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ホーム学会案内各賞の紹介論文賞平成11年度〜>平成13年度論文賞の表彰
最終更新日:2003.11.28

平成13年度論文賞の表彰

 

 本賞の選考は、表彰規程および論文賞受賞候補者選定手続に基づき、論文賞委員会(委員長 村岡洋一)が、情報処理学会論文誌第41巻10号〜第42巻9号に掲載された対象論文441編につき慎重に審議を行いました。その結果、下記の9編が受賞候補論文として選定され、第473回理事会(平成14年3月)の承認を得て決定されました。なお、本会表彰規程により、第44回通常総会(平成14年5月)において著者に表彰状、賞牌および賞金が授与されました。

 



「語と文書の共起に基づく特徴度の数量的表現について」(Vol.41,No.12)

[論文概要]

 本論文では語と文書の共起関係に注目し、与えられた文書集合中での語の特徴度の量的表現やその適用について、情報量的な観点から考察を加えてた。情報検索の分野において今日広く用いられている語の「tf-idf」重み付け法が、語頻度と情報量をかけあわせた尺度として解釈できることを示し、これに基づき語の特徴度を「語の出現確率」と「語の持つ情報量」の積の形で一般的に定義した。実験では用語抽出タスクへの適用を通して、提案する特徴量尺度の有用性を検証した。

[推薦理由]

 本論文では,情報検索,文書分類,用語抽出などで用いられる語の特徴量の尺度について,情報量の観点から明解な視点を与えている.特に,従来より経験的に良い指標とされてきたTF・IDF尺度がこの枠組から導出されることを示すとともに,今までアドホックに選択されていた尺度に対して,確率モデルによる裏付けができるという基礎を与えている.さらに,現実の文書集合において,TF・
IDF尺度の情報量的な解釈の妥当性を検証し,用語抽出へ適用可能性を示している.
 上記の点において,本論文は関連分野の多くの読者に対し有用な知見を与えるものであり,そのオリジナリティ,論点の明解さは秀逸である.よって,本論文を論文賞に推薦する.

相澤 彰子

相澤 彰子君
 1985年東京大学工学部電子工学科卒業。1990年同大学院電気工学専攻博士課程修了。工学博士。1990年から1992年、イリノイ大学アーバナ・シャンペイン校客員研究員。現在、国立情報学研究所助教授。統計的テキスト処理、遺伝的アルゴリズム、情報流通システム等の研究に従事。

 


「非数値計算応用向けスレッド・レベル並列処理マルチプロセッサ・アーキテクチャSKY」(Vol.42,No.2)

[論文概要]

 非数値計算向けスレッド・レベル並列処理マルチプロセッサアーキテクチャを提案する。複数のプロセッサを単一チップに集積し、メモリを介さずレジスタ値を直接送受信することで、同期/通信を高速化する。新しく命令ウインドウ上でレジスタに対する同期を行う機構を導入することで、受信待ちの命令に後続する命令の実行を可能にする。評価の結果、本論文で提案するマルチプロセッサアーキテクチャは、8命令発行の2つのスーパスカラ・プロセッサにより構成した場合、16命令発行のスーパスカラ・プロセッサに対して、最大46.1%、平均21.8%の高い性能を達成できることを確認した。

[推薦理由]

 近年、スーパスカラに代わる新しいマイクロプロセッサのアーキテクチャとして単一チップマルチプロセッサが注目されている。マルチプロセッサが汎用マイクロプロセッサとして実用化されるためには、小さな並列性しか有さない非数値計算プログラムにおいて効率良く並列性を引き出すことが要求される。本論文ではこのような要求に対し、従来に比べ極めて小さなオーバヘッドで並列性を引き出すことが可能なだけでなく、従来とは異なり受信待ちの命令が並列性の利用を阻害することのないマルチプロセッサのアーキテクチャを提案している。提案のマルチプロセッサは高性能を達成できることを確認している。本研究は今後のマイクロプロセッサの研究に大きな貢献をすると期待できる画期的なものである。

小林 良太郎

小林 良太郎君
 1995年名古屋大学工学部電子情報学科卒業.1997年名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻博士課程前期課程修了.2000年名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻博士課程後期課程満了.工学博士.2000年名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻助手.1999年情報処理学会山下記念研究賞受賞.

 

小川 行宏

小川 行宏君

 1998年名古屋大学工学部電子情報学科卒業.2000年名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻博士課程前期課程修了.同年,岐阜県製品技術研究所.2001年岐阜県生産情報技術研究所.

