イベント企画
クラウド時代における知的社会基盤のサステナビリティを考える
9月9日(金)9:30-12:00
第1イベント会場 (函館大学 2F大講義室262)
【セッション概要】クラウドコンピューティングが急速に広がる中、その社会基盤としてのサステナビリティと法制度に関する関心が高まってきた。クラウドコンピューティングではサービスやタスクが様々なハードウエア、ソフトウエアにより分業、統合される。結果、1つのサービスやタスクに多数のアクターが関与する。1冊の書籍の1つの文字を表示するという微細なタスクにも、そこに介在し得るアクターや権利関係の複雑さに上限はない。
さらにインターネットというグローバルなシステム上に構築されるため、サービスの単純さからは想像できないほど多くの地域や、それによって異なる法律が関与する可能性がある。その社会基盤としての複雑さは人類未踏の領域である。
本シンポジウムでは、クラウドコンピューティングを情報社会基盤における重要な潮流ととらえ、知的財産のサステナビリティと法制度においてどのような課題が提示されているか、各テーマの最前線で活躍されている方々にご講演いただく。これらの講演を通して、クラウドコンピューティングというきわめて重要な技術の、さらなる発展に寄与することができれば幸いである。
司会:金子 格(東京工芸大学 工学部コンピュータ応用学科 准教授)
【略歴】1982年早稲田大学大学院理工学研究科修士前期課程修了。同年日立製作所。1985-2001年アスキー。1993-1996年グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズ研究員(出向)。2003年早稲田大学理工学総合研究センター客員研究員。東京工芸大学准教授(現職)。ISO/IEC 14496-21Editor。情報処理学会・情報規格調査会SC29/WG11systems小委員会主査。情報処理学会EIP研究会幹事。
9:30-9:35 オープニング
9:35-10:05 講演-1 永続されるべき価値とはなにか ~クラウド化が迫る社会的価値選択~
松王 政浩(北海道大学 大学院理学研究院 教授)
【講演概要】クラウド時代における知的社会基盤のサステナビリティを考える場合、永続すべき「価値」が何であるかという問いがなされなければならない。情報哲学者のL. フロリディは、クラウド化の進行により、我々はますます物質から解き放たれ、「情報空間」との有機的な統合の中で、「第4の科学革命」がもたらされると述べ、概ねこの事態を歓迎する。一方、R. ストールマンは企業による個人の自律の阻害が進むとして、クラウド化に強い批判的態度をとる。両者には「社会的善」と「個の自律」の重み付けに違いがあると思われるが、我々はクラウド化の進行が、ある種の社会的価値選択を伴うことを自覚する必要がある。価値設計問題としてのクラウドについて考えてみたい。
【略歴】京都大学大学院文学研究科博士課程修了。静岡大学情報学部助教授を経て、現在、北海道大学大学院理学研究院教授。科学の一般的方法をめぐる科学哲学に関する研究、科学技術と社会・個人の関係についての倫理問題研究を行っている。情報技術については、これまで衛星測位技術、ICチップ、防犯カメラをめぐる社会的問題(surveillance問題)、あるいは社会のバーチャル化に伴う諸問題を主に扱ってきた。知的所有問題にも関心が深い。
10:05-10:35 講演-2 スマート・クラウド戦略の最新動向
中村 裕治(総務省 情報通信国際戦略局 融合戦略企画官)
【講演概要】総務省では、クラウドサービス(クラウドコンピューティング技術を活用したサービス)の普及促進を図る観点から、「スマート・クラウド研究会」を開催し、昨年5月、「スマート・クラウド戦略」と題する報告書を取りまとめた。本報告書は、クラウドサービス普及による情報通信技術(ICT)の利活用の徹底、次世代クラウド技術の研究開発の方向性、クラウドサービスの標準化の在り方、国際的なコンセンサス醸成の必要性等について、各種提言が行われている。本講演では、この「スマート・クラウド戦略」の内容を解説するとともに、総務省としてクラウドサービスを普及させるための取組状況の紹介や今後の方向性について展望する。
【略歴】1995年 郵政省(現 総務省)入省。2007年 在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官。2010年 総合通信基盤局電波政策課統括補佐。2011年7月より、現職。
10:35-11:05 講演-3 クラウド・コンピューティングのリスクと法的課題
町村 泰貴(北海道大学 大学院法学研究科 教授)
