情報科学技術レターズ巻頭言

 情報処理学会,電子情報通信学会情報・システムソサイエティおよびヒューマンコミュニケーショングループが共同開催する情報科学技術フォーラム(FIT: Forum on Information Technology)は,2002年に創設され今回が第6回となる日本の情報科学分野最大の学会大会である.情報科学技術レターズにはFIT2007で発表される論文が収録されている.
 FIT2007では,特に各分野に所属する研究会が担当する研究分野間の関連と各分野に対する投稿件数の均一化を念頭に置いて本会議に参加する62の研究会を15の分野に再編成した.そして,FIT情報科学技術レターズに掲載される論文が学会論文誌に掲載されているレター,テクニカルノート,ショートペーパー,研究速報等と同等の位置付けであることを確認した上で論文を査読した.このために,各分野に分野責任者を置き,各研究会から推薦された担当委員と協力して,それぞれの分野で独立に論文査読の検討と実施を行う体制を作った. また,分野の特質を反映した分野ごとの基準による査読を行うという方針を維持しつつも,一方で問題となっていた分野間の査読基準の相違を解消するために,査読に対する基本的な枠組を定めるために査読基準を策定した.
 以上の過程を踏まえて,6月18日に査読会議とプログラム編成会議を行い,採択論文を決定した上で,大会プログラムを策定した.論文査読を行った各分野の投稿数,採択件数,採択率は次の通りである.

 分野名
投稿数
採録件数
採録率
A:モデル・アルゴリズム・プログラミング
22
9
40.9%
C:ハードウェア・アーキテクチャ
21
13
61.9%
D:データベース
18
6
33.3%
E:自然言語・音声・音楽
32
9
28.1%
F:人工知能・ゲーム
28
14
50.0%
G:生体情報科学
15
6
40.0%
H:画像認識・メディア理解
37
12
32.4%
I:グラフィクス・画像
27
10
37.0%
J:ヒューマンコミュニケーション&インタラクション
26
12
46.2%
K:教育工学・福祉工学・マルチメディア応用
24
8
33.3%
L:ネットワーク・セキュリティ
28
13
46.4%
M:ユビキタス・モバイルコンピューティング
40
14
35.0%
N:教育・人文科学
19
6
31.6%
O:情報システム
14
5
35.7%
合計
351
137
39.0%
 以下の10編は,FIT2007学術賞選定委員会が採録された査読付き論文の中から所定の選定手続きを経て選んだFIT2007論文賞最終候補である.

 ・Analysis of an Edge Coloring Algorithm Using Chernoff Bounds(謝 旭珍/名大)
 ・自動メモ化プロセッサの消費エネルギー評価(島崎裕介/名工大)
 ・Relative Innovatorの発見によるパーソナライズ手法の提案(川前徳章/NTT)
 ・大規模自律エージェントシステムにおける契約ネットプロトコルの効率特性(菅原俊治/早大)
 ・ノイズのある環境下でオンライン学習が可能な自己増殖型ニューラルネットワークを用いた
  連想記憶モデル(須藤明人/東工大)
 ・低品質文字列を認識するための文字間空隙特徴の利用(石田皓之/名大)
 ・“No news is good news”規準を利用した行動教示の学習(田中一晶/京都工繊大)
 ・OS資源ビューの仮想化を用いた分散システムテストベッド(西川賀樹/東大)
 ・P2Pネットワークのための分散ハッシュ型認証手法(武田敦志/東北文化学園大)
 ・視覚障害者向け案内システムの実証的評価(深澤紀子/鉄道総研)

 最後になったが,査読プロセスの運営および論文賞候補選考にご尽力頂いたFIT2007プログラム委員会およびFIT2007学術賞選定委員会の方々,短い期間に論文査読の責務を果たして頂いた査読者の方々に深く感謝する.
FIT2007 プログラム委員会
FIT2007 学術賞選定委員会
 委員長  山下 雅史
 
FIT2007 第6回情報科学技術フォーラム 論文査読者一覧