岩田 充晃

岩田 充晃君

 1996年名古屋大学工学部電子情報学科卒業.1998年名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻博士課程前期課程修了.同年,三菱重工業(株)に入社.

安藤 秀樹

安藤 秀樹君

 1981年大阪大学工学部電子工学科卒業.1983年大阪大学大学院修士課程修了.京都大学工学博士.1983年三菱電機(株)LSI研究所.1991年Stanford大学客員研究員.1998年名古屋大学助教授.1998〜2001年東京大学大学院理学系研究科助教授併任.1998年情報処理学会論文賞受賞.

島田 俊夫

島田 俊夫君

 1968年東京大学工学部計数工学科卒業.1970年東京大学大学院修士課程修了.同年電子技術総合研究所入所.1993年より名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻教授.最近はマイクロプロセッサのアーキテクチャやチップ内並列処理の研究に従事.1988年度市村賞,1994年度情報処理学会論文賞,1995年注目発明賞受賞.工学博士.

「ソフトウエアプロセスの持続的な改善を誘導するチェックリストの実装手順」(Vol.42,No.3)

[論文概要]

 ソフトウエアプロセスの持続的な改善を促す方法論としてCMMが注目されてきている.このモデルを応用した改善活動の中核ツールであるチェックリストは,現場の今の成熟度を診断するためだけでなく,会社が期待する成熟度レベルに向けて現場を誘導するための手段ともなる.よって、その効果的な実装方法を追究する価値がある.筆者らは,過去10年近くCMMを参考にした改善活動を実践する過程でチェックリストの実装手順を確立し、多くの実プロジェクトに適用してその実用性を確認した.本稿では,現状の諸課題を入力として5段階の処理を経て目的とするチェックリストを生成する実装手順を提案した.
 Capability maturity model and CMM are registered trademarks in the U.S. Patent and Trademark Office.

[推薦理由]

 ソフトウェアプロセスの改善のための能力成熟度モデル (CMM: Capability Maturity Model) は,プロセス改善を行うにあたっての概念的共通理解を与える参照モデルとしては優れているが,実際の組織活動にこれを適用するには周到な実行方策を必要とする.本論文では,プロセス改善活動の要として,適切な構造と作業確認項目をもつプロセスのチェックリストを作成・運用し充実させる方法を述べている.長年の実践とコストを投入した一組織の成果が公表されたもので,他の組織にとって参照価値の高い論文である.人間の活動が主体となるプロセスには,その改善に向けての暗黙知の存在が認識されても,それを記録・整理・分析し体系化することは,それ自体が持続的で忍耐を要する作業であり,それを成果に導いたことにも敬意を表されるべきである.

福山 峻一

福山 峻一君
 1968年大阪大学基礎工学部制御工学科卒業.同年日本電信電話公社入社.同社電気通信研究所にて言語処理プログラムやネットワーク分散型ソフトウェア開発環境などの研究に従事.1994年NTTソフトウェア(株)入社.ソフトウェアの開発管理とプロセス改善に従事.2001年4月より鳥取環境大学環境情報学部・情報システム学科教授.博士(工学).電子情報通信学会,経営情報学会などの会員.

 

高木 英雄

高木 英雄君

 1977年東京工業大学修士課程情報科学専攻終了.同年メーカ系ソフトハウスに入社.科学技術計算アプリケーションの開発・運用に従事.1987年NTTソフトウェア(株)入社.開発合理化推進本部に所属し,品質保証やソフトウェア開発プロセスの改善に従事.現在,同社法務考査室勤務.

田中 僚史

田中 僚史君

 1983年神奈川工科大学電気工学科卒. ソフトウェアハウスを経て1985年NTTソフトウェア(株)入社.大規模システムの開発から先端技術ソフトの試作開発などに幅広く従事.1990年から全社開発合理化の推進およびCMMのモデルの社内導入に従事.2000年から,社内CMM導入の成功事例による社外へのソフトウェアプロセス改善サービスを提供するカスタマーソリューションコンサルティングセンター所長.現在,同社eプロセス推進部長.

渡辺 道広

渡辺 道広君

 1986年茨城大学工学部情報工学科卒業.同年NTTソフトウェア(株)入社.コンパイラ開発,ソフ トウェア開発プロセスの改善,およびパッケージSI業務に従事.現在,インターネット・ソリューション事業部勤務.