【講演概要】クラウド・サービスの利用者は、アクセスは可能でも管理権限は持たない仮想コンピュータ上に自らのデータとプログラムを保有し、インターネットを通じて利用する。パブリック・クラウドの場合は複数の利用者がディスク領域やシステムを共用する。また仮想コンピュータは単一のディスク領域にあるとは限らず、分散している場合もありうる。ディスクの所在地すらも利用者が把握していないこともありうる。こうした特徴から、クラウド・サービス・プロバイダによる利用者のデータの滅失や流出のリスク、あるいはプロバイダの倒産による同様のリスクに対して、利用者が十分な防御策を施すことができない場合も出てくる。本報告は、こうしたリスクについて、法的な問題点を指摘して、回避可能性を検討したい。
【略歴】1986年北海道大学大学院法学研究科修士課程修了後、小樽商科大学、亜細亜大学、南山大学の教員を経て、2007年より現職。専攻は民事訴訟法・サイバー法。
11:05-11:35 講演-4 クラウド時代におけるマルチエージェントシステム
櫻井 祐子(九州大学 大学院システム情報科学研究院 准教授)
【講演概要】本講演では、マルチエージェントシステムについて概観するとともに、クラウドコンピューティングを安定かつ持続可能なシステムとする基盤技術としてエージェントの相互作用のプロトコルの設計方法などについて発表する。マルチエージェントシステムは、複数の自律的に行動するエージェントから構成されるシステムであり、次世代の分散システムを構築する中核的技術として盛んに研究が進められている。自律分散システムにおいて社会資源や環境資源をいかに効率的に利用するか、持続可能なシステムをどう実現するかは重要な課題であり、マルチエージェントシステムの技術が大きく貢献できると考えられる。
【略歴】1997年名古屋大学大学院多元数理科学研究科修士課程修了。同年 日本電信電話株式会社に入社。2007年より 日本学術振興会特別研究員 (RPD)。2009年より ヤフー株式会社。2010年より科学技術振興機構ERATO研究員。2011年より九州大学大学院システム情報科学研究院准教授。マルチエージェントシステム、電子商取引に関する研究に従事。博士 (工学)。人工知能学会、情報処理学会各会員。
11:35-12:00 パネル討論
司会:金子 格(東京工芸大学 工学部コンピュータ応用学科 准教授)
【略歴】1982年早稲田大学大学院理工学研究科修士前期課程修了。同年日立製作所。1985-2001年アスキー。1993-1996年グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズ研究員(出向)。2003年早稲田大学理工学総合研究センター客員研究員。東京工芸大学准教授(現職)。ISO/IEC 14496-21Editor。情報処理学会・情報規格調査会SC29/WG11systems小委員会主査。情報処理学会EIP研究会幹事。
パネリスト:松王 政浩(北海道大学 大学院理学研究院 教授)
【略歴】京都大学大学院文学研究科博士課程修了。静岡大学情報学部助教授を経て、現在、北海道大学大学院理学研究院教授。科学の一般的方法をめぐる科学哲学に関する研究、科学技術と社会・個人の関係についての倫理問題研究を行っている。情報技術については、これまで衛星測位技術、ICチップ、防犯カメラをめぐる社会的問題(surveillance問題)、あるいは社会のバーチャル化に伴う諸問題を主に扱ってきた。知的所有問題にも関心が深い。
パネリスト:中村 裕治(総務省 情報通信国際戦略局 融合戦略企画官)
【略歴】1995年 郵政省(現 総務省)入省。2007年 在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官。2010年 総合通信基盤局電波政策課統括補佐。2011年7月より、現職。
パネリスト:町村 泰貴(北海道大学 大学院法学研究科 教授)
【略歴】1986年北海道大学大学院法学研究科修士課程修了後、小樽商科大学、亜細亜大学、南山大学の教員を経て、2007年より現職。専攻は民事訴訟法・サイバー法。
パネリスト:櫻井 祐子(九州大学 大学院システム情報科学研究院 准教授)
【略歴】1997年名古屋大学大学院多元数理科学研究科修士課程修了。同年 日本電信電話株式会社に入社。2007年より 日本学術振興会特別研究員 (RPD)。2009年より ヤフー株式会社。2010年より科学技術振興機構ERATO研究員。2011年より九州大学大学院システム情報科学研究院准教授。マルチエージェントシステム、電子商取引に関する研究に従事。博士 (工学)。人工知能学会、情報処理学会各会員。