤りや点字レイアウトの崩れなどは手動で修正 【15】大学における障害学生支援システムの事例  筑波大学における障害学生支援の組織図  障害学生支援委員会:大学としての方針の検討、各年度の重点課題の設定。  障害学生支援専門委員会:心身障害学系教員や保健管理センターの医師などの専門家からなる作業委員会。  重点課題の推進、教育組織への助言・相談、一般学生啓発のための授業の開講(障害者支援ボランティア論)、学習補助者養成講座の実施等。  筑波大学の障害学生支援の特色:障害学生の具体的な支援に当たるのは、各障害学生が所属する教育組織。支援専門委員会は、教育組織に対して専門的な見地から助言・相談を行う。 【16】学会・会議等に際して求められる支援の内容  ○配布資料(当日に配られるものを含む)を、視覚障害者が読める形で提供する  ○Power Pointによるスライド等、スクリーンに投影される情報を、視覚障害者が理解できる形で提供する  ○視覚障害者のアクセシビリティを考慮したウェブサイトを構築する 【17】Web アクセシビリティチェックリスト  ○画像にはalt属性を使用して代替テキストを提供  ○キーボードでアクセス可能なスクリプトを提供  ○ナビゲーション・リンクを飛び越えて、ページの本文へスキップ可能に  ○コンテンツを点滅、フリッカー(ちらつき)、移動させない  ○アクセシビリティを確保できない場合は、同等の情報や機能をもつテキストのみのページを提供  出典:http://www-6.ibm.com/jp/accessibility/guideline/accessweb.html 【18】課題  ●会の主催者および個々の発表者に対する理解啓発  ●資料の著作権の問題  ●視覚障害者がよりアクセスしやすいハードウェア、ソフトウェアの開発 【19】バリアフリー研究に求めたいこと  ○現状とニーズの正確な把握  ○多領域の専門家による研究・開発協力  ○偏りのないユーザー評価  ○普遍性のあるデザイン・設計  ○既存のアイデアや製品の有効活用  ○「誰にとっても使いやすい」「視覚障害者にとって特に使いやすい」の両方を考慮 【20】<主要文献>  鳥山由子監修、青松利明・青柳まゆみ・石井裕志・鳥山由子編著(2005) 視覚障害学生サポートガイドブック.日本医療企画.