中林 效

中林 效君

 1966年京都大学工学部修士課程数理工学修了.同年電信電話公社電気通信研究所入社.電子交換プログラムの開発に従事.1986年,NTTソフトウェア(株)入社.各種ソフトウェアの開発管理とプロセス改善に従事.2002年1月に定年退職し現在に至る.

「排他的なメソッドの並行な呼び出しを融合する機構を持つ言語」(Vol.42,No.SIG2)

[論文概要]

 並行拡張されたオブジェクト指向言語に,排他的なメソッドの複数の並行な呼び出しを融合する機構を導入する方法を示す.通常それらの呼び出しは逐次化される.本機構は,逐次化された結果として実行待ち状態にある複数の排他的なメソッドの呼び出しを融合する.具体的には,それらの呼び出しを単一の呼び出し等のより高速な処理に動的に切り替える.例えば,カウンタオブジェクトに対する,1を加算するメソッドの呼び出しと,2を加算するメソッドの呼び出しを融合して,3を加算するメソッドのみを呼び出す.我々は本機構を持つ言語を実装し,Sun Enterprise 10000上で本機構が与える性能向上を測定した.

[推薦理由]

 並行拡張されたオブジェクト指向言語においては、オブジェクトの整合性を保つために メソッド間の排他的実行は不可欠であるが、しばしば性能上のボトルネックとなる。本論文は、これを解消すべく、排他的に実行される複数のメソッド呼び出しを融合する機構を提案するものである。これによりロックの獲得頻度が下がり、性能向上が期待されるのであるが、本論文は、実際に融合機構を実装しそれを確認しており、優れて実用性の高い内容となっている。さらに、具体的な融合場面を複数列挙している点、融合規則を各メソッドとは別に記述する点、 その実装としてキュー上に格納された呼び出しのインスタンスのマッチングに基づく点等、並行言語の設計や実装の観点から非常に示唆に富んだものとなっている。

大山 恵弘

大山 恵弘君
 1973年生.2001年東京大学大学院にて博士(理学)取得.現在,科学技術振興事業団さきがけ研究21研究員として筑波大学で計算機システムのセキュリティの研究に従事.興味はセキュリティ,システムソフトウェア,プログラミング言語,並列分散処理.

田浦 健次朗

田浦 健次朗君

 1969年生.1997年,東京大学大学院理学博士(情報科学専攻).1996年より東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻助手.2001年より東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻講師.2002年より同専攻助教授.並列・分散処理,プログラム言語に興味を持つ.ACM, IEEE, 情報処理学会,ソフトウェア科学会,会員.

米澤 明憲

米澤 明憲君

 1947年生.1977年 Ph. D. in Computer Science (MIT).1989年より東京大学情報理工学系コンピュータ科学専攻教授.並列・分散・協調ソフトウェアアーキテクチャなどに興味を持つ.ドイツGMD科学顧問,ACM TOPLAS副編集長,IEEE Parallel & Distributed TechnologyおよびComputer編集委員などを歴任,元日本ソフトウェア科学会理事長,総合規制改革会議委員,米国学会ACMの Fellow.

「スーパースケーラのための高速な動的命令スケジューリング方式」(Vol.42,No.SIG9)

[論文概要]

 スーパースケーラ・プロセッサは,動的命令スケジューリングのため,命令の実行に必要なデータの有効性を追跡するwakeupと呼ぶロジックを持つ.従来のwakeupは,データに割り当てられたタグによる連想処理に基づくもので,RAMを読み出した結果でCAMをアクセスするという構造を持ち,LSIの微細化,パイプラインの深化にともなっていっそうクリティカルになっていくと予測されている.本稿ではwakeupを高速化する方式について述べる.本方式は,タグに基づく連想処理ではなく,命令間の依存関係を直接的に表現するテーブルを用いるもので,単にRAMを読み出すことでwakeupを実現することができる.さらに本稿では,このロジックの遅延をIPCに対するペナルティに転化する手法を示す.実在する0.18mum CMOSプロセスのデザイン・ルールに基づいてこれらのロジックを設計し,回路の面積を求め,Hspiceによって遅延を測定した.また,シミュレーションによって,ペナルティを測定した.その結果,3%以下のペナルティを代償に,2GHzを超える最高動作周波数を達成できることが分かった.

