情報科学技術レターズ巻頭言

 情報科学技術レターズは,情報処理学会,電子情報通信学会情報・システムソサイエティおよびヒューマンコミュニケーショングループが共同開催する情報科学技術フォーラム(FIT: Forum on Information Technology)で発表される論文を収録した論文集です.2002年に創設されたFITは今回で第5回目を迎え,日本における情報科学分野の最大の学会大会として認知されています.
 今回のFITでは,分野と研究会の多様性が反映されるよう配慮された前回大会の論文査読体制を概ね踏襲しました.まず,新設の研究会・委員会を含めて合計62研究会を15分野に再編成した上で,各分野に分野責任者を置き,各研究会から推薦された担当委員と協力して,それぞれの分野で独立に論文査読の検討と実施を行う体制をつくりました.次に,査読付き論文を受け入れる分野では,FIT情報科学技術レターズに掲載された論文が,学会論文誌に掲載されているレター,テクニカルノート,ショートペーパー,研究速報等と同等の位置づけであることを確認した上で,分野の特質を反映した分野ごとの基準で論文を査読いたしました.また,過去の大会で論文が採択された著者にアンケートを実施し,採択されたことが正当に評価されていることを確認いたしました.以上の過程を踏まえて,6月20日に査読会議とプログラム編成会議を行い,採択論文を決定した上で,大会プログラムを策定しました.論文査読を行った各分野の投稿数,採択件数,採択率は次の通りです.

 分野名
投稿数
採録件数
採録率
A:モデル・アルゴリズム・プログラミング
12
4
33.3%
C:ハードウェア
11
7
63.6%
D:データベース
26
8
30.8%
E:自然言語
20
5
25%
F:人工知能・ゲーム
18
8
44.4%
G:音声・音楽
6
3
50%
H:生体情報科学
14
8
57.1%
I:画像認識・メディア理解
48
18
37.5%
J:グラフィクス・画像
34
12
35.3%
K:ヒューマンコミュニケーション&インタラクション
54
21
38.9%
L:ネットワークコンピューティング
49
16
32.7%
N:教育・人文科学
19
4
21.1%
O:情報システム
17
6
35.3%
合計
328
120
36.6%
 さらに,FIT2006学術賞選定委員会は所定の選定手続きを経て,採録された査読付き論文の中から優秀であると認められる次の10編をFIT2006論文賞最終候補に選びました.

 ・Proposal of Dependable Clock Signal Distribution (三浦幸也)
 ・ダブル配列におけるキャッシュの効率化  (矢田 晋)
 ・共起確率行列を用いた数式文字認識の誤り訂正法の評価 (瀧口祐介)
 ・楽譜記述言語MusicXMLからの楽譜自動点訳システム (田村直良)
 ・SMTPセッションの強制切断によるspamメール対策手法 (山井成良)
 ・列車ダイヤ乱れ時における経路選択支援システムとその利用者行動への影響把握 (土屋隆司)
 ・MCMC法に基づく3次元環境情報を用いた複数人物追跡 (大澤達哉)
 ・単一周波数平面スペクトル拡張を利用した時間同期外し耐性を持つ動画電子透かし (山本 奏)
 ・DMDを用いた空間分割型可視光通信の基礎検討 (北村匡彦)
 ・言語識別技術を応用した英語における母語話者文書・非母語話者文書の判別 (青木さやか)

以上の皆様には,心からお慶び申し上げます.
 末筆ながら,査読プロセスの運営および論文賞候補選考にご尽力いただいたFIT2006プログラム委員会およびFIT2006学術賞選定委員会の皆様,短い期間に論文査読の責務を果たしていただいた査読者の皆様に深く感謝いたします.
FIT2006 プログラム委員会
FIT2006 学術賞選定委員会
 委員長  湯淺 太一
 
FIT2006 第5回情報科学技術フォーラム 論文査読者一覧