情報技術レターズ巻頭言
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昨年9月、東京工業大学で開催された最初のFITを引き継いで、第2回目が札幌学院大学での開催が決まるまでの経緯はほとんど良くわからないままに、多分北海道開催なら地元北大からという配慮からか、電子情報通信学会情報・システムソサエティ(ISS)会長の東工大の小川英光先生からのコンタクトもあって、今回のプログラム委員長をお引き受けすることになった。前のFIT推進委員会委員長の大阪工大の池田克夫先生が司会進行を努めるFIT推進委員会に、今回の実行委員長の東北大白鳥則郎先生と一緒に出席して、最初は何が何だかわからぬままに、前回の実行委員長の東工大中嶋正之先生、プログラム委員長の京大上林弥彦先生からやり方を引き継いで、事務局の助けも借りながらどうにか論文査読、FIT論文賞(ベストペーパ賞候補)選定、プログラムの編成作業まで漕ぎ着けた。 前回FIT2002の反省点の一つとして、初回のこともあり論文件数が少なかったのではないか、FITを発展させるためには論文発表者や参加者を増やすべきだ、というのがあった。これには反論もあり、従来のような査読なしの学会発表では、発表論文の質を考慮しないで、数さえ増えればよいという風潮がある。FITはこれに一石を投じて、質の高い論文発表の場にするので数の問題ではないという意見もあって、それはそれで筋が通っている。しかし、やはり参加する人が多くなっていかなければFITの設立時に意図したものが実現されないだろうし、発表者も含めた参加者が増えないと、財政的にも大変なことは前回でも経験済で、それは今回にも影を落としている。 幸いにも、今回の講演申込み件数は1144件と前回の899件から大幅に増加した。査読付き論文の件数も今回は448件と前回の371件を2割ほど上回った。査読作業、プログラム編成の関係もあり、理想的には講演申込み数が均等化されるように15分野を設定して応募を受け付けている。結果として、今回は人工知能、グラフィック、ヒューマンコミュニケーション、ネットワーク、情報システムへの応募が約倍になっている(資料参照)。このような分野ごとの応募件数の増減はその年の特殊事情なのか、あるいは研究を取り巻く諸々の事柄による長期的傾向なのか、3年間ほどの統計をとってみて、分野の再編成も来年度以降の課題であろう。 論文査読に関しては情報処理学会(IPSJ)の領域委員長および研究会主査、ISSの研究会委員長を始め関係者の御協力のもとで、特に大きなトラブルもなく作業が進行した。これは、今年から分野ごとに分野責任者を1名決めて、査読やプログラム編成作業が円滑に行えるようにした効果もあったと思われ、この点負担の大きかった分野責任者に御礼申し上げる。 査読の際の採択率は前回にならって各分野に1/3を目安に採択をお願いして、ほぼこの数字に収まっている。論文賞の枠は10名で、10名近くの候補者になるように各分野に絞り込んでの推薦を頂いたが、こちらは20名の候補者があがってきて、これらの候補者を対象にメールによる投票で10名を決定している。学会の初日に、この10件に発表を行って頂き、船井ベストペーパ賞3件を決定し、翌日に表彰するスケジュールが、前回とは変わった点である。今回も査読作業が関係者に大きな負担を強いる点は前回と同じで、この点に関しては前回、今回と査読作業に関係して来て、次回FIT2004のプログラム委員長、東大の萩谷昌己先生が新機軸を打ち出されるだろうと思っている。 今回は実行委員会とプログラム委員会が合同で作業を進めて来ていて、大人数の両委員会を代表する形で幹事会を設けて、メール等により具体的な処理を行ってきており、両委員会の委員長と幹事会の萩谷昌己、梅山伸二、村上篤道、脇本浩司、北村泰彦、石畑 清の各氏には色々お骨折り頂いた。 プログラムの目玉には船井業績賞の選定と受賞者の特別講演への招待があり、これに関する手続きがはっきりしていなくて、プログラム委員長をお引き受けした時にはこれが一番頭の痛かった点である。幸い人工知能で著名なMITのM.ミンスキー教授に打診して同教授に決まり、現FIT推進委員長(議長)の慶應応義塾の安西祐一郎塾長、次期FIT推進委員長(議長)の阪大の白井良明先生も同教授と知り合いの仲である点、うまい組み合わせができたと思っている。FIT論文賞とヤングリサーチャー賞の規程を定めることは、京大の美濃導彦先生らの努力で固まってきていて、これに加えて次回あたりから業績賞選定の規則をきちんとしていく点が課題として残されている。 FIT2003が終わるまでは、何が起こるか分からないぞと思う一方、「情報技術レターズ」の発行までたどり着いたとの思いがある。これも関係者諸氏の努力の結果であり、プログラム委員長としてこの巻頭言を借りて関係者の皆さんに御礼申し上げます。 |
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2003年7月
FIT2003プログラム委員長 青木由直 |
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(資料)分野別の前回と今回の申込み件数比較 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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