[推薦理由]

 本論文は,スーパースカラ・プロセッサの動的命令スケジューリング・ロジックの複雑さを飛躍的に緩和する手法について述べている.本論文で提案されている手法は,命令間のデータ依存関係を表す行列を採用することで,30年来用いられてきたタグによる連想処理を省略するもので,極めて独創性に富んでいる.また,評価によってその有効性を示しているが,実存する半導体プロセスのパラメータを用いた回路設計を行うことで信頼性のある評価を行っている点も優れている.現在ではスケジューリング・ロジックの遅延が実際にスーパースカラ・プロセッサの動作速度を律速しつつあり,提案手法は現実のプロダクトに対しても多大な貢献を果たすものと考えられる.

五島 正裕

五島 正裕君
  1968年生.1992年京都大学工学部情報工学科卒業.1994年同大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.同年より日本学術振興会特別研究員.1996年京都大学大学院工学研究科情報工学専攻博士後期課程退学,同年より同大学工学部助手.1998年同大学大学院情報学研究科助手.高性能計算機システムの研究に従事.2001年情報処理学会山下記念研究賞受賞.

西野 賢悟

西野 賢悟君

  1978年生.1994年大府市立大府西中学校卒業.1997年愛知県立旭丘高校卒業.2001年京都大学工学部情報学科卒業.同年より同大学大学院情報学研究科修士課程に進学.プロセッサ・アーキテクチャの研究に従事.

グェン ハイハー

グェン ハイハー君

 1974年生.1991年ハノイ大学付属数学専門高等学校卒.1993年ハノイ大学工学部退学.1999年京都大学工学部情報工学科卒業.2001年同大学大学院情報学研究科修士課程修了.同年(株)京都ソフトウェアリサーチ入社,フラッシュ・ファイル・システムの開発に従事.

縣 亮慶

縣 亮慶君

 1977年生.1992年京都市立成徳中学校卒業.1997年国立舞鶴工業高等専門学校電気工学科卒業.1999年京都大学工学部情報学科卒業.2001年 同大学大学院情報学研究科修士課程修了.プロセッサ・アーキテクチャの研究に従事.

中島 康彦

中島 康彦君

  1963年生.1986年京都大学工学部情報工学科卒業.1988年同大学大学院修士課程修了.同年富士通(株)入社.スーパコンピュータVPPシリーズのVLIW型CPU,Mアーキテクチャ・命令エミュレーション,高速CMOS回路等に関する研究開発に従事.工学博士.1999年京都大学総合情報メディアセンター助手.同年 同大学大学院経済学研究科助教授.計算機アーキテクチャに興味を持つ.IEEECS,ACM各会員.

森 眞一郎

森 眞一郎君

  1963年生.1987年熊本大学工学部電子工学科卒業.1989年九州大学大学院総合理工学研究科情報システム学専攻修士課程修了.1992年同大学大学院総合理工学研究科情報システム学専攻博士課程単位取得退学.同年京都大学工学部助手.1995年同助教授.1998年同大学大学院情報学研究科助教授.工学博士.並列slash 分散処理,計算機アーキテクチャの研究に従事.IEEE,ACM各会員.

北村 俊明

北村 俊明君

  1955年生.1978年京都大学工学部情報工学科卒業.1983年同大学大学院博士課程研究指導認定退学.同年富士通(株)入社.汎用コンピュータ,スーパーコンピュータVPPシリーズのVLIW型CPU,Mアーキテクチャ・命令エミュレーション,米国HAL社においてSPARCプロセッサ等の研究開発に従事.工学博士.2000年京都大学総合情報メディアセンター助教授.計算機アーキテクチャに興味を持つ.電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員.

富田 眞治

富田 眞治君

  1945年生.1973年京都大学大学院博士課程修了,工学博士.同年京都大学工学部情報工学教室助手.1978年同助教授.1986年九州大学大学院総合理工学研究科教授.1981年京都大学工学部情報工学科教授.1998年同大学大学院情報学研究科教授.計算機アーキテクチャ,並列計算機システムに興味を持つ.著書「並列計算機構成論」,「並列処理マシン」,「コンピュータアーキテクチャI」等.電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員.

「教育用大規模計算機システムにおける管理の省力化手法」(Vol.41,No.12)

[論文概要]

 教育用の大規模計算機システムは、広範囲に分散配置されていること、平日昼間は常時使用されることなどから設定の更新や保守の担当者の負担が大きい。本論文で提案するパッチシステムでは、設定変更や更新すべきアプリケーションプログラムをパッチ・スクリプトの形でサーバが提供する。管理対象端末で自律的に動作する管理プログラムは利用者のログアウトを待つなど適切な時刻を見つ
けてパッチを適用する。スクリプト形式をとることにより、端末個別の設定も容易に記述することができる。また、初期状態からの差分がすべて蓄積されているので、 ハードディスク交換後の設定復旧も自動的に行なえる。

[推薦理由]

 多数の端末を有する大規模な教育用計算機システムを、常に最新の状態を維持し、かつ、正常にサービスを提供し続けさせるためのシステマティックな方法は用意されておらず、人手による多くの維持管理作業を必要としていた。本論文では、これらの作業を大幅に削減する方法を提案し、それを実装し実際に運用して有効性を確認している。システムの管理問題は多くの大学等の組織が抱えている問題であり、一つの解決策を明らかにした点は高く評価できる。また、今後、初等中等教育においても同様の管理問題が発生するのは自明であることから、これらの教育の場にも応用できるものと期待される。以上の点から、本論文を論文賞に推薦する。

齊藤 明紀

齊藤 明紀君
  平成3年 大阪大学大学院博士課程修了. 大阪大学基礎工学部助手、情報処理教育センター 講師、大学院基礎工学研究科 講師を経て、現在,大阪大学大学院情報科学研究所 助教授. 工学博士.分散システム運用技術, 教育工学, ユーザーインターフェースなどの研究に従事. 電子情報通信学会, 情報処理学会各会員.

「パーピープン:ジャズ和音を生成する創作支援ツール」(Vol.42,No.3)

[論文概要]

 本論文は,音楽創作支援ツール「パーピープン」の設計方針,音楽知識表現手法,動作原理,実装等について述べた.パーピープンに単純な和音進行が与えられると,ケーデンス単位で和声的文脈を考慮しながら事例に基づく推論でユーザ意図を反映した演奏を生成する.既存の楽曲分析理論と演繹オブジェクト指向データベース技術を援用した結果,音楽的な直観に合致する和音進行の類似検索とケーデンス木を用いてユーザ意図を操作する GUI を実現した.実際に,多様で一貫した曲調の楽曲を効率的に生成することを確認した.

[推薦理由]

 本論文では和音進行から和声づけを行い、演奏を生成するための創作支援ツール「パーピープン」が報告されている。パーピープンは DOOD の枠組を知識表現形式に用いて、ケーデンスなどの音楽構造を表現し、入力和音列に対して事例ベース推論によって適切な和声づけを生成してユーザに提供し、ユーザが生成結果を選択・編集するためのインタフェースを備えている。
 音楽情報処理システムでは表層的な特徴量の統計的・時系列解析的なアプローチの研究が主流である。これに対し、本研究では音楽構造の扱いに正面から取り組み、明瞭な形式的枠組によって、類似性の扱い、それに基づく事例検索や生成を見通しよく実現しており、この方面の研究の重要性及び有効性を示すものとして高く評価できる。今後の同種の研究の発展が期待される。システムそのものもプロトタイプ段階ではあるものの、音楽創作支援ツールとして高い有用性を実現している。

平田 圭二

平田 圭二君
  1987 年 東京大学大学院工学系研究科 情報工学専門課程 博士課程修了.工学博士.同年 NTT 基礎研究所入社. 1990-93 年 (財) 新世代コンピュータ技術開発機構 (ICOT),
KLIC 協会理事.
 共訳書「コンピュータ音楽 − 歴史・テクノロジー・アート」(東京電機大学出版局).

青柳 龍也

青柳 龍也君

 1960年生.1988年東京大学大学院情報工学専門課程博士課程修了.同年電気通信大学助手.音楽情報処理およびCAIの研究に従事.1998年より津田塾大学助教授.

「ワイヤーフレームモデルからの曲面モデルの構成法」(Vol.42,No.5)

[論文概要]

 ワイヤーフレームモデルは入力や変更が容易であり、そのため複雑な曲面・立体形状の入力手段としてよく使われる。本論文は、線情報だけのワイヤーフレームを面分の集合として解釈し、合理的でなるべく単純な曲面モデルを効率よく生成する方法を提案した.対象とするワイヤーフレームは2連結な平面マルチグラフで,球面と同相な閉曲面として複数の位相的解釈が可能である.そこで,最初にすべての解(面ループの集合)を,グラフの3連結要素分解を用いて組み合わせ的に生成する.次にすべての面分を幾何的に決定して,それに基づく評価・比較によって解の絞り込みを行なう.閉曲面だけでなく,円板と同相な開いた曲面モデルにも適用可能である.

[推薦理由]

 工業製品などを扱うCADにおいて,複雑な形状をいかに簡単に定義し操作するかは永年のテーマである.一つの方法としてワイヤーフレームで稜線を定義するやり方があるが,そのためにはワイヤーフレーム中には存在しない曲面の情報(面分がどこにあるか,どんな曲面か)を補わなければならない.この作業は現在は後工程として人手により行なわれているが,本論文は,それを自動化するための核となる技術を提案している.手法の特徴は,位相情報と幾何情報の扱いの峻別である.グラフ埋め込みの理論を用い,全体を2次元多様体として解釈するすべての可能性を尽くすことにより,従来手法で問題だった入力ワイヤーの幾何的誤差の影響を排除することに成功している.また,理論と実験により手法の効率のよさも示されている.本論文は,形状入力技術の多様な発展に資するものであり,高く評価できる.

井上 恵介

井上 恵介君
  1987年東京大学工学部精密機械工学科卒業.1989年同大学院精密機械工学専攻修士課程修了.同年日本アイ・ビー・エム(株)入社.以来,現在まで東京基礎研究所にて幾何モデリング,CAE関連技術の研究開発に従事.1999年カーネギーメロン大学客員研究員.

嶋田 憲司

嶋田 憲司君

 1983年東京大学工学部精密機械工学科卒業.1985年同大学院精密機械工学専攻修士課程修了.同年日本アイ・ビー・エム(株)入社,東京基礎研究所にて形状処理,ロボティクス,コンピュータグラフィックス,計算力学などの研究に従事. 1989年より1993年までマサチューセッツ工科大学博士課程.Ph.D. 1996年よりカーネギーメロン大学機械工学科とロボット研究所の助教授を兼任.1994年本会山下記念研究賞,同年NICOGRAPH論文コンテスト優秀論文賞,2000年米国立科学財団(NSF) CAREER AWARD受賞.ACM, ASME, IEEE, SIAM各会員.

 

「印鑑と電子印鑑の歴史と類似性の分析」(Vol.42,No.8)

[論文概要]

 インターネットの普及に伴い拡大している電子商取引の安全性を確保するための基本技術が電子印鑑(米国ではデジタル署名)である。その電子印鑑をさらに使いやすく、安全なものにするため、(1)印鑑と電子印鑑に関し、それぞれの歴史と基本機能、登録と証明方法、不正使用方法などを調査し、(2)その上で、それらの類似性と相違点を比較分析した。その結果、電子印鑑の(1)証拠能力持続に関する信頼性の向上対策や、(2)捺印の実感欠如対策等が重要な課題であること等を明らかにするとともに、研究の報告づけを行うことができた。

[推薦理由]

 電子政府の実現が進む昨今, PKI(公開鍵暗号基盤)は電子社会の要である. そのPKI上の主たる応用である電子印鑑(デジタル署名)は, 主に電子商取引での使用を目的とした技術で, 取引当事者が, 取引内容を承知し, 改ざんが行われていないということを証明する. 今後, 電子投票など様々な応用が見込まれる重要な技術である. 本論文は, 現在の印鑑と電子印鑑技術について, それぞれの歴史的背景を示し, 機能,登録や証明および無効化,不正等の点についての比較および考察を行った. さらに, 今後の課題を論じ, 本研究分野における研究の指針を示した. 現在のセキュリティ技術を熟知した著者等によるこれらの指針は, 信頼性が高く, 有用である. 今後の本研究分野の核となる論文である.

佐々木 良一

佐々木 良一君
 昭和46年東京大学卒業。日立製作所システム開発研究所にてネットワーク管理やセキュリティ等の研究開発に従事。同研究所第4部部長や、主管研究長などを経て2001年4月より東京電機大学工学部教授。工学博士(東京大学)。昭和58年電気学会論文賞受賞。平成10年電気学会著作賞受賞。著書に、「インターネットセキュリティ入門」岩波新書1999年等。

宝木 和夫

宝木 和夫君

 1977年東京工業大学大学院修士課程修了。同年、日立製作所入社、システム開発研究所に配属。以降、システム安全性の研究に従事し、このテーマで、1986年、東京大学より工学博士号取得。その後、衛星放送暗号方式、楕円曲線暗号、その他、情報セキュリティ技術の研究開発に従事。現在、同研究所7部(セキュリティシステム研究部)部長、また、政府調達暗号CRYPTREC委員会委員などを兼務。著書は、ファイアウォール(昭晃堂)、インターネットセキュリティ(オーム社)など。